竜人化したカズマがどさくさに紛れて盗んだイージスの盾を持って竜車の乗合場に出るが、乗るはずだった竜車の目の前で爆発が起こった。それに驚いた竜は逃げて行き、そこへ俺とミツルギが現れた。
「奇遇だな、乗り場で知り合いに会うなんて。なぁ?」
ミツルギが俺に顔を向ける。俺は格闘特化の新型鎧【マスター】のフードを下げた。
「ああ、確かに奇遇だ」
「リュウジ、聞いてくれ。黒幕はラグクラフト宰相だ、あのおっさんが仕組んだ事なんだよ。それに、尋問室にいたのはお前が捕まえた魔王軍のセレスディナがいたんだ。そいつがキャルを操ったんだよ!!」
カズマが状況と原因を説明しようとする。その時、馬車の影からペコリーヌと、普段の学園の服とは違って黒いとんがり帽子に黒の法衣とスカート姿のあるえが現れた。
「カズマさん、みんな…………」
「ゆんゆん、君達を止めに来たよ」
「あるえ…………あなたまで」
「ペコリーヌ…………お前もか」
ペコリーヌとあるえもその場に加わると、俺はカズマに要求を伝えた。
「クレアさんから1日半の猶予を貰った。後12時間だ。キャルをこっちに引き渡してくれ。事情はどうあれ、話を聞かないと進まないからな」
「追う相手を間違えてるんじゃないか?」
「今のお前はまともな判断が出来ない。お前のパーティーの1人が人を殺しかけたんだぞ?」
「今は真犯人のラグクラフト宰相を止めないと。リュウジ、分かってくれ」
クリスがカズマに歩み寄る。
「助手くん、どうなるか予想はついてるんだよね?それでもやるの?」
しかし、カズマは王都で金獅子から渡された忍び装束を着たクリスの話にも聞く耳を持たない。
やっぱりエリスでも聞かないか…………。
「そろそろ、我慢も限界だ。アルバイトくん!」
俺がそう呼び掛けると、クロエがカズマからイージスをひったくって蹴りを食らわす。クロエの服装は加勢させるために、戦闘用ジャンプスーツを着せていた。その素材はアダマンチウムよ硬度の低いヴィブラニウム製の生地と伸縮性のある生地が合わさったもので、両膝には強力な外的ショックを与えるニーパッド、ユーティリティベルトにはスーツの吸魔石、ブーツにはショックを防ぐ絶縁がそれぞれ施されている。他にも様々なツールを開発していて腰のバックパックに収納されている。装備名を【ブラック・ウィンド】と名付けた。
「よーし、良いぞ!」
「ぷー、まさかあの時のお兄さんが指名手配犯だとはね。とりあえず、蹴り食らわせたけどダメージどうなん?」
「そういう細かい話はいいから、クロエ」
「お前も大変だな」
そのやりとりにコメントしたカズマを振り返ると、俺は怒りを滲ませた。
「何馬鹿なことをしてるんだ!?アオイとゆんゆんを巻き込んで!なんでそんなにAdventuresを引き裂こうとするんだ!?俺達仲間だろ!?」
「引き裂いたのはお前だ、リュウジ」
「…………もういい。キャル引き渡して一緒に来るんだ!俺達の方がまだマシだぞ。勇者候補が容赦なく捕まえにくるぞ!だから…………頼むよ」
最後の一言を呟く様に俺は漏らした。その時、カズマの通信魔石にめぐみんから連絡が入った。
「カズマ、見つけましたよ。厩舎に別の竜車があります」
「アクア、やってやれ!」
「仕方ないわね!花鳥風月〜!」
「…………は?」
こんな時に何してんだコイツ。
アクアに気を取られた俺とクロエがアクアを見た瞬間、
「『フラッシュ』!」
「きゃあっ!」
「しまった!!」
カズマがフラッシュを唱えて目くらましをさせる。そしてその隙にクロエからイージスの盾を奪い返した。
「『敵感知』!奥の小屋に2人、キャルとめぐみんだ!そっちは俺がいく!ミツルギはカズマを頼む!」
「隣の厩舎に誰かいるぞ!おそらくララティーナちゃんだ!」
「キャルちゃんはわたしが行きます!」
「行かせるか!」
すぐさまペコリーヌが走り出すが、それをカズマが止める。
「退いてくださいカズマさん!やっつけちゃいますよ!」
「来いっ!ペコリーヌ!」
竜人化したカズマと格闘を始めるペコリーヌに、ミツルギも魔法剣ティルフィングを手に加勢する。
「すまない、カズマ。今度は負けないからな!」
クロエが辺りを見回す。
「ぷー、で?ウチは何をすればいいンすか?」
「だから言ったろ。テキトーに痛めつけろ!」
「りょー」
クリスの前には、マヒルとダクネスが立ちはだかる。
「クリスちゃん、退いてくれねぇか?」
「マヒルの言う通りだ。お前を怪我させたくない」
「その心配はいらないよ。ダクネス、マヒルさん」
すぐさまクリスのダガーとマヒルの槍がぶつかり合う。槍を華麗に振り回すマヒルに警戒したクリスはバインドを放って拘束した。次にダクネスが果敢にクリスに挑む。呪われた聖剣のお陰でダクネスはクリスと互角に渡り合う。
「なんですかあの黒装束の冒険者は!?」
「どいつもこいつも変な服装してるわね!」
曲者揃いの冒険者を見ながら厩舎を走るキャルとめぐみんの元には、クロエが到着した。器用に柱にしがみついて、その勢いを利用してめぐみんを取り押さえると、キャルが杖で襲いかかる。
「ぷー、その杖かっこいいんだけど。パイセンに見せたいわぁ」
杖を見て興奮しているクロエを、めぐみんが突っかかる。
「そんな本がくっ付いただけの杖の何処がいいんですか!?」
その頃、俺はゆんゆんとアオイを追い、周りをライトニングで攻撃し、2人を追い詰めた。
「ゆんゆん、ミツルギが泣いてるぞ」
「どうして私達を王都に行かせたんですか?私、邪魔ですか?」
「その1、それは言い過ぎだ。その2、君を守る為。よっ、アオイ」
「ど、どうも…………」
「王都の生活はつまんなかったか?観葉植物やアーチェリー場用意したんだけど?」
「いえ、植物さん達はいい子でしたよ?けど、アーチェリー場は18ヶ所18本で終わりました。的を外せなくて…………すいませんっ!」
そう言ってアオイが放った矢は、俺のそばを通り抜けた。
「え?外した?」
「狙いはそこじゃありません」
矢は厩舎の柱の金具を破壊し、ゆんゆんのライトオブセイバーも手伝って俺のもとに瓦礫を降り注がせた。多数の柱の下敷きになった俺に、ハーレイが報告をする。
《ぽーん!打撲を複数感知しました》
「ああ、俺も感知したよ」
油断した、アオイとゆんゆんのコンビネーションは凄い。
別の厩舎では、クロエがロープでめぐみんを捕える。
「その杖の先に付いてんのガラス玉?それともマナタイト?」
「あなた、冒険者じゃないんですか?ふつうそんなに喋ったりしませんよ?」
「そ、そうっすね」
そこでキャルも助けに入るが、同じくロープで動きを封じた。
「申し訳ないんだけど、ウチも忙しいから」
「『ゴッドブロー』!」
しかしそこで、アクアとセシリーが乱入し、クロエを吹っ飛ばした。その隙にセシリーがめぐみん達のロープを解き始める。
「アクア、なんでもっと早く来てくれないわけ!?」
「わ、私だって色々してるんだから!」
「めぐみんさん、怪我はありませんか!?」
「大丈夫です。ありがとうございます、お姉さん」
あちこちで争いが始まるのを見て、クリスが俺に言う。
「これも作戦?」
「穏便にいくつもりだったけど、作戦変更だ」
「あそこだ!急げ!」
竜車に向かってカズマのチーム全員が走る。しかし、それを阻むべく登場したのはあるえ、メリッサだった。
「めぐみん、ゆんゆん。もう辞めるんだ、大人しく投降してくれ」
「こんな所で暴れても無意味よ?やめなさい」
俺達もその場に集合し、カズマチームのカズマ、アクア、めぐみん、ダクネス、セシリー、マヒル、ゆんゆん、アオイ。俺チームの俺、クリス、ミツルギ、ペコリーヌ、あるえ、メリッサ、クロエ両陣営が向かい合う形になる。
「どうするの?カズマ?」
「…………戦う」
アクアそう言うと、カズマが足を踏み出す。
「どうしてこうなっちゃうんだろう…………」
クリスがそう呟くと、俺チームも動き出す。やがて両軍のメンバーは走り出し、冒険者同士の戦いが本格的に始まった。学院で仲良くなったクロエとアオイが格闘する。
「まだウチら友達?」
「お、お手柔らかに!」
しかし、手加減などなしに蹴りを食らわそうとするクロエを、ゆんゆんが風魔法で吹っ飛ばした。去り際にゆんゆんがアオイに目を向ける。
「アオイ、クロエさんが相手でも手加減しちゃダメだよ」
キャルの相手はもちろんペコリーヌだ。
「あたしは、あんたの親を襲ってない!ホントよ!」
「では、なぜ逃げるんですか!キャルちゃん!」
しかし、今はゆっくり話し合える状況ではなく。ゆんゆんがペコリーヌをボトムレス・スワンプで動きを封じるが、背後からのミツルギに攻撃されると地面に倒れ込んだ。クリスはカズマのイージスを狙う。
「その盾そんな動きもするの!?」
「神器だからなんでもありなんじゃないか?」
「やっぱり、キミは危険だね。リュウジが言ってたよ!」
足を狙う攻撃に苦戦しながらも、カズマは盾で応戦する。
「リュウジは、他にも何か言ってたか?」
「キミはやけくそになって自分が正しいと思ってる、だから余計危険だって」
「言えてるかも…………」
「『バインド』!!」
バインドを放ちながら俊敏に動き回るクリスだが、イージスに守られているカズマが優勢になり、ついにクリスをバインドで拘束した。
「しまった!!」
「竜人化した状態ならお頭に勝てる見たいだな。悪いな」
「あっ待って!!」
拘束されて身動きのとれないクリスを残し、カズマはその場を離れた。