「カズマ、早くラグクラフトを止めないと協定が結ばれるわよ!?」
なんとかペコリーヌから逃れたキャルがカズマに言う。
「リュウジとミツルギは俺が止める。キャルは竜車を奪え」
しかし、カズマ達の作戦は合流しためぐみんとアオイが認めなかった。
「待ってくださいキャル。リュウジ達を惹きつける何かいい魔法知りませんか?私の爆裂魔法では被害が大きくなってしまいます」
「えっ?例えばなによ?」
「なんでも良いです!それをして貰えれば後は私たちが引き受けます。勝つ為には誰かが犠牲にならなければ…………それに、本当の敵はミツルギさん達じゃありません!」
カズマとキャルは目を合わせる。
「一つだけあるわ」
「どうする気だ?」
「『ジャイアント』っていう生物を巨大化に出来る魔法があるわ。それを使えば気を逸らせるかも」
「なら、例えばめぐみんにかければめぐみんを巨大化出来るって事か?」
「ええ、けど人間だと長くは持たない…………。どうする?」
キャルに言われたカズマはめぐみんのスカートを見つめる。視線に気付いためぐみんはばっと手で抑え始めた。
「この男はこんな時に何考えてるんですか!?私は嫌ですよ!ゆんゆんがやって下さいっ!」
「ええっ!?私だって嫌よ!私もスカートだもの!」
「カズマに下から覗かれるのは女神の私でも嫌ね…………」
「別にお前に頼んでない」
「なぁんでよおっ!!」
「な、なら私がやろう!私はタイツを履いているからな!さぁ、キャル。私にかけてくれ!」
ダクネスが代わりを務めようとしたが、マヒルが手を挙げた。
「ダクダクもスカートだべ!?それならオラが適任だ。オラはスカートでねぇからな。キャルちゃん、やってけろ!」
「本気で言ってるのね?」
「いいのか、マヒル?」
キャルとカズマが確認するが、マヒルの覚悟は決まっていた。
「構わねぇっ!やってけろ!」
「分かったわ!『ジャイアント』!!」
「ついでに私の支援魔法を受けて下さいっ!『パワード』!!」
キャルは巨大化魔法。セシリーが支援魔法を唱えるとマヒルはミツルギに向かって走り出した。魔法を受けたマヒルの体が段々と大きくなり、遂にはドラゴンよりも大きく巨大化した。
「いくべぇぇっ!!」
「なっ!?マヒルちゃんが巨大化した!?」
ミツルギのマントを摘むようにして持ち上げるマヒルを、カズマが鼻の下を伸ばしながら見上げる。呆れためぐみんは、
「この男はっ!見境なしですか!?」
「うっそ!?何あれ!?」
「ミツルギを降ろしてくれるか、マヒル」
予想外の事態に俺達はあっけにとられるが、急にデカくなったマヒルに一斉に挑む。ミツルギはクロエが咄嗟にマントを斬って助け出した。しかし、荷車を軽々と投げつけて来る巨大化したマヒルのパワーに歯が立たない。
「カズマを捕まえたいなら、オラを倒していけ!」
マヒルに苦戦する俺達の隙を突き、カズマとキャルは遂に竜車に辿り着いた。しかし、そこで待っていたのはクリスだった。
「助手くん、やめる気はないんだね?」
「分かってるだろ。お頭…………」
「…………後悔しそう」
クリスの右手がカズマに向けられる。しかし、バインドが放たれた先は、カズマ達を追って背後に迫っていたペコリーヌだった。
「ク、クリスちゃん!?」
「行って…………」
カズマとキャルは頷き、急いで竜車に乗り込んだ。2人を逃がしたクリスがペコリーヌに言う。
「助手くんを探すのは手伝ったけど、捕まえるとは言ってないから」
同時刻。
「ちょーちょー、なかよしXを思い出して閃いた事があんだけど!?」
マヒルと戦いながら、クロエが俺達に呼びかける。
「デカイやつは、足を狙うって!」
そう言って、クロエは必要以上に足を狙い始めた。それにより、マヒルはバランスを崩し始める。
「リュウジ、一体あの子は何を言ってるんだい?」
「あー、こっちの話だから気にしないでくれ」
「リュウジ、上だ!上を狙え!」
そのチャンスを突いて俺とミツルギが同時に攻撃を食らわすと、遂にマヒルが倒れ込んだ。力の尽きたマヒルは魔法が切れて元の大きさに戻る。
「はぁ、はぁ、…………誰か、牛乳持ってねぇべか?」
マヒルは倒れ込んでそう言った。マヒルに倒れる際に突き飛ばされてしまったクロエの元に、俺は駆け寄る。
「クロエ、大丈夫か!?」
「にょぴゃゃゃっ!!」
クロエの肩を掴んだ瞬間、クロエから奇声が発せられた。
「なんだよその声!?俺だよ、俺!!」
「えっ!?、あっ…………電波系の声が出ちゃったじゃンか」
「お、おう…………クロエ、もういい。良くやった『ヒール』」
「まだやれるから、大丈夫だって」
「ユニとチエルに言いつけるぞ?家に帰れ」
回復魔法を施しながら去って行く俺をクロエは止めようとするが、体力が残って居らず動けなかった。他の場所では、倒れたままのゆんゆんの元にあるえが近寄る。
「ゆんゆん、残念だよ」
「ごめんねあるえ…………ごめんね…………」
「リュウジから色々聞いてるよ。最悪な事態だね」
俺とミツルギは逃走する竜車を追うが、その後にダクネスが呪われた聖剣で攻撃する。
「あるえさん、後ろのララティーナちゃんを頼みます!」
ミツルギの指示であるえはダクネスにカースド・ライトニングを撃つ。しかし、ダクネスがそれを聖剣で弾くと、カースド・ライトニングはその前を走るミツルギに直撃してしまった。ミツルギがものすごい勢いで転倒してしまう。
「ミツルギ!!」
俺とダクネスも急いでその場に駆けつけるが、ミツルギは意識を失っていた。
「『ヒール』!『ヒール』!」
「す、すまない…………」
ダクネスはそう言って詫びたが、
「『ライトニング』!!」
俺はダクネスをライトニングで撃ち倒した。ダクネスの事も、その後に駆けつけためぐみん達の事も、今の俺は許す事が出来なかった。
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その後、エルロードにいるクレアさんの元に戻ってミツルギの治療を始めた。手厚い看病を受けるミツルギを、部屋の外で俺とあるえは待っていた。
「何があったんだ?」
「すまない、躊躇してしまったんだ」
「あるえに限ってそれはないだろ?」
俺は頭を振る。
「…………私もそう思っていたよ」
「そうか…………巻き込んでごめんな、あるえ」
俺はその場を後にしてベランダに行き、キャルやカズマに裏切られてやり場のない怒りを抑えながらクリスと話をする。
「カズマさんはもう引かない。キミが引かなければ、更に悲劇が起きる」
「ペコリーヌから聞いた。俺達を裏切ったんだって?」
「違う!あたし達が間違ってるんだよ!」
そう言われた途端、頭にある言葉が過ぎった。
「お前の正義は甘過ぎる、甘過ぎて蟻が寄ってくるほどな、あのエリスっていう女神だっていつか必ずお前を裏切るぞ?」
「答えても良いが……それを知った貴様達の一時の悪感情は美味で、実にめでたいのだが、その情報が発端でデメリットだらけになるだけでなく、我輩の収入源が無くなってしまう。我輩にメリットがない故、言いたくないのだが?」
思い出したのは幻影の自分の言葉とバニルの言葉だった。
なるほど、そう言う事だったのか。
思い出した途端、抑えていた怒りが爆発してしまった。
「あたし達?あーあ、やっぱり女神は信用出来ねぇなぁガッカリだわ。どいつもこいつも裏切りやがる」
俺が溜まりに溜まっていた怒りを爆発させながらクリスに言い放つと、クリスは青ざめた顔で俺を見つめる。すると、次第に目から涙が零れ始めた。
「そんな事言わないでよ…………」
知ったこっちゃない。コイツは女神、信用したのが間違いだっただけの話だ。
「悪いけど、相棒契約もこれっきりだな。これからは俺の好きにさせてもらう。魔王を倒して監獄に帰らせてもらうからな」
そう言い捨ててベランダから出ようとしたその時、クリスもといエリスが涙を拭いながら声を震わせて言い放つ。
「フクヤマリュウジさん…………魔王軍について報告があります」
その言葉を聞いた途端、俺は足を止めて肩越しに振り向く。
「この世界は危機に晒され始めています。このままだと魔王軍に人類が滅ぼされる可能性が出てきました。情報によると最後の幹部、魔王の娘による王都侵攻計画と部隊を各街へ進軍させるとの事です」
ついに来たか。
「安心しろ、契約は守るつもりだ。カズマが居なくても俺とミツルギで何とかする」
「…………そうですか」
「アクセルの街にある家は引き払うから俺にもう構うな」
クリスにそう言い放った俺はその場を後にした。