宿の外に出ると、メリッサが待ち構えていた。メリッサは俺を見た途端近付く。
「今回ばかりはアナタの予想は覆されなかったわね」
メリッサは懐から水晶玉を取り出して映像を映し出す。
「本来キャルの診察をするはずだったプリーストよ。恐らく入れ替わって中に潜入して来たようね」
「そうか…………」
「ラグクラフトは、言ってた通り…………ドッペルゲンガーよ」
「…………やっぱりか。メリッサはこの件を直ぐにクレアさんに知らせてくれ」
「分かったわ」
「それと、ミツルギを頼む」
俺はそのまま王都に向かいとある刑務所にやって来た。門番に冒険者カードを見せて中に入った俺をクレアさんが出迎える。
「メリッサから話は聞きましたか?」
「話は聞いたが…………はいそうですか、と聞くとでも?エルロードであんな騒ぎの後に?本来なら貴殿も逮捕されるところだ」
クレアさんにそう言われながら独房に入ると、声が聞こえて来た。
「おー、これはこれは。預言者鋼のリュウジのお出ましですよ!なんでもお見通しで、運命を決めてくださる。人の気持ちを無視してね」
「うわぁぁぁぁっ!私女神なのにぃぃっ!犯罪者になったぁぁ!」
その声は聞き覚えのある声だった。
「やめろ、めぐみんアクア。ここに入れられるとは思ってなかった」
めぐみん、アクア、アオイ、マヒル、ゆんゆん、セシリー、ダクネスはみな捕らえられ、この刑務所に収監されていた。
「でもどこかにぶち込むつもりでしたよね?」
「だが、まさか王都の刑務所とは思ってなかった…………。ここに入るのは」
「犯罪者と言いたいんですよね?私は犯罪者じゃありません、アクアもダクネスも。なのにこのザマですよ」
「そりゃ殺人未遂の犯罪者に加担したんだ、自業自得だ」
俺はそう言うが、既に背中を向けためぐみんは聞く耳を持たない。アクアに目を向けても泣いてばかりいた。
「ひょいさぶろうさんや、ゆいゆいさん、こめっこがいるだろう?なんで間違った側につく前に家族の事を考えない?」
しかし、めぐみんはこの言葉を聞き流すことは出来ず、鉄格子を叩いて声を荒らげた。
「みなさん気を付けて下さい、いちいち癇に触ります!」
マヒルも俺を睨む。
「オラ、もう農場を辞めさせて貰うからな」
「分かった。今までありがとう」
「そんだけか!?詫びの一つ言わねぇのか!?」
俺がマヒルの房を通り過ぎると、ダクネスは一つ気がかりだった事を俺に尋ねた。
「魔剣は?」
「今治療を受けている。祈るしかない。…………何か欲しいものは?」
「飴で私を釣るのか?」
「カズマとキャルの行き先を知りたい」
「私の事は知ってるだろ、並の取り調べじゃ口は割らないぞ」
そこで、俺は小さく呟くようにライトニング・フィールドを展開させた。
「おっと、周りの音が聞こえなくなったな。クレアさんが気付くまで3分はかかる」
その間に俺はメリッサから受け取った水晶玉を取り出して映像を写す。
「見ろ、この人が本来キャルを診察するはずだったプリーストだ。カズマの意見が正しかった、俺が悪かったよ」
「認めるんだな?」
「カズマが決死の行動に出ている。助けが必要な筈だ。俺に教える義理はないかもしれないが…………」
「もういい、分かった。居場所を言う。だが、リュウジ1人で行け。友人として」
「当たり前だ」
刑務所から出ようとする俺をクレアさんが呼び止める。
「鋼のリュウジ殿、サトウカズマの情報を聞けたのか?」
「いいえ、死ねと言われました。行方を探ります」
そう言って、俺は再び馬車でその場を後にした。しかし、あるえに運転を任せている間に俺はマスターの鎧を装着し、馬車から飛び出してエルロードに戻った。その後を追うように、馬に乗ったペコリーヌがあった。
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その頃。一足先に、カズマとキャルはエルロードの外れにある潰れたカジノに到着していた。カズマとキャルが扉の前に来ると、カジノの扉は既に開かれていた。
「ここにあのドッペルゲンガーがいるのか?」
「ええ、コンチネンタル・ホテルでトロールが話してたのを聞いたの」
中に入り奥へ進んで行くと、背後から物音がした。盾と杖を向けて振り返る。そこへ来たのが俺だった。
「なにをそんなに警戒してんだ?」
マスターのフードを下げて俺は近付く。
「まぁ、お互い色々あったからな」
「落ち着け、もう捕まえる気なんてねぇよ」
「じゃあ何しに来たんだ?リュウジ」
盾を構えながらカズマが尋ねる。
「隠したって仕方ない。お前が正しかった。クレアさん達には内緒で来た。でなきゃ俺も捕まるからな」
「始末書が面倒になるな」
カズマが盾を下ろす。
カズマも怒ってない、ここらで仲直りしなきゃな。
「分かってくれたんだな、リュウジ」
「ああ、カズマ。ホントに悪かったよ。ほら、キャル?もう怒ってないから杖を下ろしてくれ、アビスバーストでも撃つ気か?」
「…………ふん」
背後にいたキャルも、構えていた杖を下ろした。そのまま俺達は更に奥へと進んでラグクラフトを探し始めた。
「『敵感知』…………あそこにいるぞ」
奥に進むと、そこは広場になっており壊れた巨大なスロットマシーンが設置されていた。広場の外ではひそかにペコリーヌが様子を伺っている。その時、ラグクラフトの声が聞こえてきた。
「よくここが分かったな。Adventures」
「ラグクラフト…………」
思わずキャルが呟く。
「ダニエルとセレスディナには感謝しているよ。君達を利用出来たからな」
相手の気配を感じて聖盾イージスを投げるカズマに、ラグクラフトが冷静に返す。
「やめておけ、サトウカズマ。これは盗賊から守る為に造られた特注の強化ガラスだ」
「俺なら砕けるぜ?」
「ああ、君なら壊せるだろうな、鋼のリュウジ。だがやめておけ。お楽しみはこれからだ」
「俺達を誘き寄せる為にアイリスとコッコロを誘拐させたのか?」
カズマが強化ガラスに守られたラグクラフトの目の前まで近付く。
「バニルが倒された辺りからずっと考えていた。お前達の事を調べ、スパイや暗殺者を送って分かった事がある」
ラグクラフトは次第に人間から目も鼻も口も無い、真っ黒な人影の様に姿を変えた。
「お前は綺麗な目をしていると思っていたが、実物は濁っているな」
「ほっとけ」
「だが俺はベルディアやシルビアの様に強力な力は持っていない。だから持てるものを全て使った」
「お前の目的は何なんだ?」
「お前ら、Adventuresの崩壊だ」
そう言って、ラグクラフトは水晶玉から映像を映し出した。
「鉄壁を崩された城は、再び建て直される。だが、内側から崩れれば…………二度と建てる事は出来ない」
映し出された映像を見ながら、俺はある事に気付いた。
「この道、知ってる…………おい、何だこれは?」
映像には、逆さまになっている標識とモンスターに襲われている荷馬車。そう、ここはミソギがイタズラでズラされた標識の場所でもあり、クロエと知り合ったばかりの所だった。キャルは既に何の映像か把握していた。そして、少し離れた場所にキャルが映り出す。キャルは小さいキノコの魔物に魔法を唱え出すと、魔物のキノコは巨大化してベニタケへと進化した。
あの時からか、あの時からキャルは裏切ってたのか。巨大ベニタケや巨大怪獣たちも全部。
キャルと出会った頃の腑に落ちない所が全て繋がると、キャルに殴かかろうとする俺をカズマが止める。
「よせ、リュウジ!もう済んだ話だろ!?」
振り返った俺は、真っ直ぐカズマに目を向ける。
「お前、知ってたのか?あそこにはまだ子供のミソギが居たんだぞ!?」
「違うんだよ、キャルは鼻から利用され─────」
「誤魔化すなサトウカズマ!知ってたんだろ!?」
「…………ああ」
俺は感情を抑えきれず、再びフードを被りカズマを殴り倒す。俺はすぐキャルに襲いかかった。俺は至近距離でカースド・ライトニングを放とうとした。
殺してやる!
「『カースド・ライトニング』!」
カースド・ライトニングの衝撃で広場が崩壊しだし、瓦礫が落ちて来た隙にキャルがその場を逃れる。追おうとする俺をカズマが止めようとする。
「おい落ち着けよ、もういいだろ!?ミソギは無事だったんだし!」
「るせぇっ!どけ!!」
「落ち着けって!!」
カジノから脱出していくキャルを追う為に追い掛ける俺の足に、カズマがイージスの盾を当てる。その時、鈍い音が聞こえた。
《ぽーん!左足負傷!》
ハーレイが足の異常を報告する。
「ふざけやがって…………」
足をグラつかせながらも走り続け、キャルにライトニングを撃つ。しかし、カズマが竜人化してそれをイージスの盾で跳ね返すと、俺自身に当たってダメージを追った。
《ぽーん!右目の視力が低下しています》
「片目が見れれば充分だ!」
フードを下げた俺は、今にも窓から出ようとするキャルのそばの柱にクリムゾン・レーザーを放って、窓を塞いだ。そして遂にキャルを捕らえる。
「あの時ミソギが近くにいたって知らなかったのか?」
「気付いていたわよ…………!」
キャルを引きずり下ろす俺と、そこに体当たりをしたカズマは。
「頭に血が上ってる。あいつはもう止まらない!早く逃げろ!」
カジノの地下室まで転がり落ちた。カズマが俺に向かって立ち上がる。
「水に流してやれよ、もう済んだことだろ?」
「知った事か。冒険者ならともかく、まだ冒険者でもないミソギを危険に晒した。その報いを受けろ!!」
そう言って、俺はカズマに襲いかかった。