俺は竜人化したカズマの顔を殴る。カズマは喧嘩慣れしていないのか、殴ると言うより腕を振り回す様に迎え撃つ。キャルは引きずり下ろされた時に追ったダメージで横たわっていると、傍にはイージスの盾が落ちていた。
「『不死王の手』!!」
カズマは両手で俺を捕まえようとするが、俺は躱して距離を置いた。
「邪魔なスキルだな、『カースド・ダークネス』!!」
俺はカズマに不死王の手を封じる呪いをかけた。
「悪いな、今更レベルを下げられたら困る」
「クソっ!!『ダブルドレインタッチ』!!」
「っ!!」
飛び上がって両足を使いカズマを両手首を蹴り軌道をズラした。
「それも封じてやる、『カースド・ダー───」
「やめろおぉっ!!」
その瞬間、キャルがイージスの盾を両手で持ちながら俺に殴り付ける。俺は振り返ってライトニングを放つが、キャルはイージスの盾で守られる。その隙にカズマが俺に殴り掛かる。キャルはイージスの盾をカズマにパスしながら魔法で援護する。それを何度も繰り返された。
「図に乗るなっ!『ライトニング』!!」
カズマを吹っ飛ばし、その間にキャルに襲いかかる。だが、キャルは魔法で弾幕を張り距離を詰めて杖で俺に襲いかかる。
「あたしの事情も知らない癖に!!」
しかし、俺は杖を掴んでキャルの腹を殴った。キャルがうずくまってる隙に杖を地面に叩き付けてへし折った。そこに起き上がったカズマにクリムゾン・レーザーを撃ち、それをイージスの盾で受けとめるカズマと真正面から向かい合う。
その頃。
俺達が戦っている間に逃げ出したラグクラフトは、カジノの外に設置されたベンチに座っていた。そこにペコリーヌが近付く。しかし、ペコリーヌは剣を抜かずに、ユースティアナ王女として声をかけた。
「間違った相手を処罰するところでした」
「彼女もまったく無実ではない」
「あなたの目的は、彼らが潰し合うのを見ることですか?」
その問いに、ラグクラフトが静かに語り出した。
「ベルディア、バニル、チャーリー、ハンス、シルビア、ウィック、ウォルバク、ダニエルを倒した奴らを魔王軍幹部でもない私が勝てる訳無い。逆立ちしたって敵わない。でも、互いに潰し合わせれば…………。だから新人の魔王軍幹部のキャルやダニエル達を利用した。君の父さんの事は済まなかった」
「野心があなたを蝕み、キャルちゃん達を蝕んでいます。わたしがもう、終わりにします」
そう言って、ペコリーヌは剣を抜いて構えた。
「魔王様の役に立てたなら…………本望だ」
「『プリンセス・ストライク』!!」
ペコリーヌが剣を振り下ろした同時刻。俺とカズマの戦いはまだ続いていた。
《ぽーん!単純な殴り合いでは勝てません!》
ハーレイの言う通り、竜人化したカズマとの接近戦は不利だ。
「『魔眼』!」
俺は左目を爬虫類の目にさせるが、お構い無しにカズマがイージスの盾で殴り付ける。だが、俺はガシッと受け止めた。
「反撃開始だ」
魔眼のスキルを使って動きを見切った俺は、盾を装着していた腕を殴って弾きながら盾を吹っ飛ばしてクリムゾン・レーザーをあびせ、カズマを追い詰めた。膝をついたカズマが俺を見上げる。
「キャルは仲間だ」
「…………俺もそうだった」
そう言って、俺がカズマをゴッドブローで何度も殴る。
「降参しろ。これが最後の警告だ」
しかし、よろよろと立ち上がったカズマは、竜人化してもなお口から血を流しながらファイティングポーズをとる。
「はぁ、はぁ…………降参しねぇ」
「馬鹿野郎が」
俺は苦虫を噛み潰したような顔をしながらクリムゾン・レーザーを放とうとした時、それまでうずくまっていたキャルが俺の足首にしがみついた。
「離せっ!!」
キャルに気を取られた隙にカズマが俺を持ち上げて投げ飛ばし、覆い被さるとイージスの盾で俺の鎧を破壊した。更にイージスの盾を振り上げたカズマに、俺は咄嗟に顔を庇うが、盾が振り下ろされず胸に手を置いていた。
「ようやく、捕まえた…………『ドレインタッチ』!!」
俺の魔力を吸い取ったカズマは、盾を背負ってキャルを抱き抱えてその場を去ろうとする。しかしその背中に俺は呼び掛けた。
「イージスは置いてけ。お前なんかにに預けた俺が間違ってた!俺が手に入れた神器だ!!」
聖盾イージスはその場に叩き付けられ、指ひとつ動かせない俺は取り残された。キャルは弱々しくカズマを見上げながら口を開く。
「どうして…………どうして、こんなにボロボロになるまで戦って、敵だったあたしを庇ってまで友達と喧嘩して、大事な盾まで捨ててまで助けてくれるなんて…………こんなことされちゃ…………あんたの事、好きになっちゃうじゃないのよぉっ!!」
ストレートに好意を言われたのに慣れていないカズマはよそよそしく目を逸らしながら答えた。
「お、おう…………気にすんな。盾よりお前の命の方が大事だからな」
「…………ああ、言っちゃった…………言っちゃったわ。でも、これはホント。知り合ってからスパイをしてたけど、あんたといた時は凄く楽しかった。その頃からあんたのこと…………でも、あたしなんかが、好きになっちゃダメなのに、魔王軍幹部なのに…………あたしの人生、なにもかもダメだったように…………スパイと知られたらきっと嫌われるって思ってたのに…………どうして、どうしても…………諦められないの」
カズマはどうしたらいいのか困ったらしく、なんとも言えない顔をしていた。
「こ、こんなストレートに言われたのは初めてでなんて言っていいか分からないけど、キャルはアクア、めぐみん、ダクネス、マヒルと同じくらい大事な仲間なんだ、スパイだからってなんだよ。そんなんで俺達がお前を引き離す訳ないだろ?ってか、もう幹部をクビになったんだ、堂々と俺の仲間だって言えるだろ?」
「バカ…………あんたはホントにバカ!!」
カズマとキャルはそのままカジノの外へと出て行ったその後、雪がチラつく寒空中取り残された俺にある人物が現れた。俺は視線をそいつに向けて声をかけた。
「まさか、お前が来てくれるとはな…………へへ」
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ギルド協定はラグクラフトの暗躍で造られた事が分かり、被害にあったアイリス王女とペコリーヌの働きによりギルド協定は白紙に戻されて事件の幕を閉じた。あの後助けられた俺はベルゼルグ城に招かれ、俺はミツルギの見舞いにやって来た。ミツルギの傷口は塞がっており、俺が顔を出した時には剣の素振りをしていた。俺は背中を向けているミツルギに声を掛けた。
「傷口は塞がってるようだな」
俺の声に気付いたミツルギは振るのをやめて振り返る。
「ああ、もう体の方は大丈夫だ。心配かけて済まない」
ミツルギはその場に座り込み、ため息をつく。
「…………150回だよ。クエストに行った回数。それだけ剣を奮った。毎回、これが最後のクエストだと覚悟しつつ、信念の為に戦った。ギルド協定も同じだ。正しいと思った、だからサインしたんだよ。まぁ、こんな結果になって、正直キツイ。だが、後悔はしていない。…………なんてね」
そう言って微笑んで見せるミツルギに俺が苦笑いをしながら立ち上がらせる所で、王城の兵士に声を掛けられた。
「失礼します。鋼のリュウジ殿、アイリス王女がお呼びです」
「アイリス王女が?ボクの事はいいから行ってくるといい」
「分かった」
そのまま兵士に連れられて謁見の間に行くと、悲しそうな顔しているアイリス王女がいた。俺は膝をついて頭を下げた。
「カズマを傷付けた件でしたら聞きたくありません」
「い、いえ、お兄さまの件ではありません。ダニエルの件でお呼びしました」
「兄と親しんだ奴と揉めたんですよ?アイリス王女も味方なのでは?」
皮肉を言うと、衛兵が剣に手を掛けながら俺を睨み付ける。
「貴様、アイリス王女に無礼な口を!」
「待ちなさい! 良いんです、そう言われても仕方ありません」
「しかし!?」
「鋼のリュウジ殿、これから話す件はお兄さまは関係ありません。ダニエルを討伐した報酬の件です」
報酬、今はそんな受け取る気になれねぇな。
「拒否権はありますか?」
「報酬は拒否出来ますが、もう1つの報酬は必ず受け取って貰います」
「もう1つ?なんですかそれは?」
俺がそう尋ねると、アイリス王女は衛兵から巻物を受け取ってその場で読み上げた。
「鋼のリュウジ殿、此度のダニエルの襲撃、討伐の報酬とその畏敬を称して、鋼のリュウジ殿には【
マン・オブ・スティール!?
俺は思わず顔を上げてしまった。だがアイリス王女は続けて、
「これからは鋼のリュウジではなく、勇者候補の1人、マンオブスティールと名乗って下さい」
「わ、分かりました…………」
「それと、もう1つ。ある荷物を預かってますので、こちらも受け取って下さい」
そう言うと、衛兵から小包を受け取り、その場を後にした。1人になった俺が中を開けると、カズマからの手紙とどこで手に入れたのか分からないが携帯電話が入っていた。廊下の壁に座り込みながら手紙を開くと、そこにはこう記されていた。
「リュウジ、王城に戻れたようで良かった。アクセルの街に戻ったかと思ったんだけど、お前らしくないだろ?人には仲間が必要だ。Adventuresはお前の仲間だ、俺の仲間である以上に。俺は学校に行かなくなってからずっと1人だった。オンラインゲームの中でも運だけ強いカズマさんだなんて呼ばれて溶け込めなかった。俺が信じてるのは、組織ではなく、一人一人の個人だ。信じている個人には裏切られた事がない。だから、俺も裏切る事は出来ない。お頭から聞いたけど、魔王軍が攻めてくるんだってな?アクアにも言っておく…………。お前を殴ってしまったな、リュウジ。人生初めての喧嘩だった。親友と思ってた奴と喧嘩をするとどうしていいか分からないな。悪かった。出来れば協定にサインしたかった、もちろん、こんな楽な事はないんだから。お前は自分の正義を貫け。皆それぞれ、信じた道を進んで行こう」
そこまで読んだ所で、通信魔石にクレアさんから通信が入った。
「鋼のリュウジ…………いや、マンオブスティール。問題が起きた」
「すいません、ちょっと待ってください」
俺は通信魔石を切って、カズマからの手紙を読み進めた。
「これだけは言える。何があっても、お前が俺達を…………。俺を必要とした時は、行けたら行く」
手紙に同封された携帯電話は、かけれるならかけてこいというあいつなりのメッセージだった。その頃、クレアさん達が眠らされた刑務所では、まだ収容されているめぐみん達の前にカズマとキャルが現れた。