永久機関エレキタイトを開発した俺は紅魔の里で新しく作った鎧【クラーケン】に装着させて魔力が無限に供給されるかテストを兼ねて鍛治スキルを使って様々な物を作っていた。蛇のモンスターの骨で型を取り、溶かしたアダマンタイトを流し込んで蛇の様な形をしたマジックアームを4本作成していた。あるえは何を作っているのか分からないのか、俺を見つめながら首を傾げている。
「モンスターの骨の型をとってどうするつもりなの?」
「まぁ、見ててよ。コレを鎧の背中にくっ付けてと…………」
クラーケンに溶接し終えて俺はあるえに体を向けると、マジックアームが俺のチート能力に反応して動き始めた。
「いよぉっし!上手く行った!」
「ふむ、面白い製造だな。では、ぼくはそろそろ帰るとしよう」
突然帰り支度を始めるユニを見て俺はクラーケンのアームを伸ばした。
「そんなに急いでどうしたの?まだ大丈夫でしょ?」
「いや、そうも言ってられないのだ。君はもう同級生ではないから分からないが、学生はなにかと行事があるのだ。端的に換言するば、ぼくも色々忙しい」
ユニも忙しいんだなぁ。
「あっ、んじゃ手伝って貰ったお礼にコレあげるよ」
俺は離れた場所からテーブルにアームを伸ばして一枚の紙をユニに渡した。渡されたユニはその紙をじっと見つめる。
「コレは、なかよしXの設計図ではないか?」
「うん。けど、これは俺が遠隔操縦だったなかよしXを色々アレンジしたんだ。強いて言えば【なかよしX Mark-3】って所かな。このMark3はロゼッタとユニコプター、そしてユニの魔力で動かせる」
「なんだと!?穿孔機は穿孔機は付いたのか!?」
「ドリル?ドリルならバッチリここに付いてるよ」
「うむ!なら時間が空き次第早速開発して見よう」
「あっ、それともう1つ」
俺はポケットから『魔石の付いた腕輪』を渡した。
「なんだね、コレは?アクセサリーというものか?」
「いやコレね?エレキタイトのテストを兼ねた時に作ったんだ。魔石にジャイアントの魔法を付与させてあるんだ。使って見たんだけど俺じゃ使いこなせなくて…………天才的なチエルなら使えるかなと思って。チエルに渡してくれないかな?」
ユニは俺から腕輪を受け取ると、
「チエル君に?まぁ、なにか手土産を持って行かなければ「ユニせんぱーい、お土産はー?」と言いかねないからな。うん、渡しておこう」
「んじゃ、またねユニ」
「うむ、また会おう。フクヤマ氏、あるえ君」
ユニはぶっころりーさんに連れられて王都に帰って行った。ユニが帰った途端、あるえが近付いて来た。
「やれやれ、君も隅に置けないねぇ」
「な、なんだよ意味深な言い方して〜」
「ふふ、ちょっとからかっただけさ。もう少しゆっくりしたい所なんだけど、私も色々忙しくてね」
あるえは懐から何かが記されている紙を取り出した。
「何それ?」
「魔王軍が来た時の布陣が記されているんだ」
「へぇ〜。どれどれ?」
あるえに紅魔の里の布陣を見せてもらうと、あるえは重要な場所に名前が記されていた。その他にもゆんゆんや、ぶっころりーさんの名前があった。めぐみんはというと、1番端の方に書かれていた。
う、うん、そうか…………。
「あるえにも付いて来て欲しかったんだけど、これ以上戦力は削れない」
「うん…………私だって君に付いて行きたいよ」
「えっ、それって…………」
「言わなくてもそろそろ気付くだろう?」
あるえが俺の顔に顔を近づけようとしたその時。
「リュウジ」
突然、空間にオレンジ色のサークルが現れてその中からウォルバクが出てきて水をさした。
「不味い事が起きたわ。一緒に来て頂戴」
「ウォルバク!?」
「あら?あの子からこの子に鞍替えしたの?悪い子ねぇ。兎に角、王都の別荘に来て頂戴、言われた通りアクセルの街の家を引き払って王都の別荘に移し替えたから ほら、早く!」
「えちょ、待ってウォルバク!」
こう言っちゃアレだけど、久しぶりにラブコメっぽい展開だったのに!
そんな淡い期待を他所にあるえは呆然と俺を見ている。
「あるえ!助けてあるえ!連れてかれるぅぅっ!!」
俺はサークルの中に惹き込まれて行き、サークルは閉じてしまった。別荘にやって来た俺はウォルバクの話を聞き始める。
「何が起きたって言うんだよ!」
「随分な言い草ね、私が苦労して城に潜入して聞き出した情報なのよ?」
「…………詳しく聞かせてくれ」
俺はソファーに腰を下ろしたまま尋ねた。
「魔王軍が攻め込んで来るの。なんでも、魔王軍屈指の占い師と、最後の魔王軍幹部候補の【呪々ガエル】が王都に来るらしいわ」
「ついに来たか。時間の猶予は?」
俺は思わず立ち上がるが、マリューから視線をそらして歩き出す。
「そんな呑気な事言ってる場合ですか?カズマ様達のいない中、我々だけで戦わなければいけないのですよ?もし、我々が負ければ」
「大虐殺が行われるわね。それも未曾有の規模で」
「なにその難しい言葉、もうちょいラフに言ってくれればいいのに」
そう言った途端、ウォルバクが、いやウォルバクの浮遊マントが、俺の頭をバシッと叩いた。
「いったぁ!何すんだよ!」
「落ち着いて下さい!リュウジ様。カズマ様達に連絡を取って下さい。ペコリーヌ様から聞いた話しだと既にアクセルの街に戻ったようですよ?」
マリューに促された俺は口が重くなる。
「簡単に言うなよ。女同士の喧嘩ならまだしも、男同士の喧嘩は複雑なんだよ」
「そんな言ってる場合ですか?」
俺は重苦しい表情でマリューの顔をじっと見つめていたが、再び彼らに背を向けてポケットから何かを取り出した。
「なんでこんな世界に携帯電話があるのかねぇ」
これはカズマから届いた携帯電話。
それで遂に連絡を取ろうとする。だが、異変を感じ、周囲を見渡す。
「ウォルバク、地震でも起こしてるのか?」
「今は起こしてるつもりはないけど…………」
俺は窓の外を見て、それから玄関に視線を移した。その向こうでは人々が大声を上げて走って行く。
なんだ?何が起きてる?
俺は慌てて外に出て見る。そのまま人々が逃げてくる方向に向かう。倒れた女性を起こすと、馬車が横転する。
「そっち頼む、マリュー、ウォルバク」
俺は何かが起こっている方向に足を進めながら、喋る愛玩鉱物ハーレイに語りかけた。
「ハーレイ、何が起きたの?」
《ぽーん!分かりません。調べます》
「ハーレイ、冒険者ギルドに連絡して冒険者をかき集めろ!」
《ぽーん!了解しました!》
すると、建物の角から巨大な鎧を付けた二足歩行をするカエルのモンスターと、それより小さい男が現れた。
ウォルバクが言っていた奴らの特徴によく似てる。
「聞け。そして喜べ」
小さいほうの男が話しかけた。
「お前達は我が魔王軍の姫によって死を迎えるのだ。感謝するがいい」
こいつが魔王軍の占い師だろうか。
「意味の無いお前達人間の命は…………」
「ごちゃごちゃ騒ぐなよ発情期かこの野郎」
俺はやかましいとばかりに口を挟む。
「さっさと回れ右して帰んな」
「ウォルバク殿。そのうるさい人間は貴方の使い魔ですかな?」
「まさか、貴方と一緒にしないでくれる?」
ウォルバクは占い師にそう言い放つと、両手にオレンジ色の魔法陣を浮かべていざ戦いに備える。
「貴方も聞いてるでしょ?私はもう魔王軍には戻らないわ」
「さっき言ってたヤツですよね?」
マリューは両手をゴキゴキと鳴らしてファイティングポーズを取る。
「さっさと帰れ、このカエル野郎」
俺は魔王軍の2匹にそう言って怒鳴りつけた。
「うんざりだな。裏切り者とあの人間を殺せ、呪々ガエル」
「ゲロロロ」
呪々ガエルは占い師の指示を受け、刺股のような武器を手に俺達に向かって歩き出した。
「行きますよ、リュウジ様!」
「そうだな。この新型の鎧のテストには持ってこいだ」
俺は背筋を伸ばして歩き出し、クラーケンのアームを動かし始める。俺は呪々ガエルの武器と腕をアームで掴み、距離を置く。一瞬の隙を突いて4本のアームを呪々ガエルに向けた。
「『クリムゾン・レーザー』!!」
俺の両腕と4本のアームからクリムゾン・レーザーを飛ばして呪々ガエルを吹っ飛ばした。ジャイアント・トード並にデカい呪々ガエルは占い師に向かって飛んで行くが、占い師はさっと右手を動かして方向を逸らす。呪々ガエルは家屋にぶち当たって止まった。
「なんですかその触手は!?」
マリューは俺に尋ねた。