─────飛空挺に戻る頃には朝日が上り始めていた。留守番をしていたマリュー、ウォルバク、アキノさんが外で何かを囲う様に立っていた。
あんな所で何してんだ?
「おーい、夜が明けた途端どうしたんだ?」
「リュウジ様、密航者です!」
マリューが俺の顔を見ながら言い放つ。
「密航者?」
「リュウジ様?この方は一体どなたですの?」
アキノさんまでもが似た様な事を言い出す。ウォルバクが隙間を開けるとそこには、キャルが座っていた。
「お、お前!?」
「あら?キャルじゃない。キャルも飛空挺で船長やりたかったの?残念だけど、船長は私でセシリーが副船長なのよ?」
なんの話をしているんだコイツは。
「ややこしくなるから先に中に入ってろ」
「殺しましょう、今すぐにでも!」
「待てマリュー」
「何故です!?一度裏切った奴は何度でも裏切りますよ!?リュウジ様がやらないのであれば、私が────」
「待てって言ってるだろ?俺の命令が聞けねぇのか?」
俺はギロっとマリューを睨み付ける。するとマリューは、渋々武器を下ろして飛空挺に入って行く。俺はしゃがみこんでキャルに声を掛ける。
「おい、キャル」
「な、何よ…………」
「何しに来た?まさか、魔王に告げ口しようとしてるのか?なら悪いがここでお前を倒すぞ?」
しゃがみながら拳に雷を纏わせると、キャルは首を横に振った。
「違うわ…………」
「んじゃなんだよ」
キャルは俯きながら答える。
「カズマが…………戦わないようにしたいから」
「…………そうか。なら味方と捉えていいんだな?」
「好きにしたら?魔王を倒したいってだけで利害一致しただけだから」
「そうだな。けど、どさくさに紛れて俺らに攻撃したら容赦しないからな」
「話は決まったわね。魔王軍の軍勢が来るまで時間が無いわ。ここから先は一直線の道しかないの、だから飛空挺なんか直ぐに見つかるから時間はかかるけど、迂回しながら進らしいの」
ウォルバクの言葉に俺は顔を上げた。
「迂回?」
「ええ、こんなに巨大ですと見つかるリスクが高いですからね」
確かに、行軍している真上を通る訳には行かない。
「分かった、アキノさん。向かってくれ!」
「分かりましたわ!他の皆さんは既にお着きなので乗って下さいまし!」
アキノさんに促された俺は飛空挺に乗り込んだ。
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数時間後、アクセルの街にも変化が起きていた。
「おい、カズマ!カズマ、起きろ!起きないか!」
その声で、カズマは目を覚ました。だが、カズマは再び目を閉じて、ダクネスを抱きしめると、そのままゴロンと寝返る。
「むにゃむにゃ、もう食べられないよ…………」
「こっ、こらっ! お前起きているだろ! ああっちょっ…………」
抵抗しなくなったダクネスを見ためぐみんとマヒルは、
「何をしてるんですか!?カズマを起こして来て欲しいと言ったのですよ!まったく、ちょっと目を離すとこの男を誘惑するんですから、とんだ痴女ですね!」
「2人ともさっさと離れるべ!」
「ちちちち、ちがっ!私はまだ何も!」
カズマは伸びをしながら立ち上がる。
「なんだよ3人して。朝っぱらから騒がしいぞ」
「今何時だと思ってんだ!?」
「もう昼ですよ!そんな事より大変なんです!キャルとアクアがいません!」
「どうせその辺ウロウロしてるんじゃないのか?」
「なら、これを見てください!」
俺はめぐみんから手渡された手紙を見る。カズマはそれを開いてみると、中には恐ろしく達筆な字が書かれていた。
『拝啓 余寒なおきびしい昨今ですが、いかがお過ごしでしょうか? ダクネスは、タンスの角に足をぶつける遊びを程々に。めぐみんは、爆裂魔法の使用を控えないと、やがて来るであろう地球温暖化現象の理由の一つに数えられると思います。キャルは、夜勤の仕事ばかりせず日勤の仕事をして見て下さい。マヒルは、青髪がキャラが被るのでそろそろ髪色を変えて下さい。カズマは、性欲を持て余しているのは分かりますが、いい加減みんなの洗濯物を床に敷いて、その上を転がり回るのは止めて下さい』
カズマは、読んでいた手紙をクシャッと丸め、部屋の隅に放り投げた。
「「「あぁっ!」」」
放り投げられた手紙をマヒルが拾って持ってくる。
「何も捨てる事はねぇべ!?」
カズマは仕方なく続きを読む。
『さて、今の世は魔王が蔓延る荒廃した世界です。そんな中、麗しくも美しい女神であるところの、この私が魔王を放置しておく事が出来るでしょうか? いいえ、できませんとも。世界に散らばる敬愛なるアクシズ教徒達。この私を信仰する10億の信者に応え、私は旅立ちます。そう、伝説となるために…………』
カズマは手紙から顔を上げ、3人に尋ねる。
「…………アクシズ教徒って、10億もいたのか?」
「い、いやぁそんなにはいねぇんでねぇか?」
「世界中の信者を集めても、数百人がいいところじゃないか?」
マヒルとダクネスの言葉に、カズマは安心したのかほっとした表情で再び手紙に目を向ける。
『という訳で、ちょっと、魔王退治に行ってきます』
続きを読んだ途端、カズマは声を上げた。
「あのバカッ!?」
ダクネスが慌てるカズマの様子を見て。
「キャルもいないとすると、2人は一緒にいる可能性がある。だが2人で攻め込むほどバカでないから恐らくリュウジや魔剣に声を掛けて行ったかも知れないな…………」
「なら直ぐに追いかけないと!!」
────と、カズマが3人の顔を見て、困った様な微妙な表情に違和感を感じていた。カズマは首を傾げると、めぐみんが手紙の隅っこを指で差す。カズマが視線をやると…………。何かを書いて消した跡。
『追伸。 探して下さい』