アクア、キャルが魔王退治に行った事を知ったカズマは冒険者ギルドにやって来た。理由としては、ギルドから招集を受けたからだ。
「さて、冒険者の皆様に集まって頂いたのは他でもありません。この街に、魔王の軍勢が襲撃に来るとの情報が入りました。アクセルの街だけではありません。王都、エルフの森、紅魔の里、アルカンレティア、エルロードも同じ状況です」
ギルドのテーブルが円を描くように並べ直され、そこには街中の冒険者達が、互いに顔を合わせれる形でところ狭しと席に着いていた。呼び出し内容は、魔王の軍勢によるアクセル襲撃への対策らしい。どうにも良くない状況に皆が顔を顰める中、魔法使いの女性が手を挙げた。
「それって、いつぐらいに攻めてくるって分かるんですか?規模はどれくらい、とか。来ると事前に分かっているなら、救援要請をすれば………」
その言葉に他の冒険者も頷くが、司会進行をしているルナさんが首を振る。
「先程も言いましたが、アクセルの街以外にも襲撃が計画されているそうです。なので王都やエルフの森には救援要請は難しいかと…………なので我々だけで守らればなりません」
それだけ告げると、暗い表情のまま冒険者達を見回した。すると、戦士の男性が手を挙げる。
「そういえば、マン・オブ・スティールとミツルギさんはどこいったんだ?あの人達なら何とかなるだろ?」
「そうだ、リュウジ達が入れば!!」
「サトウカズマ、お前知ってるんじゃないのか!?」
こぞってリュウジとミツルギの名前を上げると、カズマは口を開く。
「あいつらがどこほっつき歩いてるのかは俺だって知りたいよ。アクアなんて魔王退治に行くって書き置き残して、夜中に出てったみたいでさ。今頃アルカンレティアあたりじゃないか?」
「魔王退治!?」
ギルドの中に蜂の巣でも落としたように騒ぎ始める。
「アクアさんもいないだと!?リュウジ、ミツルギさん、アクアさんまでいねぇのか!?」
「もう終わりだ!詰んだ!」
「童貞のまま死にたくねぇよぉー!」
「落ち着いて下さいっ!皆さん、落ち着いて下さい!この中で、リュウジさん、ミツルギさん、アクアさんを見かけた方はいませんか!?」
ルナさんが声を張り上げると、ギルド内が一瞬静まり返る。やがてそこかしこで3人についての情報が飛び交うが、いつの間にかリュウジが家を引き払った事しか分からなかった。
…………と、その時。
「放っとけ!」
ダストが椅子に腰掛けながらだらしなく足を投げ出し。
「この街ぐらい、Adventuresが居なくたってどうにでもなるんだよ。ルナさんよぉ!ここには高レベル冒険者がたくさん居るんだからな。Adventuresなんかに頼らねぇで、俺達に頼れや!」
「そ、そうよ!あたしらだけでなんとかしようよ!」
「Adventuresがなんだってんだ!」
そんな事を言い出したダスト、キース、リーン。傍にはオロオロしながら、その暴言を止めようかと迷っているユイの姿がある。
「いえ、そうは言いましても…………この中にリュウジさんやミツルギさんと同等のレベル80以上の冒険者がどれだけ居ますか?レベル20を超えると、この街を出てもっと実入りの良いモンスターが生息する地域へ拠点を移すのが習慣となっています。ですのでこの街には、レベル20以上の方が数人居れば良い方でしょう…………」
カズマが首を傾げていると、ルナさんが困った表情を浮かべながら説明する。
と、その時だった。
ダストがポツリと言った。
「ちなみに俺、レベル45だぞ?」
「あたしはレベル43」
「俺もレベル44」
「私も、レベル43です」
「えっ…………?」
ダスト達の言葉に、ルナさんが驚きの声を上げた。やがて、他の男達が立ち上がる。
「俺、リュウジに鍛えてもらって俺、レベル38です」
「俺も、ミツルギさんに剣の稽古を付けてもらってレベル35です!」
立ち上がったのは、誰も彼もがレベル30以上の者ばかり。
「み、皆さん…………!守りましょう!リュウジさん達が居なくとも、我々だけでこの街を守れます!」
ルナさんやギルド職員達が感極まって涙ぐみ、そんな事を言う中で。カズマは、立ち上がった冒険者達が、男しかいない事に気が付いた。
「…………リーンとユイ以外サキュバスの店の常連さんばっかじゃねぇか」
それからギルドで防衛作戦が立てられるという事により、カズマは特にやる事もなく屋敷に戻った。
「帰りましたよ!」
「けぇったどー!」
ドアを開けためぐみんとマヒルが、誰もいないのに声を張る。
「ん?おい、カズマに手紙が届いているど?」
ドアポストを覗いていたマヒルが、そう言って手紙を渡してきた。
「おっ、妹からの手紙だ!」
「い、妹!?カズマに妹居ただか!?」
「アイリス様からの手紙だと言い直せ」
どうでもいい事を突っ込んでくるダクネスを尻目に、カズマはウキウキで目を通した。
『拝啓 雪精が増えている時期です。こうして突然お手紙を差し上げたのは他でもなく、既に聞き及びの事とは思いますが、つい先日、マン・オブ・スティール様が魔王軍の占い師と幹部候補を撃退したのですが、最後の魔王軍幹部、魔王の娘が王都へ攻めて来るとの事です。魔王の娘は軍勢を率いるのに長けていると言われており、武闘派で知られる紅魔族の里を襲い、焼き払った過去を持ちます。今回の人類と魔王軍の戦いは激しいものになるでしょう。ユースティアナ王女もエルフの森を防衛に徹すると知らせが来ました。まるでお別れの様な言葉になってしまいましたが、王都にはお兄様のような、黒髪黒目をもつ強い方々がたくさんいらっしゃいますので大丈夫です。王都やエルフの森と同じくアクセルの街への襲撃計画も立てられているそうですが、どうかご自愛のほどお祈り申し上げます。私の兄である事を、貴方が誇れるような妹に─────ベルセルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス 追伸 魔王の娘をやっつけたらなら、お兄様は褒めてくれますか?』
「「「…………」」」
手紙を読み終えたカズマ達は無言になった。