アイリスの手紙を読んだその晩。カズマは軽く飯を食い、風呂に入る。そして、風呂から上がると、寝巻きではなく黒のワンピース姿のめぐみんが、風呂上がりのカズマを待つかのように、ソファーでゴロゴロしていた。
「俺はもう寝るけど…………そんな格好でどこへ行くか知らないけど、めぐみんももう寝とけよ?」
「そうですね。では、私もそろそろ寝ましょうか」
言いながら、めぐみんがふと立ち上がった。そして、自室に向かうカズマの後ろをなぜか一緒に付いてくる。カズマが部屋のドアを開けると、めぐみんが当たり前のように入って来た。
「…………えっと、何してんの?寝るんじゃないのか?」
「寝ますよ?カズマと一緒に」
「えっ?」
カズマが固まっていると、めぐみんはベッドの前に歩いて行き、シーツの具合をポンポンと叩いて確かめ。
「カズマが何を考えているのか分かります。夜が明けたらアクアを追いかけるんですよね?だとしたら今までのどんな旅より危険なものになるでしょう。なので…………。お互い、後悔が無いようにしておきましょう」
めぐみんは、そんな事を言いながらはにかんだ。
「…………えっ?」
「あ、改めてこういう状況になると、や、やっぱりちょっと緊張しますね。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ、問題ない。めぐみんこそ、無理はするなよ?」
めぐみんはカズマのワンピースに向かう視線を感じ取ったのか。
「これが私が持っている服の中で、唯一色気のある服なんですが…………。どうですか?大丈夫ですか? ちゃんと、その…………」
「だ、大丈夫だ、綺麗だし、その、ムラムラする」
「ム、ムラムラしますか。もうちょっと、こう…………。いえ、カズマらしいですね」
言いながら、クスリと笑った。そして、こちらを迎え入れるように、横たわったまま手を広げて微笑んだ。
「辛いんでしょう?大丈夫です、私が全部受け止めますから。何があっても後悔のないように、やり残した事なんて無いように。好きにしてくれていいんですよ?…………? どうしました?」
いつまで経ってもキスしないカズマに、めぐみんが不安そうに尋ねてくる。
「…………ごめん」
「…………その、私ではダメですか? ダクネスほどの大きさはありませんが、形はキャルやマヒルのよりは良いと思いますよ?見てみますか?」
「凄く見た…………、いや、そうじゃない。正直に言って、やりたい。凄くやりたい。もう下半身も大変な事態だ。だから、めぐみんに魅力が無いワケじゃない。でも…………アクアがいて、ダクネスもいて、キャルもいて、マヒルもいて。皆が屋敷にいる中で、あいつらに邪魔されないかとヒヤヒヤしながら情事に耽る方がいい。見付からないようにコソコソと、めぐみんの部屋に行ったり。で、結局良いところで邪魔が入るんだろうけど、それでも…………」
言いかけた言葉が、口を塞がれた事によって遮られた。口付けてきためぐみんがカズマの首に両手を回し、情熱的に口を吸ってくる。口腔内をめぐみんの舌がチロチロと這い、何も考えられなくなっていた。カズマは自然とめぐみんを抱きしめ、そのまま…………、
「…………あなたの、そんなのところが好きですよ。たまらなく大好きです」
カズマがそのまま進もうとするとめぐみんが唇を離し、カズマの頭を自分の胸に抱き込みながら囁いた。ほうと熱い息を吐き、そして、愛おしそうに後頭部を撫でる。
「アクアとキャルを連れ戻したら、その日の夜に2人で凄い事をしましょう。約束ですよ?」
めぐみんは、耳元で囁くように言った後、そっとカズマの両肩を押してベッドからするりと降りた。
「カズマがごめんって言った時。理由を聞くまで凄く不安になりました。なのでお返しに、私もちょっとだけ意地悪させてもらいます」
「その…………。謝るんで、もうちょっと続きをなんとかならないですかね…………」
「こ、この男は…………!どうせなら、最後までカッコイイままでいて下さいよ」
めぐみんは、そのままカズマの部屋から出て行くでもなく、なぜか部屋の隅にあるクローゼットの前に立つ。
「というわけで、ダクネスもマヒルもそこでモジモジしてないで、部屋に戻りますよ!」
「わぁっ!」
「ぬわっ!」
めぐみんがバンとクローゼットを開けると、そこには、何故か正座して頬を赤らめているダクネスとマヒルがいた。
「なななな、なぜ私がここに」
「いいいるって分かっただか!?」
「なぜここにいるのが分かったのか、ですか?手紙を見てカズマが覚悟を決めたと悟って風呂から上がる前にそそくさと2人で2階に引っ込む!さしずめ忍び込む場所が被ったのでしょうね。紅魔族は知能がとても高いのです、あなた達の行動なんてお見通しなんですよ!」
「ちちちちちがっ!」
「ごごご誤解だ!これには深い訳が!」
「私とカズマの情事を盗み見ているうちに自分達も盛り上がってきてしまい、そんな姿勢になっていたんでしょう!なんてエロいんでしょうかこの娘達は!ほら、いつまでも盛ってないで部屋に戻りますよ!」
めぐみんはズルズルと2人を引きずりながら部屋を出て行った。取り残されたカズマは…………。
「えっと、俺はこの昂った気持ちをどうすれば…………。ったく、クローゼットくらい閉めて…………」
クローゼットを閉めようとしたその時、見覚えのない箱が目に入った。カズマはその箱を引っ張り出して開けて見ると、そこには、新品で軽装の鎧と聖盾イージス、そしてスキルアップポーションと記された一升瓶が中に入っていた。カズマはふっと鼻で笑い、
「アイツ…………ったく、しょうがねぇなぁっ!」
カズマの声が廊下に響いた途端、めぐみんはニヤリと微笑んだ。