カズマがようやく重い腰を上げたのを知らない俺達は、迂回ルートで進み魔王の城まで数キロという所までやって来た。俺は飛空挺から大荷物を背負いながら降りてくる。坂を登って先を見ると、漆黒の巨城が広がっていた。
魔竜が昔住んでた頃の城よりデカイ。
その巨城の下には魔王軍がゾロゾロと列をなしてどこかへ向かって行くのが見える。アキノさんは忙しそうに声を掛ける。
「では、リュウジ様、ミツルギ様もお気を付けて。私は一旦王都に戻りますので」
「ここまで送ってくれてありがとうございます。アキノさんも気を付けて」
頭を下げてアキノさんにお礼を言う。アキノさんはウォルバクと顔を見合わせて相槌を交わした。飛空挺を見送ると中、メリッサが双眼鏡で魔王軍の進軍を偵察していると、
「ねぇ、そこの猫の獣人ちゃん。あの軍は何処へ向かってるのかしら?」
「アレは…………王都とエルフの森に向かう軍ね」
「まだ他にもいるの?」
「アクセルの街などに向かう軍はまだ出てない見たいね、どうする?」
「ちょっと〜?どうするの?」
メリッサが俺に答えを求めてくる。俺は予備の鎧をメンテナンスしながら、
「キャル、アクセルの街への軍は区別出来るのか?」
「え?ええまぁ、分かるけど」
「アクセルの街に向かう軍が進み始めたら奇襲を掛けよう」
「リュウジ、正気か!?」
ティルフィングを手入れしていたミツルギが反応する。俺は立ち上がって大きな箱の蓋を開けながら答える。
「勿論勝算があるから奇襲をかけるんだよ。ほらっ」
俺は大きな箱から魔剣グラムを取り出してミツルギに投げ渡した。ミツルギは慌てて受け取る。
「魔剣グラム!?」
「そろそろ使っても問題ないだろ。大群を相手にするんだ、少しでも魔法剣は魔王に取っておけ。魔王だって大人しくグラムの一撃を食らってくれる保証なんて何処にも無いんだからな」
ミツルギは魔剣グラムの柄をぎゅっと握り締める。
「分かった」
「ねぇ、リュウジ?今着てる鎧だけじゃ足りないの?魔王使ってそんなに強いのかしら?」
何言ってんのこの子。
俺がドン引くと、ウォルバクが口を開く。
「魔王はもう歳なんだけど、今の時点では娘の方が厄介らしいわ」
「え?なら楽勝じゃない!」
「そうだけど、腐っても魔王。オーガを1人で叩き潰す力は残ってるわ。それに魔王は変わった能力を使うのよ」
ウォルバクの言葉にアオイとゆんゆんが首を傾げる。
「変わった能力ってなんですか?」
「もしかして、カズマさん達の様な不思議な能力を使うとか?」
「似た様なものね、この人数で勝てるかどうも分からないわ」
「ウォルバク、魔王はどんな能力を使うんだ?」
「そうね………。ゴブリンやコボルトをオーガの様に強化させる能力って言えばいいのかしら?」
サポート系の能力か、だとすると厄介極まりない。
「なら少しでも兵隊を減らした方が無難だな」
「そうだな、奇襲でどこまで減らせるかが勝負だな」
「アクセルの街へ向かう軍が出て来たわよ!」
キャルの言葉に俺達は緊張が走る。アオイとゆんゆんも怖くなったのかプルプルと震える。俺は予備の鎧を近くの岩場に隠す。
「さぁ、殴り込みますか!」
「いよいよね!さぁ、行くわよ!」
横一列に並びながら進んだ瞬間、全員見えない何かに激突した。俺は鼻を抑えながら叫ぶ。
「アクア!結界破って無かったのか!?」
「ご、ごめん!カーテンみたいにふわーっと消せると思って」
「こんのバカが!さっさと消せ!」
「分かったわよ!アンタも手伝って!」
アクアはウォルバクの手を引っ張る。ウォルバクは溜め息を吐きながら両手をかざした。
「せーのっ!」
「はぁぁっ!」
アクアとウォルバクによって、魔王の城に張り巡らせていた結界に少しの切れ目が現れた。俺達は慌てて裂け目を通る。
「全員通ったな?」
「あのー!もうそろそろ限界なんですけどぉっ!?」
「もういいぞアクア、ウォルバク」
合図をすると、結界は裂け目を閉じて再び閉ざされた。これで逃げ道を無くしてしまった。もう後戻りは出来ない。
「1人1000は倒すように頑張ろう!」
「大変ですけど、頑張ります!」
「それじゃ、皆…………行こう!」
俺達は魔王軍の列に向かって走り出した。射程距離に入ったのを確認したゆんゆんが密集しているところに向かって、
「『ライトオブセイバー』!!」
一瞬で魔王軍の兵隊達は薙ぎ払われた。突然の奇襲で混乱し始める。
「こ、こいつらどっから来たんだ!?」
「マズイ!他の部隊にも知らせ───」
「『狙撃』!!」
他の兵隊に知らせようとした魔族をアオイが狙撃で倒す。パニックになった所を俺とミツルギは大暴れする。100、200と次々敵をなぎ倒す。
「魔剣グラムよ、ボクに力を貸してくれ!」
ミツルギは魔剣グラムを構えると、魔剣グラムは今まで見た事無いほど光り輝いていた。
「これが、勇者の力だっ!『シャイニングスラッシュ』!!」
光り輝いている魔剣グラムを振り下ろした瞬間、巨大な斬撃がどこまでも飛んで行ってしまった。あまりにも威力が上がっているのに使っているミツルギ本人が驚いていた。