剣は脇腹を完全に突き抜けて、俺は苦しそうな声を上げながら後退する。
「良くやった、威勢のいい冒険者と記憶に残しておいてやる」
魔王は座り込んだ俺に顔を近付け、左手で頭を撫でる。
「苦しまない様に一瞬で終わらせてやる」
「へへっ…………」
俺は不敵に笑みを浮かべると魔王は首を傾げる。
「何がおかしい?」
「お前、俺に気を取られすぎだ」
「何?」
俺と魔王の真上には紫色の魔法陣が現れていた。その隙に足元には太い植物のツルが巻き付いている。今までメリッサが潜伏を駆使してチャンスを伺っていたようだ。
「くたばれ魔王」
俺はサークルに入り場所を移動する。俺がアクア達のそばに現れた瞬間、キャル、ゆんゆん、メリッサ、アオイが叫んだ。
「『アビスバースト』!」
「『ライトオブセイバー』!」
「『ミッドナイトエッジ』!」
「『ヴェノムブラスト』!」
アオイの猛毒、キャルの雷撃、ゆんゆんの斬撃が直撃した。俺はアクアとセシリーに回復してもらい、脇腹の傷を癒した。怒涛の攻撃の土煙が晴れると、魔王が仁王立ちしながら頭から血を流していた。
「まさか、自分自ら囮になるとはな…………だが、これでトドメだ!」
魔王が魔法陣を繰り出したその時。
「『エクスプロージョン』!!」
突然、魔王の城の結界に衝撃が走った。アクアに脇腹を治療して貰った俺はミフユさんに隠していた予備の鎧のレッドウォーリアの強化版【クリムゾンウォーリア】を持って来て貰い、装備して上を見上げる。
あれは!?
「『エクスプロージョン』─────ッ!!」「『エクスプロージョン』───────ッ!!」
めぐみんの絶叫が響き渡った。その理不尽過ぎる威力の爆裂魔法が連続で叩き込まれる。それと同時に城に残っていた魔王軍の連中がワラワラと魔王のそばに走って行く。
「魔王様、結界が持ちそうにありません!城の中へ退避を!」
「なんだあれは!?どこから撃っている!?」
俺は千里眼で崖の上を確認してみると、カズマ達が確認出来た。
来たか…………。
魔王が後退し始めた瞬間、俺は立ち上がってミツルギに叫ぶ。
「ミツルギ!魔王を逃がすな!」
「ああっ!分かってる!」
「者共、王を守れ!奴らを城の中へ通すなっ!」
魔王が城の中へ避難すると同時に漆黒の鎧に身を固めた暗黒騎士や闇色のローブをまとった魔道士風のヤツや、翼の生えたガーゴイルがぞろぞろと現れた。アクアは怯んだ魔王に指を差して魔王に叫ぶ。
「あーっ!魔王が逃げるんですかぁ〜?プークスクス!」
「チャンスを逃すな!城の中以外に逃げる場所はない!行くぞ!」
俺達はモンスター達を蹴散らしながら魔王を追跡して城の中へと突入した。その間外からは何度も続く轟音が響き渡る中、城門を過ぎた辺りで白い仮面を身に着けた、強者オーラを醸し出す魔法使いが現れた。仮面も真っ白なら、着ているローブや杖も白。
「良くぞここまで辿り着いたな、命知らずの冒険者─────」
「どぉけぇぇぇぇっ!!」
俺はマグニートー・ハルクの腕で白いヤツを殴り壁にめり込ませた。巨大な拳の形のクレーターの中からは、
「……我が……は、魔王軍……の…………いきなり…………!」
知るかボケ。
白いヤツを倒している間にミツルギとミフユさんがモンスターを一掃していた。倒れている中にはデュークの様な奴も混じっている。すると、遂に結界を破壊したのか、カズマ達も城の中へと入って来た。ゆんゆんとアオイはめぐみんの顔を見た途端、めぐみんに抱きついた。
「めぐみん!うわーん!めぐみん!めぐみん!」
「めぐみんさぁぁぁぁん!!」
「ど、どうしたんですかゆんゆん、アオイ。普段から涙目が多いあなた方ですが、今日は特に酷いですよ!?」
ゆんゆんとアオイを慰めているめぐみんの後ろから、カズマが現れた。カズマは俺に声を掛ける。
「おい、言い出しっぺのアクアはどうした!?」
「え?アクア?さっきまで一緒だったぞ?その辺にいねぇか?」
城内で魔王を探しながら暴れていた為、俺はアクアの存在を忘れていた。辺りを見渡したカズマは呟く。
「…………いないんだけど?」
「…………え?」
アクアが迷子になった。
魔王軍を警戒しながら俺達は合流し、状況を伝えて魔王を探す前にアクアを探す事になった。
「どこいったんだよアイツ!ものの数分で!」
「緊急事態だ、あまり離れたくないけど手分けしてアクアを捜すぞ!」
地下にはマリュー、キャル、マヒル、アオイ。今の階にはゆんゆん、メリッサ、ダクネス、めぐみん、ミフユさん。上の階には俺、カズマ、ミツルギが行く事になった。城の内部構造は、さながらダンジョンのようだ。壁のあちこちに明かりが灯り、侵入者を防ぐためなのか進路は入り組んでいた。魔竜の城とは違ってこの世界の魔王の城は清潔感がある。カズマが突然不思議な物を見付けた。
「おい、なんだこれ?」
「ん……?『押すな』?」
行き止まりの通路の奥に、『押すな』と書かれた紙が貼ってあった。紙の前には魔法陣が描かれており、隣にはボタンがあった。
「なんだこれは?」
「分かりやすいなぁ…………」
「どう見ても罠だろうな」
辺りを警戒しながら仕掛けがないか探っていると、カズマが突然何を思ったのかボタンを押した。
「このバカ!何やってんだ!」
「おい!押すなって書いてるだろ!」
「バカヤロ!押すな押すなは押せだろうが!」
3人で魔法陣の上で揉めていると、いつの間にか別の空間に変わっていた。