俺は光り輝く右腕を構え、こう呟いた。
「『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は猛獣の爪牙也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい』っ!!」
そう唱えた途端、凄まじい魔力が解き放たれて俺の体からは青いオーラを纏ったライオンが現れた。ライオンは耳を塞ぐ程の咆哮を上げた。それを見届けた魔王は、笑いながら俺に言い放つ。
「その凄まじい魔力見事だ。武器に頼らず、己の拳のみでここまで出来るやつは見た事がないっ! この魔王【八坂恭一】、お前を最強の冒険者と認めようっ!!」
「うおおおおぉっ!」
俺がそのまま魔王に向かって駆け出すと、ライオンも駆け出す。魔王も受けて立とうと剣を構えた。
「速いっ!」
「『ライジング・インパクト』ッ!!」
俺はそのまま飛び上がってコークスクリューブローを繰り出して魔王の腹部に食らわせた。そのまま魔王を地面をえぐりながら押し続けるが、強力な魔力の熱により右の手甲が赤く熔け始めた。激痛に耐えながら俺は攻撃を続ける。そして、岩壁に激突した魔王は血反吐を吐き、爆風に巻き込まれた。それをただ黙って見ているしかなかったカズマ達は唖然としていた。最初に口を開いたのは、めぐみんだった。
「なんですか今のは!?リュウジは、リュウジはどこですか!?」
「煙で何も見えない、カズマ、お前は見えているんだろ!?」
「ちょっと待て、今探してる!!」
千里眼で俺を探しているカズマはダクネスに促されて辺りを見渡す。そして、ゆらりと立ち上がった人影を見付けた。
「いたっ!リュウジだっ!!」
カズマが安堵したつかの間、土煙が晴れた先には……魔王が立っていた。魔王は脇腹を抉られており、顔半分から血が流れていた。それを見たカズマは顔を青ざめる。
「ここまで傷を負わせたのは銀髪の盗賊以来か……」
楽しげに言い放った。肝心な俺は右腕を失い、右半分が溶けた鎧に顔が焼け焦げて倒れていた。ふうっと風が吹くと俺の体は塵になってしまった。カズマは俺を発見した瞬間呟いた。
「リュウジが……死んだ…………」
一瞬で手遅れと判断していた。俺の死を知った周りの連中が騒ぎ出した。
「リュウジが死んだ!?嘘だろ!?」
「いや、いやいやいやいやいやいやいやいや嘘でしょ?」
「嘘ですよね!?ユニ先輩嘘ですよね!?嘘って言って下さい!!」
「分かっている!ロゼッタに何度聞いても死亡確認としか言わないのだ!おのれロゼッタめ、こんな時に壊れるとはな!!ぼくは認めないぞ!」
なかよし部の3人が涙目になりながら騒いでいた。アクアも手の施しようがないと理解したのか、顔を濁らせていた。だが、魔王は止まることなく不気味に笑いながら近付いて来る。
「他にはいないのか、我を楽しませてくれる男は!?」
血を口からボタボタと垂らしながら歩み寄る魔王。その時、魔法の詠唱を行いながら、カズマが魔王に飛び込んだ。
「『テレポート』───────ッ!!」
───────────────────────
あれからどうなったのだろうか。体がフワフワして、心許ない。というか、体が無いような気がする。
フワフワとした気分でいると、遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえた気がした。無意識に辿るようにしていると、やがて大きな光が見えて来た。
「やぁやぁ、ようこそ死後の世界へ。ボクは炉を司る女神・ヘスティア────。えーっと、フクヤマリュウジくん、君はボクの友達が担当する世界に君臨していた魔王との戦いにより亡くなりました」
目の前には艶のある漆黒の髪が耳を隠すほど伸びていて、更に横からはツインテールが作られ腰まで届いていた女の子が立っていた。以前エリスの部屋の写真に写っていた子だと直ぐに気付いた。隣には泣き叫ぶエリスを宥めるアメスまでいる。
「ごめんねぇ、本来ならエリスが言うはずなんだけど、君が死んだ途端暴れ始めちゃってさ……。ちなみにボクはエリスの同期なんだけど、ボクの担当の子がダンジョン行ってて暇だったんだよ」
なるほど、俺は最後の攻撃をした後塵になって死んだのか。あの後どうなったのだろう……。
『アメスちゃん、ヘスティアちゃん。あの後どうなったか分かる?』
2人に話しかけると、宥めていたアメスが口を開いた。
「エリスがこんな調子だから説明するけど、魔王は死んでなかった」
死んでねぇのかよ。いよいよ俺の幸運値は使い物にならんな。
「けど、あの後サトウカズマって人が魔王を最深層のダンジョンにテレポートして今現在1人で戦ってるわ」
は?
『アイツがタイマン張ってんの!?』
「ええ、何か策があるんじゃない? ほら、エリス!いつまで泣いてるの!最後まで使命を真っ当しなさい!」
アメスが喝を入れると、エリスはようやく口を開いた。
「ひっぐ……あなたは……やだよぉ、言いたくないよぉっ!」
「ほらほら、泣かないで。仕事なんだから仕方ないじゃないか」
ガチ泣きじゃん。こんなに泣いてるのは金獅子ってバレた辺りくらいか。
ヘスティアにもなぐさめられて少し落ち着き始める。
「ぐすっ……ごめん。もう大丈夫…………ありがとう、ヘスティア。さて、残りの願いを叶えちゃおうか!」
あー、忘れてたわ。
『あと2つだったな?』
「うん、何をお願いする?」
うーん。
俺が考えていると、ネメシスとリスタルテが居ない事に気付いた。
『あれ?そういえば、ネメシスとリスタルテは?』
「リスタルテはあれからゲブランデの魔王をセイヤさんと共に戦って倒したよ。けど……」
『けど?どうしたんだ?』
エリスが顔を曇らせながら、
「魔王を倒す時キミと同じ様に刺し違う形で倒したんだけど、リスタルテは限界を超えたセイヤさんを救う為に神界のルールを破ったの。それにより、リスタルテは女神を辞めさせられるかも知れない…………ネメシスはその書類整理をしてるよ」
『そうなのか……』
「で?どうするか決めたの? 今なら何でも叶うよ?」
目を赤くしながらエリスは俺に尋ねた。俺は沈黙を破る様に言った。
『1つ、チート制度を完全撤廃と回収されてない神器を全て回収』
そう言った瞬間、エリスはキョトンとした顔をした。
「え?こんなんでいいの!?」
『うん。これなら今後無闇に転生されないし、神器探ししなくて済むだろ?エリス様?』
「あー……なるほどね、で?最後の願いは何? ほら、カズマさんだったら「あのろくでもない世界へ送ってください」って言うかもよ?キミも言ったらどうなのさ!」
素直に来てくれって言えばいいのに……。
『2つ、リスタルテの処分を撤回しろ』
「えっ?」
『えっ?ダメなの?』
「ダメじゃないけど……いや、今ヒントあげたじゃん! 向こうに行ったらとんでもないご褒美あるかも知れないんだよ!?」
『いやいやいやいやリスタルテに恩を返さすのが先だろ』
「いやいやいやいやいやいやいやいや、いいから!ほら、行くんでしょ?皆待ってるから!」
『分かった分かった……』
「はい、2つ目はなんですか?」
『リスタルテの処分を撤回しろ』
そう言った瞬間、またエリスが泣き始めた。慌ててアメスとヘスティアが宥める。
「このバカァァァッ!!」
「ちょっとやりすぎだって!」
「宥めるの大変なんだぞ!?いじめっ子かい君は!?」
俺の願いが承認されたのか、リスタルテとネメシスがその場に現れた。ネメシスはペンを持った状態、リスタルテは体育座りの状態だった。
「あ、あれ?」
「私、なんでここに?」
『お?同期全員集合か?』
全員そろったと思えば、エリスは泣き崩れてしまう。それと同時に大女神イシスターが現れた。
「フクヤマリュウジ、お疲れ様でした。お迎えに来ましたよ」
「「「「お疲れ様です!」」」」
エリスを除いた4人の女神が揃ってイシスターに敬礼する。すると、エリスがイシスターに泣すがる。
「お願いします!リュウジを連れて行かないで下さいっ!まだまだやりたい事がたくさんあるんです!お願いします!」
「エリス、決定事項です。諦めなさい……もうすぐサトウカズマ水の女神アクアもここへやって来るでしょう。それと、ほか4人は神界に戻りなさい」
「「「イエッサー!」」」
リスタルテ、ネメシス、ヘスティア、アメスは神界に帰って行った。エリスも泣きながらいつも座っている椅子に歩いて行く。俺はイシスターに連れて行かれた。
次回、最終話です!