リュウジ(バニル)とカズマは地上に戻る為に来た道を戻っていた。相変わらずリュウジは何故かゲラゲラ笑っている。本当に精神がおかしくなってしまったのではないだろうか?
「小僧!我輩の支配に抵抗しているこの男の体には常に激痛が走ってるのだ!このままでは男の心が壊れてしまうぞ!」
「うひゃひゃひゃひゃ!壊れるだってさ!無理無理こんなんで俺が壊れる訳ねぇじゃん?」
「頑張れリュウジ、地上に出たら、直ぐに楽にしてやるからな!?」
「お構いなく」
バニルとカズマは聞き返した。
「今なんてった?」
「お構いなくって言いましたぶひゃひゃひゃ!」
「なっなぁ!?もう心壊れちまってんじゃないか!?」
「我輩の”魔力”が関係している様だな、まず貴様!くすぐったいとはなんなんだ!?」
「俺にも分かんないんだけどさ、体中くすぐられてるかんじなんだよ、変な魔力感じるからかな?」
バニルもリュウジの原因がイマイチ分からない様だ。おそらく悪魔の魔力が入ってトリップでも起こしたのだろう。
「リュウジ!良く耐えた!もうすぐだぞ!!」
カズマはリュウジに問い掛けるが、反応がなかった。
「………………」
「リュウジ?」
「フハハハハハ!支配完了だ!手こずらせおって!フハハハハハ!無警戒にで迎えてくれる貴様の仲間のプリーストにキツイ一撃を食らわしてやるわぁ!」
「リュウジィィィ!目を覚ませぇぇ!」
バニルに乗っ取られたリュウジの体は猛スピードで階段を駆け上がって行った。
「フハハハハハ!無駄だ小僧!さぁ、無事にダンジョンから生還した仲間同士の感動の対面である!忌々しい我宿敵を乗っ取られた仲間の体を前に一体どう出るのか楽しみである!」
バニル(リュウジ)が地上に飛び出した瞬間、魔法陣が展開された。
「『セイクリッド・エクソシズム』!!」
「「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
リュウジ(バニル)は神聖属性の光に包まれ、苦しみ出した。リュウジ(バニル)は煙を立てながら倒れた。カズマも追い付いて、アクアを止めた。
「リュウジ!?おいコラ!いきなり魔法を撃つなよ!」
「なんか邪悪な気配が近付いて来たから撃ち込んでみたんですけど?」
「わぁぁ!リュウジ!?どうしたの!?」
「リュウジは今、魔王軍幹部に体を乗っ取られてるんだよ!」
「えぇ!?乗っ取られた!?」
「くっさ!何これくっさ!間違いないわ!悪魔から漂う匂いよ!リュウジったらエンガチョね!」
「うわぁ〜どんな匂いか分かんないけど、リュウジ来ないでね」
アクアとクリスからゴミの様な扱いを受けるバニル(リュウジ)は立ち上がった。
「フハハハ……まずは初めましてだ、忌々しい水の女神と同じ名前のプリーストよ!我が名は「ちょっとまって、俺そんなに臭い!?」我が名はバニ「クリスもそんな避けんなよ!相棒だろ!?」ええぃ!やかましいわぁ!ゼーゼー……」
バニル(リュウジ)は息切れをしながら仕切り直した。
さすがの悪魔のバニルも根を上げ始めた様だ。
「ゼーゼー……我名は……バニル、出合い頭に退魔魔法とは、これだからアクシズ教は忌み嫌われるのだ!礼儀を知らんのか!?えぇ!?」
「やっだぁ、悪魔相手に礼儀とか何言っちゃってるんですか〜?人の悪感情がないと生きて行けない寄生虫じゃないですか?プークスクス!」
「そーだそーだ!悪魔なんてくたばっちゃえ!」
バニル(リュウジ)とアクアとクリスが睨み合った途端、攻防戦が始まった。アクアはウルトラマ〇のポーズをとり、クリスはバインドを放った。
「アクアさん!行きますよ!『バインド』!」
「行くわよクリス!『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』」
「うおっ!あっぶな!」
バニル(リュウジ)は横に飛んで回避した。回避した途端女神コンビから罵声が飛んで来た。
「ちょっとリュウジ!なんで避けるのよ!じっとしてて頂戴!」
「そうだよリュウジ!なんで避けるのさぁ!」
「あっいや、そんな事言われても……」
わちゃわちゃ揉めていると、めぐみんが興奮しながらカズマに言い放つ。
「カズマ!リュウジにだけずるいですよ!私もあの仮面が欲しいです、紅魔族の琴線に触れるのですが!?」
「バカか!あの仮面が本体なんだよ!」
「確かに、あの仮面は手配者に記されている見通す大悪魔!?リュウジさんに取り付いたのですか!?冒険者の皆さん!確保をお願いします!」
セナも状況を理解し、セナがあらかじめ応援を呼んで待機させていた他の冒険者達に指示を出した。
「うおぉぉ!」
「リュウジ、悪いが我慢してくれよ!」
「フハハハハハ!雑魚どもがぁ!」
数名の冒険者達がバニル(リュウジ)に襲いかかったが、回し蹴りや、右ストレート、左フックを繰り出し冒険者達を圧倒した。
「ちょっとリュウジ!動いちゃダメだってば!」
「助かりたいの?助かりたくないの!?どっちなのさぁ!」
「くっ、流石はリュウジだ……歯が立たん……」
「アクアちゃん、クリスちゃん、仮にも鋼のリュウジの体だぜ?」
「ただでさえ強い奴に乗り移りやがって!」
「あのブラックナイトの篭手で全部弾きやがる!」
バニル(リュウジ)はリュウジの体が気に入ったのか、満足気な声を出す
「ふむ、この体は具合が良いな、筋力もあるし耐久性もある」
(これは、さすがにちょっとやべぇな……)
「フハハハハハ!さぁかかって来い、へなちょこ冒険者共が!」
「こんな形でリュウジと手合わせになるとはな!」
「リュウジてめぇ!さらに強くなったからって調子に乗りやがって!」
「あんた!Adventuresの中ではまともな人の方だと思ったのに!」
「えぇ!?俺が文句言われるの!?ちょっとまって、俺悪者!?」
応援に駆けつけた冒険者とダクネスに取り囲まれるリュウジ(バニル)。それを不安そうに見つめるめぐみんとセナ。
「カズマ、なんとかしてあげて下さい!」
「サトウさん!参戦しないのですか!?」
「ぐはぁっ!」
「つっつぇ……」
カズマ達が話している間にバニル(リュウジ)は冒険者達とダクネスを殴り倒し、アクアに詰めよろうとしていた。
「かじゅま〜ピンチなんですけど!今までで1番ピンチなんですけどぉー!かじゅまさーん!かじゅまさーん!」
「しょうがねぇ……」
「ちょっとリュウジ!!」
カズマが打って出ようとした時、クリスがアクアの前に立ちはだかった。クリスの顔は怒りに満ちていた。
「クリス!?」
「おっおい!クリス!危ないぞ!!」
「ねぇリュウジ、いつからそんな悪魔に操られる程弱くなったの?」
「無駄だ盗賊の小娘、貴様の声なんぞ届く」
「おいゴラァ!今なんつった!?」
クリスの声が届いたのか、支配されたかと思ったリュウジはまだ健在の様だった。
「なんたる鋼の精神力よ……」
「あたしがその封印の札を取ってあげるから!そのちょっとカッコイイ仮面外して投げ捨てて!」
「ほう、この仮面の良さを知る盗賊の小娘にこの潜在能力を引き出した我輩を相手にどうやって封印を解くのか「潜在能力って…たいして変わってないような気がするけどね?」フハハハハハ!この我輩をねじ伏せて「この封印の札を」剥せとでも「言うなら!」やれるものなら「やって見ろや!」やかましいわ!しぶといヤツめ!我輩の決めゼリフを持ってくな!」
ゼーゼー息切れを起こすバニル。
クリスが封印の札を剥せる方法はただ1つ、アレしかない!
「クリス!やれ!早く!でっでないと……ぶひゃひゃひゃ!」
「ええ!?なんで爆笑してるのさ!」
「おっ抑え込むと、くすぐったいんだよ!早く!うひゃひゃひゃ」
「クリス!やっちゃいなさい!私が付いてるわ!」
「もう!リュウジあとで覚えてなよ!?『スティール』!!」
「『スティール』だと!?魔力を高めて防がねば!「残念、俺の幸運値は激低なんだよ!」なっなんだと!?」
クリスのスティールが発動し、クリスの手には封印の札が手にされていた。クリスは手に取った瞬間ダガーで切り裂いた。
初めて自分の幸運値が低くて良かったと思ったな……。
「リュウジ!今だよ!」
「うおおおおおお!外れろゴラァァァ!ちぃ、取れ…ねぇ……!」
「そっそんな!?」
「ねぇ!クリス!撃って良いかしら!?もういいかしら!?」
「けど、リュウジの耐性で威力が……」
くそっ、こうなったら……、一かバチかやるしかねぇな!
リュウジ(バニル)はめぐみんに声を掛けた。
「おい!めぐみん!勝負しようぜ!」
「えぇ!?何を言ってるんですか!?」
「俺のブラックナイトと、めぐみんの爆裂魔法…どっちが強いか勝負しないか?」
「無っ無理ですよ!冬将軍の時より更に強化した爆裂魔法を放つなんて出来ませんよ!何を言ってるんですか!?正気ですか!?」
「そっそうだよリュウジ……何言ってるの?」
めぐみんとクリスが今にも泣きそうな声で問いかけてくる。だが、リュウジとバニルは無視して冒険者達から大きく離れた。
「おい、バニル……全部見通す事が出来るなら、俺の正体に気付いてるんだろ?異世界の魔王からのなさけだ、どちらか選べ、浄化されるか、このまま共に爆裂魔法で吹き飛ぶか……」
「フハハハハ……やはり異世界の魔王だったか、邪悪な魔力は感じられなかったが、過去を見通してみたら貴様は……なかなか骨のある男ではないか?」
「へっ、この世界の魔王よりは強そうだろ?」
「ふふ、どうだろうな……?」
そして、カズマ達から大分離れたリュウジとバニルは手を広げた。
「我輩は悪魔である!敵対者である神に浄化されるなどまっぴらである!」
「さぁ!めぐみん!勝負だ!俺のブラックナイトが勝つか!爆裂魔法が勝つか!」
リュウジはめぐみんに頼み込んだが、めぐみんは頑なに拒んだ。セナもリュウジの事を気掛かりになり出した、カズマはセナに言い放つ。
「もし万が一の事があったら俺が指示したって事にしてくれ、これでも俺もAdventuresの責任者の1人だ、あんたが証人になってくれ、今回はこのサトウカズマが全責任を持つ!」
「ありがとよ……カズマ……」
「めぐみん!」
カズマの号令により、めぐみんも覚悟を決め、詠唱を始めた。
「空蝉に忍び寄る叛逆の摩天楼。我が前に訪れた静寂なる神雷。時は来た!今、眠りから目覚め、我が狂気を以て現界せよ!穿て!エクスプロージョン!」
ズガーーーーーーーーーン!
真紅に染まる魔法陣に包まれたリュウジ(バニル)は直撃した。爆風は辺りまで響き渡り、リュウジ(バニル)が立っていた所には、巨大なクレーターが形成されていた。バニルの仮面は割れ、リュウジのブラックナイトも粉々になり、大火傷のダメージを負った。リュウジは冒険者達に運ばれ、アクアの懸命な回復魔法により火傷の跡も残らず完治した。それから数日後、俺とカズマはセナに呼び出された。
「冒険者フクヤマリュウジ殿、貴殿らを表彰し、この街から感謝状と同時に嫌疑に掛けたことに対し深く謝罪をさせて頂きたい」
セナから感謝状を受け取った俺は、バニルを討伐した事が賞賛され魔王軍と関係がないと証拠と見なされ、容疑の疑いが晴れた。マリューは「紙切れ1枚で許されると思うんじゃないわよ!このメガネ!」と騒いでいたが、そんな事はもうどうでも良かった。クリスには「もう無茶しないで!」と怒られた。
そして……1番嬉しかったのはこの後だった。
「フクヤマリュウジ、並びにAdventures一行、機動要塞デストロイヤー、魔王軍幹部ベルディア、バニルを討伐し、あなた方が居なければ成し遂げられませんでした。よってサトウカズマが背負っている借金、フクヤマリュウジの慰謝料請求を全て完済帳消しにし、差し引いた金2000万エリスを進呈し、ここにその功績を称えます!」
え……慰謝料もう払わなくて良いの?
「リュウジ様!やりましたよ!もう慰謝料払わなくて済みますよ!」
「やったね!リュウジ!流石は相棒だよぉ!」
「やったぁぁぁぁぁぁ!」
うぉー!リュウジ!リュウジ!リュウジ!
ギルド中にリュウジコールが巻き起こった。ブラックナイトが失われたのが痛かったが、俺はようやく勇者らしい事が出来たような気がした。
【魔王軍幹部バニル討伐完了! 】
【慰謝料完済!2000万エリス獲得】
それから数日後
俺は新たな装備を完成させた。金に物を言わせて今度はめぐみんの爆裂魔法に耐えられるようにアダマンタイト、アダマンチウムを使い、赤い布地に銀色に輝く鎧兜の【レッドウォーリア】が完成した。
鏡の前に立ち、マリューとクリスがチェックしていた。
「どう?変かな?」
「いえ、更に強化されてるのでとてもお似合いですよ?」
「んー、あの仮面つけたら更にカッコイイと思うよ?」
「いらねぇよ!あんな悪趣味な仮面!」
ドンドン!フクヤマさーん!郵便でーす
ドアの外から郵便屋さんの声が聞こえて来た。俺は郵便物の手紙を受け取った。手紙には何かの紋章が刻まれていた。
「誰からだろう?」
「ん?あっ!それ王都のベルゼルグ城の紋章だよ!」
「はぁ?王都の人間が何の用だよ……ったく」
俺は手紙を開いた。
リュウジがおかしくなってしまった原因はバニルの魔力を共通してしまい、仮面を被った時だけ魔王の力が少し戻ってしまった為です。
レッドルークの挿絵がありましたが、注意を受けたので消去しました。