クリスと別れ、荷物を持って『テレポート』でアクセルの街に戻って来た俺は家に向かうとマリューが1人で細々と掃除をしていた。俺は急ぎ足でマリューに声を掛けた。
「ただいま〜」
「おや?おかえりなさい、仕事は済んだんですか?」
「済んだんだけど、急遽別の仕事が入った……」
大荷物を持って工房に向かいながらマリューに説明する。
「そうなんですね、あっそう言えばリーン様から言伝を預かってます」
「リーンちゃんから?何かあったのか?」
「たまにはあたしもクエストに誘って欲しいそうです、なんでもダスト様を痛め付ける為に特訓をしたいのだとか?」
リーンちゃん元々強いじゃん、それ以上強くなってどうすんの!?なに?アークウィザードになるつもりなの!?
「一段落したらリーンちゃんの埋め合わせするよ、今は急いでるんだ」
「一体何があったんですか?金獅子と何か関係が?」
俺は王都であった出来事をマリューに説明した。
「なるほど……クリス様は影でそんな事をしていたのですね」
「ああ、奇跡的に俺だってのはバレてない」
「それで少しでもクリス様と知られない為にクリス様に装備を作る為に戻って来たのですね?」
「うん、1人で心細いと思うけどもう少しだけ留守を頼んだぞ?」
「はい、分かりました、無事にクリス様と戻って来て下さいね?」
「ああ」
マリューに見守られながら俺はクリスの新装備を作り始めた。王都で買ったミスリルを含んだ素材を全て使い、完成させた。
「出来た……」
「リュウジ様にこんな才能があったんですねぇ」
「不思議と出来ちゃったよ」
「今から行かれるのですか?」
「いや、朝イチに出るよ」
翌日
クリス用の新装備をバックに入れて、外に出た。マリューに見送られ、俺はレッドウォーリアを着て、金獅子の鎧を持って再び『テレポート』で王都に向かった。
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王都に着き、拠点となる宿に向かう途中ミツルギ、カズマ、アクアに出会した。
なんというバットタイミング……
ミツルギは俺とカズマ達に声を掛けて来た。
「リュウジ、それにアクア様じゃありませんか!」
「おっおう、ミツルギじゃないか」
「えーっと……誰?」
往来のど真ん中でアクアはきょとーんと首を傾げる。
アクアは思いっ切り忘れた様だな、もうこのやり取り飽きたからスルーしよう……。
ミツルギはそれをものともしない様子で笑い飛ばしていた。
「アッハハ!相変わらず冗談がお好きですね!毎朝城で会ってるじゃないですか!」
「カズマさん、リュウジさん、誰この人?かなり馴れ馴れしいんですけど……」
「アクア様、ボクですよ!?ソードマスターでゆんゆんのパートナーの……ゆんゆんといたじゃありませんか!?」
「あっ、あー!はいはい!そう言えばゆんゆんと一緒にいたわね!」
ようやく思い出したのか、アクアは手をポンと叩く。
ってかコイツら城で何してたの!?
「思い出してもらたらまぁいいですよ、そんな事よりも、3人に話しがあるんだ」
「えっ俺も?」
俺は自分に指をさした。ミツルギは当然のように答える。
「当たり前だろ!代表が丁度3人いるし、アクア様もいる事だからな」
「はぁ……」
俺達3人は近くの喫茶店に入り、4人で腰掛けた。注文を終えたミツルギが真剣な眼差しで前屈みになった。
「本題に入る前に、アクア様に渡したい物があるんです」
ミツルギはリボンで梱包された小さい箱を取り出した。俺は顔を引きつらせながミツルギに注意した。
「お前……ゆんゆんが居るのにアクアにプレゼントだなんて…いつかゆんゆんに刺されるぞ?」
「ちっ違うんだ!アクア様はあくまでも女神、お供え物と思ってもらえれば良いんだが……」
お供え物って、お前そのうちアクシズ教のカモにされるぞ?
ミツルギはそのままナプキンで折り紙をしているアクアに差し出した。
「アクア様、見る度あなたはアクセサリーを身に着けておりませんよね?もし、良ければ…これを」
俺はメニュー表を壁にしてカズマにヒソヒソ話し出す
「カズマカズマ、やべぇぞ浮気だ浮気!」
「コイツ、もげればいいのに」
「今度ゆんゆんにチクッとくわ」
「2人共、聞こえてるぞ!?ボクはそんなんじゃない!それにゆんゆんは今クエストでレベルをあげている所だ!」
夢中になって折り紙をしているアクアはようやく気付いた。
「へ?なに?くれるの?」
「ええ、安物ですが、アクア様のお気に召すかどうか……」
爽やかスマイルを見せるミツルギ、ゆんゆんはこのスマイルにやられたのだろうか?実に絵に書いたようなイケメンである。アクアは箱を開けると高そうな指輪だった。アクアは指にはめようとした。
「あの〜サイズ小さくて入らないんですけど?」
「「ブッ!!」」
俺とカズマは思わず吹き出し、プルプルと笑いを堪えた。それを見たミツルギは苦笑いしながら説明する。アクアは指輪をテーブルに置いてナプキンを被せる
「それはサイズ調整の魔法がかかってまして──」
「ジャジャーン!」
アホのような声を出してナプキンを退けると、指輪が綺麗に消えていた。俺とカズマは純粋に高度な手品を間近で目の当たりにし、驚いていた。
「うおっ、すげー!」
「すげぇけど……どこに隠したんだ?」
「は?消しちゃったんだからどこに消したかなんて聞かれても困るわよ」
「えっ……」
ミツルギは寂しそうな声を漏らし、俺とカズマの笑いのツボが刺激され爆発してしまった。
「「ぶははははははははははは!!」」
アクアは爆笑してる俺達を無視して鼻歌を歌いながら再び折り紙を始めた。それを見たミツルギはポロリと涙を流し、話し出した。
「そ、それじゃ、本題に入ろうか?これはボクとゆんゆんが城を出た後に調べた事なんだが……」
ミツルギの話を簡潔に纏めると、俺が倒したベルディアやバニルが派遣されて来た理由は、アクセルの街に光が舞い降りたと言う事、魔王軍には預言者の役割をしている奴が言い出したのがきっかけだったらしい。
半信半疑で探りを入れる為に派遣したのが魔王だという。そのベルディア、バニルが殉職(辞表)となった。その件に関して、魔王軍の間では数人の冒険者達が絡んでいるのではないかという噂が出ているらしい。一部では、とんでもない助っ人を雇っているのでは?というのも出ている。
数人の冒険者達って……俺達Adventuresの事だよな?助っ人って……俺の事だよな……?
カズマは俺とアクアを交互に見つめる
「大きな光と助っ人って……」
「俺とコイツしかいねぇだろ?」
気まずそうに座る俺とせっせと折り紙をしているアクア。ミツルギも俺とアクアに視線を交互に向ける。
「ボクは……アクア様の事を言っているのだと思っている、最初は、魔王が警戒する大きな光ってボクか、リュウジの事かと思ったんだけど、そんな目で見るな!見ないでくれ!」
痛い人を見る様な目でカズマは見つめる。
いや、半分は合ってるよ?助っ人って俺だし?
しかめるミツルギにアクアが折り紙を渡して来た。
「出来たわよ!はい、魔剣の人、指輪のお礼にこれあげるわ。作品タイトルは変形合体エリス神。胸部装甲脱着式で3段階に変形が可能なの」
コイツ人の相棒をイジり倒して何作ってんだよ
ミツルギは笑いながら受け取る。
「アハハッ!ありがとうございます、アクア様、大切に──」
「ちょっと見せてくんね?」
「くそ女神、エリス様を馬鹿にするのも──」
ミツルギ、俺、カズマは同時に何気なくそれを見た。
「「「何これ凄っ!?」」」
エリスの面影がうっすらあるナプキン折り紙は見た目は最早アート、展覧会を開いたら金が取れるレベルだった。
やだ、何これカッコイイ……欲しいなぁ
「アクア、俺にも作ってくれよ」
「俺も欲しいんだけど、部屋に飾るわ!」
「嫌よ、私は同じ物は作らないのよ。高機動型冬将軍と、ハルクバスターならぬ、エリス型ハルクバスターなら作ってあげても良いわよ?」
「じゃ冬将軍で」
「俺はエリス型ハルクバスターでお願いします」
俺達の頼みを聞いて職人の様な顔をしながら黙々と折り紙を始めた。それを見届けてミツルギが立ち上がった。
「佐藤和真、いや、カズマ、ボクがもっと強くなるまでアクア様を守ってくれ、アクア様、リュウジ、ボクはお先に失礼するよ?ゆんゆんを迎えに行かなくては」
「おう、ゆんゆんによろしくな?」
「俺今さらっと呼び捨てされたんだけど……」
カズマの事を少しずつではあるが力量を認め始めたミツルギに、アクアが「ん?」という感じで顔を上げる。
「ん?あっはいはい、またね?……。ねぇカズマ、リュウジ、変形機能と脱着機能は必須よね?」
「変形機能はいるに決まってるだろ!常識的に考えて!」
「パワードスーツは脱着機能があってこそなんだぞ!入れてくれ!」
俺の事はともかく、カズマとミツルギのやり取りを見ていた後。
「カズマはアクア様と本当に気が合うんだね、リュウジとクリスちゃんもだけどね、ボクも負けていられないな!」
そんな事を言い残し、ミツルギはゆんゆんを迎えに行った。
俺もそろそろ出るか、今夜から恐らくクリスがカズマを説得しに行くだろうし、その間にこの王都で金獅子の名前を売っておくか……。
「んじゃ、俺もそろそろ行くわ、んじゃな?カズマ、アクア?」
「おう、またなリュウジ」
「あっもう行くのね?、ほらリュウジ、エリス型ハルクバスターよ」
アクアは俺にほんのりエリスの要素を取り入れているハルクバスターの折り紙を渡して来た。
「何これ凄っ!マジで宝物にするわ、それとカズマ?、お前もいい加減ミツルギの事認めてやれよ?ミツルギもお前の事認め始めてんだからさ?同じAdventuresなんだから」
軽く仲良くしろとカズマに言い聞かせるがカズマは顔を引き攣らせる。
「えー、マジで?」
「お前に出来て、ミツルギに出来ない事があるだろ?、俺にだってカズマとミツルギには勝てない部分があるしな、みんなで長所を活かして戦おうぜ?」
「そう言われると断りずらいな……努力するよ」
空返事を聞きながら俺は喫茶店から出て、宿に向かった。そして、夜になり、俺はネメシスから貰った神器の指輪と金獅子を装備して、窓の前に立った。
「俺には……カズマの様なずば抜けた幸運値や、機転の利く戦略は持ってないし、ミツルギの様なチート武器も持ってない、だけど俺には…憧れた
そう自分に言い聞かせて居ると、夜の王都にサイレンが鳴り響いた。
『魔王軍襲撃警報!、魔王軍襲撃警報!現在、魔王軍と見られる集団が王都近辺の平原に展開中!騎士団は出撃要請、今回は魔王軍の軍勢が多い為、王都内の冒険者の方々も参戦を要請します!……』
魔王軍が攻めてきたか……、なら、行くか!
俺は『セイクリッド・ヴァーサタイル・エンターテイナー』を唱え、颯爽と夜の王都を翔け抜けた。王城の正門前にある街頭に着陸し、冒険者達が集まるのを待っていた。その中にはカズマ達やミツルギ達も混ざっていた。
そして、ギルド関係者の人が集まった冒険者達に説明を始めた。
「冒険者の方は、こちらに集まって下さい!皆さんへの特別な指示はありません!皆さんは集団による軍事訓練を受けてる訳ではありませんので、騎士団とは別行動、自由に戦って頂いて構いません!戦闘に参加する前に冒険者カードをチェック致します!。戦闘後に記載されているモンスター討伐数により、特別報酬が出ますのでご武運をお祈り申し上げます!」
冒険者達はカードを提示してギルド職員に確認をしてもらい、騎士団と冒険者達を眺めながら号令を待った。そして、武装した女性が号令を下した。
「魔王軍討伐連合隊、出陣!」
「「「「「「うおおおおおおお!」」」」」」
騎士団と冒険者達はコボルト軍団に突っ込んで行った。
俺も支援魔法を唱え、屋根を駆け回り、魔王軍が進軍している場所に辿り着いた。
こっちの方にはまだ冒険者は数人程度しか居ないようだ、コッチに参戦するか。
俺はそのまま屋根から飛び降りる時にコボルトを踏み台にして、着地し、踏み台にしたコボルトを倒した。急に現れた為に冒険者達は驚いていた。
「うおっ!?なっなんだ!?」
「故あって、助太刀致す!」
「すっすまねぇ、助かる!」
「あっあんた、名前は!?」
斧を持った冒険者は俺に名前を尋ねて来た。俺は少し振り向き、金色の瞳を輝かせながら名乗った。
「我の名は……金獅子」
俺は名乗り上げたと同時に一体のコボルトの顔面を殴り、コボルトを倒した。冒険者達も便乗し、勢いにあてられ流れをコボルト軍団を押し始めた。