クリスをアクセルの街に転送させ、俺は謎の刺客を睨みつけながら尋ねた。
「貴様…なぜ銀髪を狙うのだ?」
「奪われた物を取り戻し、銀髪の始末が俺の仕事…」
神器の強奪とクリスを殺しに来た?コイツ…どこの回し者だ?
「残念だったな、アレはもう手の届かない所に───」
俺が話してる途中にも関わらず、シックなスーツを着てる男はダガーを突き付けて来た。俺はギリギリの所で男の腕を左手で掴み、止めた。
「最後まで話を聞けって母ちゃんから言われなかったか?」
「貴様の相手をしてる暇はない」
「そうはいかねぇな、アイツは俺の相棒なんで─ねっ!」
そう言い放ち、俺は右足で回し蹴りを繰り出したが、男はスッとかわし、俺から離れた。
コイツ、強ぇ…かなり鍛えられているな。
「仕事の邪魔をするな金獅子」
「そうは行かねぇよ、ここでお前を放って逃げたら他の人に犠牲が出そうだからな、ここで倒させてもらう!それにお前、何者だ?」
男はダガーを構えながらゆらゆらと揺れ始め、様子を伺いながら答えた。
「俺はウィック、魔王軍幹部候補の1人でまたの名を、ブギーマン」
「魔王軍幹部だと!?」
俺は前にウィズから教えてもらった魔王軍幹部、幹部候補のその中にコイツの名前が入っていた事を思い出し、警戒を強めた。
まさかここで魔王軍幹部候補の1人に会うとは思ってもいなかった、さすがの俺でも今の状況で魔王軍幹部候補と1人で戦うのは骨が折れるな……。だけど、ここで逃げる訳には行かない!
「なら余計お前を行かせるわけには行かないな」
「ならお前を殺してから向かえば良いだけだ」
ブギーマンはダガーで俺の首、手首や目を狙って切りつけて来た。右肩を痛めている俺は攻撃をかわすので精一杯だった。
「くっ!!」
「避けてばかりでは面白くないぞ?」
「うるせぇ!うぉらぁぁ!」
金獅子はブギーマンのダガーをかわし、ブギーマンの腕を掴み背負い投げを繰り出そうとしたが、ブギーマンを投げる寸前で右肩の激痛により途中で止まってしまった。
「ぐっ!?こんな時に!?──」
「ふんっ、噂に名高い金獅子も大した事ないな、背負い投げはこうするんだ!」
「しまった!!」
ブギーマンは体勢をくるっと変えて上手く着地し、逆に金獅子が背負い投げを繰り出され、公園の外まで投げ飛ばされ、公園近くの竜車の荷車に激突した。竜車の竜は衝撃で驚き、荷車を引いたまま走り出してしまった。ブギーマンは直ぐに追い付いて来て、走り出した荷車に乗り込んで来た。金獅子は瓦礫から這い出てブギーマンを睨み付ける。
「いってぇな…、ここまで投げ飛ばしやがって……」
「ふっ、死に損ないめ」
「死に損ないじゃねぇ、俺は既に何度も死んどるわ!」
右足の足甲でダガーの攻撃を防ぎ、左ストレートを繰り出し、ブギーマンの顔面をとらえた。ブギーマンは顔を横に振って何事も無かった様に再び向かって来る。
コイツどんな体してんだよ、まともに顎を捉えたのに……?
「丈夫なんだな」
「それはお互い様だ」
荷車は月に照らされる街をを突き進み、遂には王都から出てしまっていた。砂利道の為荷車はガタガタと揺れ、バランスの取りづらい環境の中金獅子はブギーマンと戦い始めた。ブギーマンはダガーを逆手に持ち替え、殴れる様に戦闘スタイルを変化させた。俺はと言うと、右肩から右手までをダランと垂らし、左手のみでファイティングポーズをとり、オーソドックススタイルで右肩を庇った。
「はぁ、はぁ……」
「随分”呼吸”が荒いな、腕利きの冒険者かと思えば、”呼吸法”も知らないのか?」
呼吸法?一体何の事だ?くそっ、肩の骨にヒビが入りやがった……ビリビリ痺れてきやがる。
俺は肩の激痛が原因で額から脂汗が滲み出て来て、呼吸も荒くなり、顔を歪ませた。ブギーマンは体勢を低くさせ、再び突っ込んで来た、俺は迎撃する為に左膝蹴りでブギーマンの顔面を捉え、止めた。だが、ブギーマンはものともせずに俺の左足の太ももにダガーを刺してきた。ブギーマンはダガーを抜きとると、薄暗い中ダガーは赤くキラリと光っていた。
「ぐっ……このクソがっ……!」
「さぁ、次は何処を狙おうか」
俺は刺された太ももの傷口を左手で抑え、そのまま右手をバチバチなせながら突き出し魔法を唱えた。
「『カースド・ライトニング』!!」
バチィ!!と紫色に光輝く稲妻をブギーマンに狙いを定めたが、ブギーマンはいとも簡単に避け、俺のカースド・ライトニングは外に飛び出し地面に着弾した。
「当たらないぞ?」
「『カースド・ライトニング』『カースド・ライトニング』!!」
「遅い」
ブギーマンは連発で放ったカースド・ライトニングをジャンプしてかわし、俺の右肩にダガーを突き刺した。ダガーの刃先は鎧を貫き、骨に当たり俺の肩にものすごい激痛が走り出した。
「ぐうっ!?このガキィ……」
「いい面になったな、その悪感情はいい物だな」
「てめぇ、バニル見てぇな事言いやがって……」
「ほぅ、バニルを知っているのか?」
カラス殺しのバニルさんだろ?忘れたくても忘れられねぇ奴だからな…。
「悪感情を好むって事は……てめぇ、悪魔だな?」
「ご名答、俺も悪魔だ」
マフラーを破き、刺された所を止血した俺は、ブギーマンの言葉に俺は遂に模造刀に手をかけ、背中の模造刀を抜いた。もうなりふり構っていられない状況になった。
「さぁ、第2ラウンドだ!『パワード』『スピードゲイン』」
「そうこなくてはなっ!─」
俺は模造刀を逆手に持ち、ガキン!と激しい音を立てながらダガーと鍔迫り合いになった。
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クリス視点
一方、その頃クリスはアクセルの街に転送された直後、襲撃された事を伝えるべく、リュウジを探していた。クリスは家のドアを慌てて開けると、マリューがエプロン姿でお茶漬けを食べていた。
「ぶふっ、クリス様!?お戻りになられたのですか!?」
「はぁはぁ、リュウジは!?リュウジは何処!?」
「リュウジ様ですか?戻ってはいませんが…?、一緒に──」
クリスはそのままマリューの言葉を聞かず、リュウジの部屋に行くと、部屋にはリュウジは居らず、不思議な事に王都で着ていた筈のレッドウォーリアが置かれていた。クリスは立ち尽くし、唖然としていた。
「なんで?なんで鎧がここにあるの!?」
「クリス様?一体何があったのですか!?」
クリスは振り向きざまにマリューを掴み睨み付け、叫び出した。
「教えて!リュウジとマリューさんはあたしに何を隠してるの!?」
「クリス様、落ち着いて下さい!一体何の事ですか!?」
「金獅子くんとリュウジは一体どんな関係があるの!?どうしてあたしに隠してるの!?」
怒り任せに荒れ始めたクリスの顔を見てマリューは大体の状況が予測した。
(この焦る様子だと、もしかしてリュウジ様が何者かに襲われたか、何かの途中でリュウジ様の行方が分からなくなったからここへ来たのでしょうね……全く、リュウジ様も困った方ですねぇ……)
マリューはため息を吐き、クリスを誤魔化し始めた。リュウジはマリューにとっては大事な主、主を裏切る事は出来ないからである。
「どこ!?リュウジは何処にいったの!?」
「わたしにも分かりませんよ、それ以上わたしはお答え出来ません」
「金獅子くんが襲われたの!リュウジを呼びに行かないと金獅子くんが─」
「クリス様、まずは落ち着いて下さい。金獅子様はクリス様を庇ってその者と戦ってるのですね?」
「ごめんなさい…ついカッとなってしまって…はい、そうです」
「なるほど、ですが、リュウジ様の行方は分かりません、わたしもクリス様とリュウジ様はご一緒かと思ってたので」
「そうでしたか…」
クリスは落ち着きを取り戻し、着替え始めた。エリスに戻り、天界からリュウジを探す様だ。
「あたしはこれから天界に戻って上からリュウジを探します、マリューさんは地上から探して見て下さい」
「かしこまりました、エリス様もお気を付けて」
「はい、必ずリュウジさんを探し見つけ出します!」
クリスは法衣に着替え、エリスに戻り、指パッチンをして天界に向かった。それを見送ったマリューはどっと疲れた様に座り込んだ。
「はぁ……疲れたぁ、リュウジ様、無事だと良いのだけど…困った主様だなぁ、クリス様に嘘ついちゃったじゃないですか……」
マリューは心配そうに窓から夜空を見上げた。
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場所は戻り、金獅子ことリュウジは荷車の荷台でブギーマンと激しい攻防戦を繰り広げていた。
「はぁ……はぁ……」
「なんだ貴様、剣が使えたのか?」
「うるせぇ、諸事情があんだよっ!」
金獅子とブギーマンは再び鍔迫り合いになり、火花を散らした。すると、竜車は大きな橋を渡り始めた。橋の段差でガタガタ揺れた瞬間、2人はバランスを崩した。金獅子はその隙を突き、ブギーマンを突き飛ばし、共に荷車から転げ落ちた。
「ぐはっ…、いってぇ…ここは……?」
俺は辺りをキョロキョロと見渡した、見た所巨大な滝が見えた。この川を越えるための大きな橋の様だ。ブギーマンはすぐさま立ち上がり、俺に声を掛けてきた。
「ここは王都とエルロードを繋ぐ橋、”マグニフィセント・ビッグブリッジ”だ、この橋から落ちたらまず助からない」
「ビッグブリッジねぇ……」
俺は足を引き摺りながら橋の下を覗いて見ると、滝の水が暗闇に消えていくのが見えた。
「確かに、落ちたら溜まったもんじゃねぇな」
「王都から大分離れてしまった、貴様を殺し、1度”エルロードのホテル”に戻るとしよう」
「へっ、誰が生きて帰すか……」
俺は鼻で笑い、足をガクガクさせながらも模造刀をブギーマンに向けた。ブギーマンも余裕の顔をしながら答える。
「随分フラフラじゃないか?まるで子鹿の様だぞ?」
「うるせぇ……」
「貴様をここで殺し、銀髪の小僧も切り裂いてやる」
ドクン……
「今なんて言った……?」
「銀髪の小僧を必ず見つけ出し、
ドクン……ドクン……不気味に金獅子の心臓の鼓動が響き渡る。
クリスを殺す?コイツが?、クリスを殺すだって?またか、コイツも俺の大事なものを奪うのか?どいつもこいつも俺から奪っていく、魔王の時も、勇者の時も、どっちになっても奪われるならもう沢山だ……。それにしても、バニルの時から気分が昂りやすくなってる、どうなってんだ?
「死ね、金獅子」
ブギーマンはトドメに数本のダガーを金獅子に投げ付けた。月の光で数本のダガーは輝きながら金獅子の顔に向かって飛んでいく。その最中、金獅子は俯きながら呟いた。
「『魔眼』、『カースド・ダークネス』」
金獅子は魔眼を発動させ、全てのダガーを紙一重でかわした。ブギーマンは何故瀕死の状態で全てのダガーを避けれたのか理解出来ず、ブギーマンは首を傾げていた。
「貴様……何故かわせた!?」
「………………」
「まぐれだ、そうに違いない!」
俺は無言のままブギーマンを見つめた。ブギーマンはダガーを構え、金獅子を切り裂こうと切り付けたが、金獅子はブギーマンの攻撃を全てかわした。
「何っ!?まさか…『魔眼』かっ!?」
「だからどうした?」
金獅子は先程まで足を引き摺りながら立っていたが、何事も無かったかのように立ち上がった。ブギーマンの顔をは驚きを隠せなかった。
「魔眼のスキルはベルディアが持っていた……ベルディアを倒したのは鋼のリュウジだったはず!?、まさか貴様、鋼の──」
ドスッ!
金獅子はブギーマンの腹に一撃を入れた。ブギーマンは唾液を吐き出し、動きを止めた。
「ぐはぁぇ!」
「調子に乗るんじゃねぇぞ、”下級悪魔”風情が……」
「ゲホッ、ゲホッ…さっきから気になってた、貴様から血生臭い臭いがする、貴様は”こちら側”の人間なんだな……」
「そんな事は知ってる、よくも相棒を狙ったな、膝を付いて詫びろ」
「貴様は……、一体何者──」
「跪け」
グシャッ!
俺はブギーマンの片足の関節を蹴り、ブギーマンの足をへし折った。俺はそのままブギーマンの頭を掴み顔を何度も何度も殴り始めた。怒りに任せ、ブギーマンの顔を殴り続けた。
「ぶふぁ!!」
「バニルから聞いてるぜ?この世界の悪魔には”残機”ってのがあるんだろう?何回殺せば死ぬか知らないから試して良いか?残機ってのは不便だなぁ、同情するよ」
「貴様は……貴様は……何……者だ……?」
金獅子に月の光が照らされると、金獅子の目は左目は魔眼を発動し、爬虫類の様な瞳になっており、右目は血が入って白目が赤くなっていた。金獅子はブギーマンの質問に答えた。
「俺は異世界の魔王、七つの大罪”八つ目”の大罪人…フクヤマリュウジだ、またの名を──」
リュウジはブギーマンの耳元で何かを呟いた。それを聞いた途端ブギーマンは怯え始めた。
「まっ……まさか、そんな……!?」
「これでてめぇは俺の”正体”を知っちまったな、『カースド・ダークネス』今日の事の記憶を抹消する呪いを掛けさせてもらうぞ」
「なっ……貴様、何故姿を隠してまでこんな事を……」
「何故かって?、ようやく手に入れた大切なものを護る為だよ……だが、お前はそれをまた奪おうとした、生かしては置けない……」
シュルりと頭に被っていたものを脱いで、ブギーマンに金獅子は正体を見せ、ブギーマンに呪いを掛けようとした。だがその時、ブギーマンはリュウジの顔面をを蹴り、橋の欄干まで追い詰められ、ブギーマンは自分のネクタイでリュウジの首を締めようと首に手をかけた。
「これで……終わりだっ!」
「ああ……終わりだよ、”てめぇも”な!!」
俺は橋の欄干をジャンプして越え、橋からブギーマンと共に落下した。
「貴様正気か!?」
「あ?どうだろうな?イカれてるんじゃないか?」
「くそおおおお!」
「うおおおおお!!『カースド・ダーク──』」
バシャーーーーン!
ブギーマンとリュウジは暗闇の川に落ち、激流に流されて行った。激流に流された2人は離れ離れになって流れて行った。