ーマリュー視点ー
リュウジがブギーマンと戦ったその翌日、マリューはギルドに向かってリュウジの行方を探していた。
「リュウジさんはしばらくギルドには顔を出していません、恐らくですが、何かのトラブルに巻き込まれた可能性がありますね」
「やはりそうですか……」
「あの、マリューさん、リュウジさんは最後に何処へ向かわれたかご存知ですか?」
「確か……王都に向かい、アルダープ様の依頼を受けたと……」
「そうですか、大変申し上げ難いのですが、今王都で盗賊団が現れ、その盗賊団の討伐で忙しいようで捜索隊を編成する余裕がないんですよ……」
盗賊団という言葉を聞いてマリューはひくついた。
「そっそうでしたか、いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫です、リュウジ様はわたしが何とかします」
「お力をお貸し出来なくて申し訳ございません……私もリュウジさんの安否が心配なので……」
「はい、他に誰かリュウジ様を見ていないか聞いて回って見ます、ルナ様も王都から戻って来た冒険者様方がいたら聞いてみて貰えますか?」
「はい、勿論です!王都のギルドにも問い合わせて見ますね!」
「よろしくお願いいたします」
マリューはペコりと頭を下げてギルドを後にした。
さて、まだ行方不明とは判断しかねるけど、胸騒ぎがするわね……、ここは王都にいたカズマ様達やミツルギ様方にも聞いて見ましょうかね。
マリューはその足でカズマの屋敷へ向かって行った。
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ーエリス視点ー
一方、天界でもリュウジが行方が分からなくなったと聞かされて、天界の部署でも大騒ぎになっていた。創造神、エリス、他の天使を総動員させ、行方を追っていた。
「フクヤマリュウジ君の行方はまだ分からないのか!?」
創造神はモニターを捜査している天使の女の子に向かって尋ねた。
「はい、フクヤマさんのモニターを写してみたのですが、何故か”モニターに映らない”のです」
「なんだと!?何故だ!?エリス、何か心当たりはないのか?」
「はい、本人からは”監視”は止めてほしいと言われていましたが、フクヤマリュウジさんのモニターは極力見ない様にはしていましたけど……」
創造神は椅子に座りながら様々なモニターを確認してリュウジの行動を探っていた。王都のモニターを捜査していると警官達が公園で何やら捜査をしていたのが確認された。
「ん?ここのモニターをアップにしてくれ」
「はい、どうぞ!」
天使の女の子はパソコンの様なキーボードをカタカタとうち、モニターをアップにした。
「エリス、この公園で何かあったのか?」
「ええっと…金獅子さんと合流する予定でした。公園の近くに竜車の荷車があったはずですね」
「ふむ、となるとここの竜車に何かあったようだな、もしかしたらこの竜車で逃走した可能性もある、車輪の形跡を見てみてくれ」
「はい、創造神様」
天使は再びカタカタとキーボードの様なものを打つと、竜車の車輪の形跡が光の線の様に映し出された。その形跡を辿っていくと、ブギーマンとリュウジが戦ったビックブリッジに繋がっていた。ビックブリッジに差し掛かると辺りに血痕の様な物が発見された。
「こっこれは!?」
「まっまさか、金獅子さんはここで戦ったのでは!?」
「ネメシスは何処に行った!?」
創造神が部署を辺りを見渡すと、気まずそうにダラダラと汗を垂らしながら顔を逸らしていた。創造神は手招きしてネメシスを呼び寄せた。
「ネメシス?ちょっとこっちに来なさい」
「はっ、はい……」
「君、何か知ってるね?」
「い、いや〜?私は何も知りませんよぉ?」
ネメシスはオドオド目を泳がせながら動揺していた。すかさずエリスがネメシスの体を揺さぶって尋ねた。
「ネメシス!?あなた何か知ってるよね!?」
「知らないよぉぉ!リュウジさんに”神器”貸しただなんて…あっ!」
ネメシスはしまったと言わんばかりに両手で口を隠した。
「神器を貸した!?あなた何してるのよ!何を貸したの!?」
「ネメシス!答えなさい!万が一の場合、我々にも問題があるのだぞ!?」
創造神は怒鳴り散らしながらネメシスに尋問を始めた。観念したのか、ネメシスは口を開いた。
「じっ実は……」
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「なんだって!?ジャミング機能の指輪を貸した!?この馬鹿者!」
「うぇぇぇぇんごめんなさぁぁぁい!」
普段はしっかり仕事をこなす公安職のネメシスは頭にたんこぶを作りながら泣き喚き始め、エリスは頭を抱え込んで騒ぎ出した。
「なんて事してくれたのよ!これじゃ行方が分からないじゃない!」
「だって、アレは前の異世界でもリュウジさん使ってたし、こうなると思わなかったんだもん!」
「はぁ…やれやれ、今度その神器は返して貰うとして、それで天使よ、この川は何処に繋がってるのだ?」
ハゲた頭に手を当てながら天使に尋ね始めた。天使は「コイツら大丈夫か?」みたいな顔をしながらモニターを操作し始めた。
「この先にあるのは……数十キロ離れた場所に”エルフの森”がありますが、もしこの川に転落してるとなると……かなり厳しいのでは?」
天使の言葉にエリスは顔を横に振って否定した。
「いえ、もし亡くなっていたら私の所に来るはずなのでまだ生きているという事になります、彼は”悪運”だけは強いので、私がまた地上に降りて直接この近辺を探して見ます」
「うむ、頼んだぞエリス」
創造神が頷き、エリスは地上に降りる準備をしようとしたその時、王都のモニターがブザーを鳴らし始め、機械音声が流れ始めた。
ブー!ブー!
《死亡者が発生しました、担当女神は至急蘇生、または転生の準備をお願いいたします……繰り返します、死亡者が───》
「えぇ!?こんな時に!?あーもうっ!」
「致し方ない、地上にいる人達に頼むしか無さそうだな……」
「頼りになるのはマリューさん辺りかなぁ……」
エリスは心配そうにアクセルの街のモニターを眺めた。
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ーマリュー視点ー
天界で大騒ぎしている最中、マリューはカズマの屋敷に辿り着き、屋敷の扉をノックした。
コンコン
「カズマ様?カズマ様〜?おられますか〜?」
マリューが玄関で待っていると、外で日向ぼっこをしていたのか、ちょむすけがマリューに近付いて来た。マリューは四足歩行でちょむすけに尋ねた。
「にゃ〜!」
「あら?ちょむすけ様、ご主人様のめぐみん様か、カズマ様は居られますか?」
「にゃ〜?」
ちょむすけはそのままマリューの背中に乗り、玄関を引っ掻き始めた。どうやらカズマ達は中に居るようだ。
「中におられるのですね?お邪魔します……」
わたしはそのままリビングに向かい、ドアを開けるとそこにはダクネス様とカズマ様が揉めているようだった。
「カズマ!賞金首モンスターを狩ろう!」
このお方は初っ端からカズマ様に何を言い出すのでしょうか……。Adventuresのメンバーが行方不明だと言うのに……。
「お邪魔します、カズマ様」
「お?マリューじゃないか、ちょっと待ってな?ウチのララティーナお嬢様が朝帰りしたかと思えばとち狂った事を言い出してさ?」
「バカモノ!朝帰りではない!夜中遅くに帰ってはお前達に迷惑が掛かるから昨日は実家に帰ったのだ!」
「あのですね、カズマ様、ダクネス様、賞金首モンスターの話しは後にして、話しを聞いて貰えますか?」
「マリュー、どうしたと言うのだ?」
「それは─」
マリューはリュウジが行方不明だと言う事を伝えた。
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「えぇ!?リュウジが帰って来ない!?」
「はい、どこか行方をご存知ないですか?」
カズマは首を横に降り、ダクネスは考え込みながら話した。
「珍しい事もあるのだな、偶然王都で金獅子がいなくなったと噂になっているぞ?もしかしたらリュウジは金獅子を探しに行ったのではないか?」
いい加減気付いても良いでしょうに、リュウジ様が金獅子なのですが?
「それなら良いのですが……」
「大丈夫だって、リュウジは俺と違ってヤワじゃねぇから」
「お前という奴は!少しは心配したらどうだ!?」
「大丈夫だって!俺はリュウジを信じてるから……なっ!」
カズマはキリッとした顔をさせてドヤ顔をしている。マリューは相談した相手を間違えたと考え、話題を変えた。
「そういえば先程賞金首モンスターを狩ると仰ってましたが?」
「実はなマリュー、カズマ、コイツを倒そうと思ってな?」
ダクネスはわたしとカズマ様に1枚の手配書を突き付けて来た。
「賞金首モンスター『クーロンズヒュドラ』…無謀過ぎますよ!?」
「なんだこのヤマタノオロチ見たいな化け物は?」
ヤマタノオロチ、魔界でも凶暴な竜とされているドラゴン…若い頃を思い出しますねぇ……
ダクネスはクーロンズヒュドラの事を話し出した。
「こいつはアクセル近くの山に住み、普段は眠りに付いている大物賞金首モンスターなのだ。眠りについた巨大なヒュドラが再び魔力を蓄積させるのには10年かかる程、そして、前回眠りについてから今から約10年になる」
「つまり、そろそろそいつが目覚めるって事か?」
「厄介な奴が現れましたね……」
ヤマタノオロチめ、めんどくさい時に目覚めるなんてイカれてるわね、ドラゴンの時なら一捻りだと言うのに……。
マリューはアクアとめぐみんが居ないことに気付き、辺りをキョロキョロし始めた。
「そう言えば、アクア様やめぐみん様がお見えになりませんが?」
「言われて見れば…めぐみんならこの話に乗り気になるのではと思ったのだが?」
「めぐみんならアクアと一緒に産まれてくるドラゴン用の首輪を買いに行ったぞ?」
マリューは聞き捨てならぬ事を聞き返した。
「ドラゴン……?今ドラゴンと言いましたか!?」
「マリューとリュウジは知らないと思うが、アクアが最近ドラゴンの卵と言われている卵を全財産はたいて買ったのだが、その卵がどこからどう見てもニワトリの卵でな?私も産まれたら小屋作りを頼まれたのだ」
ダクネスは複雑な表情を浮かべながらマリューに教え、マリューはアクアが騙されてると直ぐに理解出来た。
えぇ!?あの女神何考えてるのかしら……、本来ドラゴンの卵は人間には手に入れられるハズがないのだけど、明らかに騙されてるんじゃないかしら……。
「俺もニワトリの卵だと思う、リュウジがいたらリュウジにも見てもらうんだけどな……。とにかく、俺はそんなヤマタノオロチなんか狩りに行かないからな!?行くならめぐみん達と3人で行け!」
「なぁ……どうしてもダメか?」
ダクネスはカズマの前にしゃがみ込んで、上目遣いで見つめていた。
女の武器をフルに使いますね、ダクネス様は……、さてカズマ様はどう動きますかね?
「くっ、泣き落としとは……しょうがなねぇなぁぁぁぁ!」
カズマは覚悟を決めたのか、立ち上がった。マリューは顔を引き攣らせて玄関に向かう。
あっ、行くんだ……。カズマ様ってちょろいんですねぇ…、カズマ様達はクーロンズヒュドラを討伐しに行く様なので、ミツルギ様を当たるとしようかしら……。
マリューはそのままギルドに戻り、ミツルギを探しに向かって行った。
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ギルドに辿り着き、ミツルギとゆんゆんを探していると、ミツルギとゆんゆん、メリッサがいて、ミツルギは難しそうにルナさんと話しをしていた。マリューはミツルギとゆんゆん、メリッサに声を掛けた。
「ミツルギ様、ゆんゆん様?それにメリッサ様、どうなさったのですか?」
「マリューさんじゃないですか、リュウジが帰って来ていないと聞いていたんですよ、何かあったんですかね?」
「またどこかでトラブルに会ってないと良いんですけど……」
「もふもふマリューちゃんじゃない!まぁ、鋼のリュウジがくたばるとは思わないけど?」
「マリューさん、紹介するよボクの新しいパーティーメンバーのメリッサさんだ」
ミツルギはメリッサをマリューの前に連れて行き、新たなメンバーを紹介した。メリッサは興奮しながらマリューに挨拶をした。
「よろしくね!マリューちゃん!」
「あっそうなのですね、よろしくお願いいたします、ですが今はリュウジ様の安否が最優先なので……すいません……」
顔を濁したマリューを見てミツルギとゆんゆんは心配そうにしていた。
「よし、なら今からリュウジを探しに行こう!」
「リュウジさんが心配ですもんね!」
「鋼のリュウジにまだ借りを返してないから協力するわ?」
「ミツルギ様……」
ホッと胸を撫でおろそうとした瞬間、職員に呼び出され、血相を変えながらルナさんが慌てて近付いて来た。
「ミツルギさん!ゆんゆんさん!大変です!」
「どうしたんですか!?リュウジが見つかったんですか!?」
「いっいえ、クーロンズヒュドラが復活するそうなのですAdventuresの皆さんは討伐を御協力お願いいたします!」
「くっ……こんな事してる場合じゃないのに…ヒュドラめ、ぶち殺してやる!」
マリューは致し方なく、クーロンズヒュドラの討伐に向かった。そして……肝心の男は、ビッグブリッジから数十キロ離れ、穏やかな流れの川に枯れ木の大木にしがみつきながら気を失っていた。