翌日の晩に頼んで置いた獅子のシグナルが次の日には警察署の屋根に設置された。早速にシグナルが灯され、俺は金獅子としてセナと合流した。
「待たせたな」
「ご苦労さまです。金獅子さん」
「昨日今日だぞ?何かあったのか?」
「ええ、あの後早速作って頂きました。それで実は…アクセルの街に違法に営業している店があると通報があったので、摘発して欲しいのですが……」
違法営業?なんだ?エッチなのか!?エッチなお店なのか!?
「それはなんだ、いかがわしい営業なのか?」
「ちっ違います!その様な違法ではありません!無許可の賭博などです!」
セナは顔を赤らめながら否定した。セナは懐から違法営業している店が記されている地図を渡して来た。
「これが違法に営業している店のリストと捜索許可状です。一気に全てとは言いませんので摘発次第、警察署に責任者を連行して下さい」
「心得た、早速1件見てこよう」
「はい、ではお気を付けて」
セナに見送られた俺は屋根から屋根を伝って地図に記されている1件の違法営業の店にやって来た。様子を見ていると外からも聞こえる程賑やかになっていた。
「見た所、一見普通の安酒場だけどな…このカッコじゃ不味いな『変身』スキルを使うか」
俺は変身スキルを発動させ、そこら辺のモブキャラの男に変装して入店した。中は大忙しにごった返していた。
座る席あるかな?
俺がキョロキョロしていると、アルバイトの女の子に声掛けられた。
「ちょ、ちょ、お兄さん、どいてくれます?」
「あっごめんなさい!」
そこには無愛想にも見えるエルフの女の子いた。歳は…めぐみんやゆんゆんと同じくらいだろうか?、その子が料理を忙しそうに運んでいた。運びながらも女の子は俺に座る場所を教えてくれた。
「ちょっお兄さん、客でしょ?そこ空いてるから座っとき」
「おっおう……ありがと」
俺はカウンター席に座っていると先程の女の子がやって来た。
「おまたしー、で?何するん?」
「あっはいはい、んじゃ〜コレと飲み物お願いするよ。君はアルバイトなのかな?」
「あーハイ、そーッスよ…んじゃかしこまり〜」
そう言うとパタパタと厨房に戻って行った。かなり忙しい様だ。俺の周りはガヤガヤとどんちゃん騒ぎをしている。すると、先程の女の子が他の客に料理を運んで行くのが見えた。
「うぃーっす、お待しー。なんか肉系のバリクソ辛いやつと、野菜めの変な汁〜」
「ああ?こんなの頼んだか?おい、クロエ、おめぇメニュー間違えてんじゃねぇか?」
「ない。たぶん」
クロエ?あの子はクロエって言うのか
他の客もクロエと呼ばれた女の子に声を掛ける。どうやらあの子はここに勤めて長い様だ。情報収集の為に俺も耳を傾けた。
「おい!クロエ!こっちは酒の追加だぁ!酒持ってこぉい!」
「えーちょ待って客、ソレもう5杯目だよ?大丈夫?」
「ケッ、なーに言ってやがる。てめぇ見てぇなガキに心配される程俺の体はヤワじゃねぇよ」
「や、あんたの肝臓とかどーでもいンだけど、金金、金の話。ここの店長頭おかしいから。客が飲み代ツケると、店員の監督不行き届きとかゆって、謎にうちが怒られンだよねーマジ勘弁すわ」
ふむ。連行するなら店長だな
クロエがボヤいていると、店長らしき男が奥から姿を表した。
「聞こえてんぞクロエぇ!誰が頭がおかしいだと?てめぇ、バイト代十割カットすんぞこの野郎!」
「それ賃金不払いだし、訴えたらヨユーで勝てちゃうんだよなぁ…」
いやそれが事実だったらヨユーで成敗なんですけど?ってか料理まだ?
店長は更にクロエに言い放った。
「はんっ!だがそりゃあ出来ねぇだろクロエ?おめぇ、バイトしてる事は学校や家に黙って働いてんだろ?こんな場末の違法居酒屋でよぉ?」
「あーハイ、そッスねー働かせて貰って感謝してまーす。ハイお兄さん、お待たし〜パスタっぽいやつとオレンジジュースね、ごゆっくれー」
「はーい、ありがとう。いただきま〜す」
言ったな、今違法って言ったな?これもう黒だな。
俺はモグモグと料理を食べながら情報を集める。酔っ払い達もヒートアップしてクロエと店長に言い放つ。
「おいおい、マスター、そんな大っぴらに話しているとAdventuresが来ちまうぞ?」
「そーだぜマスター、違法の賭け事をしてるって知られたら俺達もやべーだろ!?最近金獅子って言う奴もウロついてるから用心しねぇとよ!マスターパクられちまうぜ?」
「はぁ……聞こえない聞こえない、お兄さんは気にしなくていいからね」
「あはは……」
ジュースを飲んでいると、他では別の客同士が喧嘩を始めた。どうやら違法賭博の賭け金で揉めている様だ。
「おいてめぇ!今の負け分払わねぇ気か!?」
「あぁ?これはゲームなんだぜ?」
「こんの野郎!」
ガシャーン!パリーン!と飛び交うコップや皿
うるせぇなぁ…静かに食わしてくれよ
細々と料理を食べていると、クロエは呆れながら客を止めようとして、騒ぎを聞きつけた店長が厨房また現れた。
「あーもう、ここの客はすぐそういう……いいけどさぁ、あんたら暴れンなら外でやってくんない?」
「がはは!いいぞいいぞ!今夜も盛り上がって来たな!この喧嘩を賭ける奴いるか!がはは!」
「いや止めろし、あんたも止めろし」
「さぁ!ご来店中のクソども、1口1000エリスからだ!張った!張った!ー!がはは!」
はい、現行犯確定。検察官セナの名のもとに成敗する。
俺がモグモグと料理を食べ終えようとしてる隣でクロエが疲れた顔をしていた。
「ぷー……登場人物全員アタオカ。ほんとしょーもない店…萎えるわ」
「あークソ!どいつもこいつも馬鹿にしやがって!」
「あーまたあの人ブチ切れてるし……お兄さん、ちょっと離れてて」
「えっ?何?」
クロエは俺を庇うように俺の前に立ちはだかり、酔って暴れてる客から遠ざけようとしていた。だが、荒れている客は不運にも俺に突っかかって来た。今の俺の見た目はモブキャラっぽい姿、金獅子でも鋼のリュウジでもない……。
「おう、兄ちゃん、何見てンだよ?俺が大負けしたのがそんなにおもしれぇか?あぁん?」
はぁ……しゃーねぇなぁ…まぁ、ガサ入れに来たんだしそろそろ良いか
「やれやれ、君も大変だね、こんな店で働いてるなんて」
「いや、お兄さんも相手しなくていいし、座ってろし」
「いや、この店に別件で用があったから…『変身解除』」
ドロン!と俺は金獅子の姿に戻った。煙が晴れると同時に俺はそのままクロエの前に行き、突っかかって来た男に掴み持ち上げた。
「えっちょ…お兄さん……?え何?手品?ウケる」
「おい、てめぇなんか見ても面白くねぇよ」
「ひぃ!?あっあんたは!?金獅子!?ひぃぃぃ!?」
俺は男を高く掴みあげながら叫んだ。
「全員動くな。違法営業の通報を受けている、現行犯は全員警察署に連行する!抵抗すると痛い目に会うぞ?」
金獅子の姿を目の当たりにした店長は苦い顔をしながら逃げようとしていたが、手裏剣を投げて行く手を止めた。
「げぇ!?金獅子かよ!?くっそぉ!、クロエ!テメェのせいだ!」
「えっうち関係なくない?」
俺はクロエを庇うように背中に隠した。
「えっちょお兄───」
「クロエちゃんだっけ?こっからは我の仕事だ」
「えっ?我とか言っちゃうの?ヤバいよ、金獅子兄さんウケるよ。そんで?店長捕まえちゃう系?」
「あぁ、警察に引き渡す」
「マジすか〜、バイト先一つ減るのが残念っスけど…その前に、この荒くれ集団1人で相手にするつもりなん?」
俺とクロエの前には店長を含め、逮捕の対象になった冒険者達が武器を構えて警戒していた。俺はクロエに指示を出した。
「クロエちゃんはそこの窓から逃げろ」
「マジで言ってんの?それ?」
「無論大マジだ、君まで巻き込まれる事は無い。アクセルの街には他にもアルバイトはある」
「マジかー、ぷふー……物心つく前にエルフの森から出て王都で暮して、バレないように学費稼ぐ為に遠路遥々アクセルの街に来たってのに」
ボソボソと呟きながらクロエは腰に隠していたククリナイフのような剣を取り出し構えた。
この子冒険者なのか!?
「君……冒険者だったのか?」
「まぁ、たしなむ程度っスけどね?クラスは『ソードマン』ってことで」
「ふむ、なら背中を任せても構わないな?」
「まぁ、客守るのも店員の仕事なんで」
クロエは俺の背中を守るように背中を俺に向けて他の冒険者に剣を向けた。冒険者達は開き直った様に襲いかかって来た。
「こうなりゃヤケだ!金獅子を殺っちまえぇー!」
「さてと……はぁぁぁぁっ!」
俺は抵抗して来た冒険者達を殴り倒し、気絶させ、拘束していると後ろから他の犯罪者に狙われた。
「死ねぇ!金獅子ィ!!」
「ちっ……小ざかしい」
バチバチと『スパーク』を唱えようとした時、クロエが俺に襲いかかった冒険者にククリナイフを背中へ回り込んで冒険者の喉元に突きつけた。
スピード、テクニック、申し分ない
「ちょ、ウチの客に何してくれてンの?」
「こっこいついつの間に俺の後ろに!?」
「落とし前っだっけ?付けてあげようか?秒で?」
「ひぃぃぃ!?ごめんなさぁぁぁい!」
「謝るンなら」
「警察はいらん!」
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クロエと俺が騒ぎを鎮圧してから10分後、駆け付けたセナと警察により、店長と冒険者達は逮捕された。クロエは何も知らずに働いていたと言う形と見なされた。俺はテーブルに座って休んでいるとクロエがジュースを持って来てくれた。
「はいコレ、うちからのおごり」
「ん……コレは?」
「『森のエーテル』ウチらエルフに伝わる…まー、なんだ、ドリンク?」
「ほぅ、こんな飲み物あるのか」
俺はコップを明かりに照らしてジュースをまじまじと見つめた。
「なーんか昔っから母親が良く作ってくれるんだよね、ふるさと味?的な感じでさ、エモいよね」
エモいな……
ゴクゴクと飲んで見ると、味はサッパリしてるブドウジュース的な味がした。俺がドリンクを飲んでいる間にクロエはエプロンを外し、帰り支度を始めた。
「なんだ?帰るのか?」
「まぁ、給料貰えるか分かんないんで、今日はテレポート屋捕まえてもう帰ろっかなと」
「王都に住んでるのだろう?もう夜も遅い、王都の夜道は危ないし我が『テレポート』を使って家まで送ってやろうか?」
「兄さんが?送ってくれんの!?ウチを?何それウケる……ちょっとカッコイイじゃん……まぁ、テレポート代浮くから助かるっスわ」
「よし、でわ行こう」
俺とクロエは外に出て、俺はテレポートを唱えた。王都に到着し、道を歩いているとクロエと色々話す事が出来た。
「なるほどな、病気の母上の負担を軽くする為に自分で学費を稼ぐ為にアルバイトをしていたのか、それに小さい弟達が3人もいるとは」
「まぁそうっス」
健気やなぁ……なんか泣けてくるわ……それに学生かぁ、俺は高校卒業する前に死んじまったからなぁ……なんかこの子を応援したくなるよ
俺は懐から紙とペンを取り出して一心不乱にメモを書き、クロエに差し出した。
「クロエちゃん」
「ん?なンすか?ん?住所と名前……鋼のリュウジ?」
「その男なら安全で学校にバレずに働けるアルバイトを紹介してくれるだろう、気が向いたり、どうしても困ったらその男を訪ねるといい。必ず力になってくれるだろう」
「まぁハイ、アザっす。気が向いたら行ってみますわ、あっここ家なんでここでイイっすよ」
「そうか…ちょっと待て」
俺はクロエに頭を下げながら3万エリスを出した。クロエはびっくりして手を突っぱねた。
「えっ急に何!?いやいや…やめてよ、金とかいらないから」
「言いそびれてしまったが、君の働き場所を潰してしまって済まなかった……手持ちが少なくて申し訳ないが、酒場の騒動の時協力してくれた報酬だ。今日1日のバイト代と思えばいい」
「気にしなくてイイよ、給料高かったからバイトしてただけだしね?」
「それでは俺の気が済まない、受け取ってくれ」
クロエは根負けしたのか、3万エリスを受け取った。
「ってか3万エリスもしないんだけどね?あそこのバイト代、まぁ迷惑料として?貰って置きますわ、あんがと金獅子の兄さん」
「ああ、では」
シュッと姿を消して屋根に上がって駆けていく俺の姿を見たクロエは呟いた。
「金獅子かぁ……カッコイイじゃん」
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再びアクセルの街に戻って来た俺は家に戻り、修理された窓から忍び込もうとしていた。現在の時間は深夜を過ぎていた。
「すっかり遅くなっちまったよ、皆寝てるかな?寝てるよね?」
部屋に人影は無しっと
さし足抜き足忍び足でそろりそろりと歩き、金獅子の鎧を脱いで片付けてベットに入ろうとした。
「さて、そろそろ寝……ん?何この布団の盛り上がりは?まーたクリスが入ってんのか?ったく」
布団を捲って見ると、そこにはペコリーヌが横になっていた。
えっ!?なんで!?
俺は恐る恐るペコリーヌの顔を覗くと目元が赤くなっていた。どうやら泣いていた様子だった。
「え?なんで泣いてたんだろう?」
「んん……リュウジくん……」
「待っててくれたのか?悪い事しちゃったな、ん?」
ドアの向こうからキシキシと足音が聞こえて来た。
誰か来る!?やべっ、寝たフリしなきゃ!ペコリーヌが寝てるけど仕方ない!
俺はゆっくり布団の中に入って寝たフリをしていると、部屋に誰かが入って来た。耳をすませていると声が聞こえて来た。
「感謝祭の事考えてたら寝れなくなっちゃったよ……抱き枕ない寝れない……ふわぁ〜」
この声はクリス!?ってか誰が抱き枕じゃい!
クリスが俺のベットに入ろうとしたらペコリーヌの存在に気付いたのか、小声で騒ぎ出した。
「えぇ!?ペコリーヌなんでここにいるの!?もぅ、3人は狭いよぉ」
なら戻れよ……ちょ、やめ入ってくるなぁ!
クリスは無理やりベットに入って来て、現在は川の字になって俺は真ん中に挟まれてしまった。クリスは入るやいなや、ギュッと抱きついて来て寝息を立て始め、ペコリーヌも寝ぼけてるのか、俺の腕に抱きついて来る。
「仕方ない、寝るか……」
何をしても無駄と判断した俺は、薄着で寝ている女の子に挟まれ、高鳴る心臓を聞きながら俺は寝床に付いた。
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3時間後……朝日も登り始め、アクセルの街に朝がやって来た。俺は目をカッと見開き血ばらせながら目を開けてムクっと起き上がった。
「いや寝れねぇよ、スヤスヤ眠れる訳がねぇよバカか、ちょっとエッチなラノベ系主人公見たいに女の子に囲まれて夢見がちじゃねぇんだよ」
ブツブツ文句を垂れていると、ペコリーヌとクリスがモゾモゾと動き始めた。
「んん……あっ…リュウジくんおかえりなさい、そしておはようございます☆あんまり夜遅くまで遊んでちゃダメですよ?」
「仕事だよ仕事ぉ、お前らなんでこの部屋にいるんだ?」
「寂しかったので……ごにょごにょ」
「んん……おはよ〜、2人とも早いねぇ」
「おはようじゃねぇよ!なんなの2人して、何?寒いの?今夏だよ!?」
ゴロンと寝返りをうつペコリーヌ&クリスは同時に同じ言葉を発した。
「「お構いなく」」
「出てけ!着替えるから!」
布団を引っ張りあげて2人を部屋から追い出したが、着替える途中にクリスが再び入って来た。
「あっ言い忘れたんだけど、今日から商店街の人達を集めて感謝祭の話し合いとかあるからリュウジ代わりに参加してね?」
「はぁ!?マジかよ!?俺も忙しいんだけど!?」
「お願い!あたしはエリス教会の落書き消さなきゃないからさぁ、だからあたしの代わりに出てくれないかなぁ〜?」
「えぇ……」
めんどくせぇ……。
俺は露骨に嫌な顔をすると、クリスはカチンと来たのか俺のほっぺを引っ張り始めた。
「お、ね、が、い、し、ま、す」
「いひゃぁぁ!わひゃった!いひやひゅ!いひやひゅ!」
俺の悲鳴を聞き付けて中途半端な着替え方をしたペコリーヌが入って来た。
「一体なんの騒ぎですか!?」
「え?……ってペコリーヌ!パンツ見えてるから!」
「あっ!?うひゃ!ごめんなさい!出直します!」
「ご馳走様です」
「何か言った?スケベ魔王」
「なんでもないっす。あのすんません、せめて風呂は入らせて下さい」
俺はそう言い残し、風呂場に向かった。
クロエちゃん……か゛わ゛い゛い゛な゛ぁ゛ぁぁぁぁ!