その後、エリス教会に行き教会の掃除を始める。ペコリーヌとマリューは教会の内部を任せ、俺とクリスは外でほうきとちりとりを持って掃除をしていると、先程アクシズ教の教会に殴り込みに行ったカズマがやって来た。
「やぁ、助手くん、どうだった?」
「おかえり、早かったな」
「おう、女神&魔王……どうにもこうにも。もう連中とは会話になりませんでしたよ。ありゃ痛い目に遭わないと学ばないパターンですわ。どうしよう……こうなったのにも俺にも責任があるし……これ以上悪化する前にちょっと懲らしめてやろうかなと」
そりゃそうだな、少し調子に乗り過ぎたな。
「まぁ、程々にしとけよ?」
「ああ、とりあえず泣かせるわ」
鼻息を荒らげるカズマの話しを聞いたクリスは横に首を振った。
え?良いのか!?
「そこまでしなくていいよ」
「クリス……」
「先輩がお祭りを盛り上げてくれたのも事実だからね。それに比べてあたしはアイギスを回収も出来てないままだし、真っ白で目立つ鎧なのに居場所すら掴めてないもん……。来年以降からは先輩が代わりに祭りを盛り上げてくれるならあたしは取りやめになっても気にしないよ?」
「おっおい……何言ってんだよ、良いのか?」
「リュウジや助手くんもごめんね?1人でエリス教の仕事とかさせちゃったり、神器探しを手伝ってもらったり、先輩の暴走を止めようとしたり」
クリスはあははと笑いながら空元気を見せる。長い付き合いになるからよく分かる、コイツ、今物凄く我慢してるってのがよく伝わって来る。それを知ってるから余計俺まで辛くなってくるわ、さて、どうしてやろうか。
クリスは寂しさを紛らわす様にほうきを動かす。
「ありがとうね、助手くん。リュウジも今度金獅子くんに会ったらお礼言って上げてくれる?キミたちだけがあたしの正体を知ってるし、あたしが色々やってる事も知っててくれてる。別にね、褒めて欲しい訳じゃないんだけど……キミたちのおかげで少しむくわれるよ!」
そう言って、エリスは柔らかい笑みを浮かべる。それを見つめた俺は胸が苦しくなって来た。
辛い…コイツが悲しい顔をしてるのを見てるのが辛くてしょうがない…。あれ?俺…どうしちゃったんだろう、俺はコイツの事なんとも思ってないと思ってたのに……なんで、辛いんだろう。頭の中でなんとかしてやりたいっていう言葉がいっぱい出て来る……。
俺は思わずクリスに向かって口走ってしまった。
「情けねぇ事言ってんじゃねぇ!」
「え……?」
「おっおい、リュウジ?どうした?」
俺はほうきを投げ捨て、クリスの肩を掴む。カズマとクリスはびっくりしたのか唖然として俺を見つめる。
「お前がそんなんでどーすんだ!ならなんで俺をこの世界に呼んだんだ!?お前1人で世界を守ろうとすんなよ!1人で抱え込むことないだろ!?」
「あっ…うん…」
クリスは面食らったかの様にポカンとしている。
「カズマ、アイギスは女好きなんだろ?」
「えっ!?あぁ……うん、そうだぞ?」
「おい、クリス。そのアイギスって神器、俺が捕まえてやんよ」
「え?けど……どうやって?」
俺は真剣な眼差しをして、考えた。魔王の時からこれ以上無いくらい考えた。
「エリス教会の人達の力が必要だ」
「おい、リュウジ、一体何をするんだ!?」
「まぁ見てろ、俺を完全に怒らせるとどうなるか、教えてやる」
────────────────────────
感謝祭最終日。炎天下にも拘わらず、そこは多くの人で溢れかえっていた。
『本日、お集まりの皆様方!私、この度司会に選ばれた事を誠に嬉しく、光栄に思います!』
場所はアクセルの町の大広場。街の中心に位置するそこに設けられたライブステージ上で、タキシードを着た男がマイクの様な魔道具を使って観客を賑やかにさせている。
『エリス教団主催による今回の祭りのメインイベント!第1回!ミス女神エリスコンテストを開催します!』
わぁぁぁぁぁぁぁ!
司会が放った叫びに応えるように湧き上がる大歓声。そのステージをスナイパーで狙う様に目を光らせながら双眼鏡で見つめる俺とカズマ、そして女神エリス。今回の作戦は俺が考えた秘策の秘策。可愛い女冒険者を集めてあのアイギスを誘き寄せようという作戦だ。
「ねぇリュウジ。あたし、もうなんて言ったら良いのか分からないよ」
「なら他に何か方法があるのか?」
「うっ……ないけど……」
「この際お頭も祭りを楽しめばいいじゃないですかね?」
「納得行かないなぁ……」
呆れて納得行かない様な顔をするクリス。
その理由は遡ることあの後直ぐの事になる、俺は様々な女冒険者に作戦遂行の為に頼み込もうとしていた。まず1人目はウチのルーンナイトのペコリーヌに頭を下げる。
「え?エリス様の仮装をするんですか?」
「ああ、頼む!協力してくれ!」
必死に頭を下げる俺を見るペコリーヌは笑って答える。
「もう〜♪水臭いですよ?喜んでお手伝いしますよ?エリス様の仮装だなんてやばいですね☆」
「ありがとう!ペコリーヌ!よし、次だ!」
「ほえ?他にも誰かに頼むんですか?」
「ああ、相手は女好きらしいからな。少しでも確率を上げたい」
「なるほど、なら、森からも連れて来ましょうか?」
「ホントか!?助かるよ!」
「はい♪わたしとリュウジくんの仲ですからねぇ〜♪んじゃ、『テレポート』でわたしをエルフの森に送って下さい!」
「分かった!そっちは頼んだぞ!『テレポート』!」
俺はペコリーヌを転送し、見送った。
帰りはエルフのアークウィザードが居るし問題ない。
さて、次だ!
俺はそのまま外を駆け回り、ウィズの店にやって来た。俺は激しくバァンとドアを開ける。ウィズは勢いよく入って来た俺を見て驚いていた。
「ウィズー!ウィズはいるかぁー!」
「ほぇあ!?リュウジさん!?どうしたんですか!?」
「はぁっ、はぁっ、頼む!力を貸してくれ!」
「一体どうしたんですか?」
「それは……」
俺はウィズに作戦を伝える。そうするとウィズは笑顔で応えてくれた。
「それでしたら喜んでお手伝いしますよ!」
「ホント!?ありがとう♪ウィズ〜!」
俺は思わずウィズに抱き着く。ウィズは顔を真っ赤にして悲鳴を上げる。
「ほぇぇぇぇ!リリリリリュウジさん!きゅっ急に抱き着くのはダメですよぉ!はぅぅぅ……」
「やっぱりウィズは頼りになるよぉ!ありがとう♪」
「あう……」
ウィズが俺の背中に手を回そうとした瞬間、店のドアが開いた。
「帰ったぞポンコツ店主───おや?」
「「あっ……」」
店に入って来たのはここの従業員でもあり、俺の協力者でもあるバニルさんだった。俺とウィズは慌てて離れる。
「うぉっ、バニル!?」
「ババババニルさん、おかえりなさい!」
「フハハハハハ!ポンコツ店主にへっぽこ魔王よ、我輩が来たからといって離れることは無い!そのまま続けるが良い!なーに、貴様らがイチャイチャする事なんぞこの先の八百屋さん辺りから見えてたわ!おっとどうした2人とも何故顔を隠すのだ?薄味の悪感情はあまり好みではないのだがまぁまぁ美味である!」
コイツ!言わなくてもいい事をペラペラと!
俺は気を取り直して、バニルに声を掛ける。
「バニルにも用があったんだ。バニル、いくつか頼みがある」
俺が声を掛けた途端バニルは先を見通したのだろう、ニヤリと笑いながら応える。
「フハハハハハ!言わなくても良い、それしきの事なら手を貸そう」
「助かるよ、それで神器捕獲の勝算は?」
「ふむ、貴様が企んでおる通りならまず失敗は無かろう、そして貴様が探している”魔道具”ならお肉屋さんの隣にある魔道具屋に置かれておる。そして最後のは……まぁ気が進まんが手を貸そう」
「良かった、んじゃ早速俺はそっちに向かうよ。んじゃウィズ、明日よろしくね!」
「はい♪任せて下さい!」
そう言って俺は店を後にし、魔道具店に向かって”とある魔道具”を手に入れた。そして、他にも女冒険者達に声を駆け回り現在に至る。作戦の経緯を聞いたクリスは照れた様にモジモジしながら頬を掻く。
「うーん……あたしは別に構わないんだけどね」
「気に食わないか?まぁそうだよな?、ダクネスにも協力を求めたけど頑なに拒みやがるし」
「まさかダクネスがあそこまで駄々こねると思わなかったね」
「それだけエリス様が大切って事なんでしょうね。あいつ、今朝まで散々行きたくないって駄々こねてたし」
そうボヤきながらカズマは双眼鏡でステージを見渡す。俺は千里眼を使いアイギスが居ないか周囲を見渡していた。エリス教団、エルフの森のエルフ達、挙句の果てにはペコリーヌやダクネスまで巻き込んだ大作戦、果たしてこんなベタベタな罠に掛かるだろうか……。
何をビビっている!きっと上手くいくさ!そう、何もかもね。
「ちょっとカズマ、あの子可愛くね?」
「おぉ……個人的な好みで言わせてもらえば、ちょいスレンダーかな?顔は好きなんだけどね顔は」
「ねぇ?ホントにキミたちはアイギスを探してるんだよね?女の子見る為にしてる事じゃないよね?……はぁ、あたしは飲み物でも買ってくるよ」
クリスは長期戦に備える為に冷たい飲み物を買いに行った。
あんな目立つ鎧なら一発で気付くはずだ、奴も男なら見晴らしのいい所を陣取って女体を眺めてるに決まっている。俺がアイギスならそうするからな。
俺がキョロキョロしていると、クロエを見つける。
クロエも参加してくれたのか!?良かった〜。
「なぁ、あの子可愛くね?」
俺はちゃっかりクロエを褒める、カズマもクロエを見つけて審査を始める。
「あー、あのダウナー系エルフの子か?ありゃ胸がちょっと小さいな……顔は好きなんだけども」
《そうか?けど、ありゃキツめの性格してると思うぜ?、確かにスタイルは申し分ない。いや、ツンデレで着痩せするタイプと見た》
「そりゃまあ、目付きがな?けどあのキリッとした目がデレたら可愛くね?」
「スレンダー系ならキツめの性格の方が良いんだよ。しかし着痩せするタイプねぇ……」
「ほら〜、やっぱり昨日ダクネスに許可貰う時水着審査も入れとけば良かったんだよ!」
《はぁ!?なんでそんな大事なもん審査に入れてないんだよ、馬鹿じゃねぇの!?》
「だろぅ?お前もそう思うだ──」
「……………………」
《なっなんだよ、何見てんだよ》
クロエに対して何気無い会話をしていると男が1人増え、隣を見ているとアイギスさんが同じ様に女体を眺めていた。
「「確保ーーー!」」
《うわっ!何すんだお前ら!やめっやめろ!》
俺とカズマは備えて置いた鎖と南京錠、そして手錠4つを使ってアイギスの拘束に成功した。
「はぁっ、はぁっ、手間掛けさせやがってコノヤロー」
「ゼーゼー……まんまと引っかかったな、このアホめ、このイベントはお前を誘き寄せる為の作戦だったんだよ」
「てめーの為に俺達がどんだけ苦労したか分かったこのクソ野郎」
《なっなんだと!?お前ら中々やるじゃねぇか、こそ泥の癖に少し見直したぜ?》
俺達はこんな神器に苦戦したのだろうか……。あほらしい……
陸に上がった魚のようにバタバタもがくアイギスを見下ろす俺とカズマはアイギスに言い放つ。
「それより、案外早かったな」
「そっそうだな、お前、来るの早すぎるだろ!コンテスト始まってまだ10分経ってねぇぞ?」
「長期戦に備える為にジュースを買いに行った相棒に謝れボケェ!」
《あっ、ちょっと静かにしてくれる?あのダウナー系エルフの子のプロフィール聞こえないから》
コノヤロー!
「まぁ、あの子は俺知ってるから許すけど、クロエのプロフィールが終わったら再開だからな?」
「リュウジ、お前あの子知ってるのか?」
「あぁ、まぁ色々あってな……」
《わーってるよ、あの子が舞台裏に引っ込んだら再開だ》
一時休戦した俺とカズマ、アイギスから目を離さない様にその時を待った。クロエのプロフィール紹介が終わると、クロエは恥ずかしそうにステージから下がって行った。
「よし、クロエも引っ込んだ事だし、再開すんぞオラ」
「てめえのおかげでこっちは散々な目に遭ってんだ、大人しくして貰おうか?」
《ハンッ!やれるものならやってみな?、伊達に聖鎧アイギスさんと呼ばれた俺ちゃんじゃねぇんだよ、その昔、星の数の魔物共をご主人様と共にちぎっては投げ捨て、ちぎっては投げ捨ててたんだぜ?》
「上等だよ馬鹿野郎、俺のチートは【完全武装】。お前のようなじゃじゃ馬鎧でも着こなしてやるよ、お前を着ながらサウナに入ってくれるわ」
静かなる戦いを再開した俺達3人は、互いに言い合う。
『はい!ありがとうございました!リーンちゃんでした!。いやー可愛らしい女の子でしたねぇー!しかし、この次もご期待下さい!今大会の優勝候補の1人です!!さぁさぁ!張り切ってどーぞ!』
司会の言葉に歓声が湧き上がる。アイギスを押さえつけながらもバッ!と3人は同時にその優勝候補を見つめる。その優勝候補の一角というのは、ペコリーヌだった。
「「ペコリーヌ!?」」
《なんだ、お前らの知り合いか?、なぁ?あの子見てからにしないか?》
「まっまぁ、ペコリーヌのスリーサイズとか知りたいしな?」
「カズマ、人のパーティーメンバーの事そんな目で見るなよ……次こそは勝負再開だからな?」
《わりぃな、安心しな、逃げたりしねぇよ》
「まぁ、これだけ人が居ればまた捕まえられるしな?」
俺達は見やすい様にアイギスを移動させて3人並んで見物を始める。
《なんだよあの子は!?反則だろ!?なんで水着審査しなかったんだよ!》
「いや採用しようとはしたんだがな?」
「仕方ねぇだろ、俺の仲間が譲らなかったんだよ……もうちょい粘れば良かったな」
《おいおいおいおい!なんだよあのでけぇ乳は!?揺れまくってんじゃねぇか!!おい、アンタの仲間なんだろ?クラスはなんだ!?》
「ペコリーヌか?あいつは『ルーンナイト』だぞ?」
《マジかよ!惜しいっ!実に惜しいっ!レベル上がってソードマスターにジョブチェンジしねぇかな!?》
「うーん、元々ペコリーヌレベル高ぇからなぁ……なんとも言えないな」
そう言いながらも俺はペコリーヌをガン見する。
『さぁさぁ!続きますのがもう片方の優勝候補!皆さんご存知不憫が似合う薄幸店主!最近お店が儲かったがまた赤字!参加理由は気になる人に頼まれたとの事!優勝候補!ウィズ魔道具店の店主さんです!』
「ウィズ!おいカズマ!ウィズが出たぞ!」
「やったぁ!ウィズだ!ええなぁ、やっぱりウィズはエプロン姿が1番似合うなぁ!」
《おいおいお前らまた知り合いかよっ!それにしてもレベル高ぇなぁ!抱き締めてぇ!なんだよあのダイナマイトボディーは!?……けど、魔法使いにしか見えねぇな、誠に残念ながら職業不一致かぁ……もったいねぇ》
「まぁ、ウィズはアークウィザードだからなぁ……けどやっぱりウィズは可愛いなぁ……」
「たまんねぇ……」
大の男が3人揃ってテンションが上がりに上がりまくる。観客もボルテージが更な上がり、司会も熱が入る。
『さぁ!続きましては3人目の優勝候補です!。この街に住んでるなら知らない方はもう居ないでしょう!Adventuresの1人、大貴族ダスティネス家のご令嬢、ダスティネス・フォード・ララティーナ様です!』
んお?何だかんだで出るんじゃねぇか、ねぇ?ララティーナお嬢様?
《ファーッ!良いやん良いやん!物凄く良いやん!綺麗な顔してエロイボディ、しかも貴族の令嬢と来た!!ポイント高いぞ!?》
ダクネスが現れると共にアイギスのテンションも跳ね上がる。カズマも褒められて嬉しいのか、うんうんと頷く。
「そうだろうそうだろう?あれ、俺の仲間なんだぜ?」
《マジでか!?あれいいなぁ!なぁ、俺のご主人様はあの子が良いわ!あのエロいボディには傷一つ付けないから!》
遂にアイギスは新たなご主人様を決めかね始める。カズマは念の為にダクネスの詳細を話す。
「でもあいつ、クルセイダーだぞ?それに服着てるから分からないけど、あいつ……腹筋割れてるんだぜ?」
「えっ!?割れてんの!?」
《割れてるのか……いやしかし中々……でもクルセイダー……くそっ、よりにもよってクルセイダーかよ、でもなぁ……外見は好みなんだよなぁ、アレ以上の来るかなぁ……》
葛藤するアイギスを後目に悩む俺とカズマ。ペコリーヌ、ウィズ、ダクネス。Adventuresの選りすぐりがもう既に出た。これ以上誰が居るだろうか?
ダクネスは緊張して顔を真っ赤にしながらボソボソとプロフィールを話し始める。だが、酔った冒険者がダクネスをイジり始めた。それに釣られて他の冒険者達もダクネスをイジり始める。
「ララティーナー!自慢の腹筋見せてくれよ!」
「そーだそーだ!サービスしろー!」
「いっその事もう脱げー!」
「ダクネスもう脱いじまえー!」
「脱ーげ!脱ーげ!」
どさくさに紛れに俺とカズマは大声を出すと、その言葉を聞いたダクネスがギョッとした顔をして俺達を見付けた。
見つかった!だが、それがどーした!
「何コッチ見てんださっさと脱げー!」
「オラオラどうしたララティーナ!脱げー!」
《脱げー!脱げー!》
その時、会場の男達が一致団結し、みんなが華麗に声を揃えて脱げコールを響かせる……その時。
「ねぇ?何してるのかな?」
ジュースを買いに行った相棒の冷たい声で一気に冷静さを取り戻した。
────────────────────────
「まったく、あたしの友達をいじめないでよね?」
「すんません」
「すいません」
《ごめんなさい》
見晴らしのいい所でゴミを見る様な目をしながら俺達3人を頭にたんこぶを作って正座させられていた。
「でもまぁ、作戦は成功したし?イベントも盛り上がったのも事実、結果オーライじゃないか?」
「そうそう、良かったじゃん?」
「ちっとも良くないよ!どーすんのさ!この状況!!」
会場を見ると、脱げコールで遂にキレたダクネスが男冒険者に襲いかかっているのだ。俺並みのパンチ力を誇るらしいダクネスは暴れて殴りまくっていた。
《なんだよあの子ステゴロも出来んのか!?喧嘩祭りも悪くねぇ!俺ちゃんも出るぜ!》
アイギスは鎖や手錠を引きちぎって自由を取り戻した。
「俺も行くー!体が訛って来たからな!」
「止めてよ!これ以上ややっこしい事にしないでよ!あーもー!アイギス!お願いだからキミだけでも大人しくしててよ!魔王を倒した暁には、女神権限で魔王を倒した勇者だけじゃなくてキミの願いも叶えて上げるから!」
《まだ女神とかどーとか言ってんのこの子、あのさ嬢ちゃん、俺は女神って奴を知ってるからな。そんな俺ちゃんが教えてやるよ、女神なんてろくな奴いねーよ》
「何ぉぉぉぉ!?」
「言えてる」
「なんだとぉぉぉ!?」
おっと、思わず本音を漏らしてしまった。
クリスは俺をぶん殴り、アイギスに掴みかかり殴りまくる。
「このっ!あったまきた!湖に封印してやる!」
《おいおい、そんなチンケなパンチじゃ傷一つ付かねぇよ?何せ俺ちゃん神器ですから!イャーハー!、頑張ってお嬢さん♪》
「キーッ!」
ガンガンとアイギスの胸を殴り続けるクリスを見ながら俺は立ち上がり、クリスの肩に手を置いた。
「やれやれ……ここまで来たらしょうがない、クリス?奥の手だ」
「うぇ!?まさか……ここでやるって言うの!?」
《あん?なんの話をしてんだ?お前ら?》
「おい、アイギス。お前に最高の女紹介したら、クリスの言う事に従うか?」
そんな問い掛けにアイギスは首を傾げる。
「はぁ?とびっきりの女って?さっきの3人か?悪いが3人共可愛いが、俺の条件に合わなかったんだぞ?」
「おい、クリス……。いや、エリス!お前の本気って奴を見せてやれ!」
「えぇ!?ちょっと!本気なの!?」
「本気だよ、なぁ?これ以上面倒は御免だ、頼むエリス……」
急に無茶振りをされて狼狽えるクリスだが、俺はまっすぐクリスの顔を見つめて膝をついて頭を下げる。
《はぁ?その嬢ちゃんはクリスってんだろ?何だよエリス様って、この暑さで頭がおかしくなったか?それなら早く医者に──》
「はぁ……仕方ないなぁ…分かったから頭を上げて?。あの元魔王が随分と丸くなっちゃったねぇ?」
「やかましいわ、お前がモタモタしてるからだろ?」
「それもそうだね、んじゃやろっか?」
そう言って俺とクリスは見つめ合い、同時にアイギスに視線を送る。
《無視して盛り上がってんじゃねぇよ、魔王だの、女神だの訳分からん事言い出しやがって、一体何企んでるんだ?》
不機嫌そうに文句を垂れるアイギスに俺は言い放った。
「おい、クソ神器。この世で一番おっかねぇ奴に合わせてやるよ」
《はぁ?あっあれ?嬢ちゃん……いつの間に消えた!?おい!?》
俺の後ろで盛り上がっていた会場が一瞬で静まり返った。老若男女がステージを見つめている。ステージ中央には、いつの間にそこに立っていたのか、優しげな笑みを浮かべる少女が1人立っていた。
『あの、飛び入り参加と言う事で良いんでしょうか?』
『はい。飛び入りと言う形になってしまい、申し訳ありません』
『いえいえ!そんな事はありません!それで、お名前を伺っても?』
突然現れたエリスに恐る恐ると尋ねる。エリスは優しい笑みを浮かべて応えてくれた。
『名はエリスと申します』
その瞬間、会場が大歓声が轟雷の様に轟いた。俺は歓声の反応を耳で感じ、固まったまま動かないアイギスに問いかけた。
「お前は俺の相棒を本気にさせたな。あいつは正真正銘、幸福を司る女神エリスだ」
そう言い放つとピクリとも動かなかったアイギスはブルブルと震えは出し、騒ぎ出した。
《見つけた…みつけたぁぁぁぁぁぁ!遂に見つけちゃったよ!本当のご主人様を!YES!YES!YES!》
「おっおう、そうか。とりあえず落ち着け、な?」
ステージはパニックに陥り、エリスの周りに人集りが出来始める。カズマは慌てて俺に言い放つ。
「おい!エリス様が集られてるぞ!アイギス、リュウジ助けるぞ!」
これ以上はやばいな、さてと仕上げと行きますか。
《おう!守る!俺ちゃん超守るよ!この聖鎧アイギスが死守するよ!》
「カズマ、アイギス!行くぞ!撤退戦だ!」
俺、カズマ、アイギスは広場に降り立ち、ステージに向かって一気に攻め込む、立ちはだかる観客をなぎ倒し、ステージに登った。エリスから離れない1人の観客を俺は睨み付ける。
「早く連れ出せ!」
「おぉい、いつまで手を握ってんだコラ」
「ひっ!?」
《お待たせしましたご主人様!早く俺の中に!『合・体』!!》
その言葉と同時に光だし、ガチャガチャと聞こえた。再びエリスに目を向けると……。
「暑い!リュウジ!この中暑い!蒸し焼きになっちゃうよ!」
「もうちょい頑張れ、このまま逃げるぞ!」
「リュウジ!観客が暴れ始めた!殿は俺に任せてステージに登ってくる前に逃げろ!」
「カズマ……すまん!」
《2人にお得情報!やっぱりエリス様っていい匂い擦るよ!》
知ってる情報ありがとうね!
俺とアイギス(エリス装着)はそのままカズマを囮にしてステージから降りてその場を撤退した。