アイギスと共に家に逃げ帰った俺達はエリス元いクリスを解放した後にマリュー、ペコリーヌ達とも合流した。アイギスを見た途端ペコリーヌとマリューは驚いていた。
「あれ!?リュウジくんが2人!?」
「あー、このお方が聖鎧アイギス様ですか、確かに強そうですね」
《あっ!?さっきのルーンナイトのねぇーちゃん!はじめまして》
「それでねアイギス?約束のご主人様なんだけど、魔王を倒すまでリュウジに協力して欲しいの」
クリスは申し訳無さそうにアイギスにお願いする。
アイギスは腕組みをしながら悩み出した。
《コイツが?コイツが代打のご主人様かぁ…まぁアンタの願いだ、別に俺は──》
「いや、別に無理しなくていいんだぞ?」
俺があっけらかんとした声で答えると、クリスははぁ!?という感じの顔をしながら掴みかかって来た。
「なんでよ!あんだけ苦労したの着ない気なの!?」
「なんでって、俺はアイギスの意見を尊重したいから?」
《お前……》
「わたしも、リュウジくんの意見に賛成です!」
「そうですね、私もです。今はこんな姿ですけど、私も気持ちは分からない訳じゃないので」
ペコリーヌとマリューもアイギスの意見を尊重する様だ。
よし、アイギスを旅に出す前に作戦の総仕上げと行きますか!
俺はこの為だけに買ったカメラの魔道具を取り出した。
「アイギス、意見を尊重する代わりに、写真を取らせてくれないか?」
《写真を?》
「ああ、アイギスお前のような純白で綺麗な鎧見た事ねぇからな、出来ればそのボデーを参考にしたい。もちろんタダとは言わない、旅費用を払ってやる」
《マジかよ!いたせりつくせりじゃねぇか!おう!撮れ撮れ!》
「なんか撮影会が始まったんですけど?」
「あはは!やばいですね☆」
「参考ですか……なるほど」
俺はペタペタとアイギスの体に触れる。
「その前に、アイギス?普段どうやってご主人様を中に入れてるんだ?さっきは光で良く見えなかったんだけど?」
《なんだ取材もしてぇのか?仕方ねぇなぁ、本当は秘密って事なんだけど、ギャラをくれるって言うなら教えてやるよ。前開き、後ろ開きで装着するんだ》
そう言うとアイギスは体をガチャガチャ言わせながら全身を前開きや後ろ開きして中を見せてくれた。俺は一心不乱に写真を連写してメモを走らせる。
なるほど、この辺はアイアンマンと同じなのか……ふむふむ。
「んじゃ、アイギス!早速撮影しちゃおっか」
《綺麗に撮ってくれよ?》
「んじゃ、こんな感じのポーズをしてくれるか?」
《はぁ!?女でもねぇのにそんなポーズ取らせんのか!?》
「お願いしますよ先生〜?」
《しょっしょうがねぇなぁ……こうか?》
俺は札束をチラつかせてアイギスをグラビアアイドルのセクシーなポーズを取らせて全身を舐め回す様に連写する。
「いいよー!いいよー!セクシーだよ!アイギス!」
様々なポーズを取るアイギスを、俺は床にゴロゴロ転がったりと、実に様々なアングルで激写していた。
「いいぞいいぞアイギス!その調子だ、今のお前は輝いている! さあ、美しいポーズは撮り終えた。次は扇情的にいってみようか! さあ、それじゃ、指を咥えて尻をこちらに向けてみようか!」
《こっこうか?》
俺とアイギスが撮影しているのを目の当たりにした女性陣は不思議な顔をしている。
「ねぇ?この人何してんの?」
「鎧の写真集でも作るのでしょうかね?」
「いやなら指咥える必要ないですよね!?」
アイギスは言われるままに、親指を咥え尻をこちらに向けた。それを何枚か撮り終えて、俺は更なる指示を出す。
「よし、次はいよいよカッコ良さを加えてみようか! 足を開き、腰を落とし、手を……、そうそう、そんな感じで!さんっはい!「すしざんまい」!」
《よし、やれ、もっと、もっとだリュウジ! 俺の美しさを後世に残してやってくれ!》
残してやる!残してやるとも!
それから何枚撮ったのか自分でも分からないくらい写真を撮った。外は暗くなっており、燃え尽きた俺とアイギスは大の字になっていた。
「いや〜、参考になったよアイギス。ありがとう!」
《よせやい、照れるじゃねぇか》
「んじゃ、ほら、約束のギャラだ。神器のお前に金は必要ないかと思うけど、馬車代くらいにはなるだろ?」
《わりぃな、んじゃ!またどこかで縁が会ったらまた会おうぜ?》
「ああ、またな?」
「けどアイギス、とりあえず魔王と戦う時はちゃんと協力してね?」
《任せてとけって、またな?お嬢ちゃん達!》
そう言い放ち、アイギスは新たなご主人様を探す為に旅に出た。俺達は手を振って見送り再び家に入る。家に入った途端俺は写真を取り出し、取り憑かれたかのように工房に入った。クリスも工房に入って来て夢中になって設計図を書いている俺に声を掛ける。
「ふむ……これだけ複雑な体勢を取っても隙間がひとつも無い、流石は神器だな」
「ねぇ?鎧の設計図なんて書いてどうするの?」
「俺の鎧を更に改良する為にアイギスの写真がどうしても必要だったんだよ。だから色んなポーズをさせたんだ」
「なるほどねぇ。取り組んでる所悪いんだけどさ、今夜は感謝祭の打ち上げだよ?早く行こ?助手君も心配だしね?」
打ち上げ?あー、後夜祭の様なものか。
「そうなのか、んじゃみんなで行くか?」
「うん!」
クリスに促され、俺達4人は打ち上げに参加する為に会場に向かった。
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会場に着くやいなや、宴会が始まっており、顔見知りがチラホラ見える。カズマもアクアの隣に座っている。アクアは既に出来上がっており、ミツルギに酒をつがせている。それを止めさせようとカズマと取っ組み合いをしているが、俺達もカズマ達の近くに座る事にした。早速ペコリーヌはバイキングの料理を全滅させに向かう。
「あっ!リュウジ達も来たのね!?ほらほらっ!飲みなさいよ!」
「おっおう、わりぃな」
「ダクネスもほら、飲んで飲んで!めぐみんも!」
「ささっ!アクア様も飲んで下さい!」
「悪いわねぇ、魔剣の人!」
いや、ミツルギ、ゆんゆん達を放置して何をしているんだ?
「おいミツルギ?ゆんゆんやアオイ達は?」
「ゆんゆんとアオイなら向こうでメリッサと仲良く飲んでるよ?」
「ささっ、ミツルギさんも飲んで飲んで!」
ミツルギのグラスにすかさず脇から酒を次ぐ人が目に入った。
その人物は、セシリーだった。
俺はブルブルと指を指す。
「おっおい、ミツルギ?なんか妙にセシリーと仲良くないか?」
「あっああ……実は……」
ミツルギは青筋を立てながら項垂れる。だが、打って変わってセシリーはキャピキャピとハイテンションだった。
セシリーは俺を見つめてとんでもない事を言い放った。
「鋼のリュウジ、聞きなさい?いい?私も正式にAdventuresのメンバーに加わったから今後ともよろしくね?」
「はぁ!?」
俺は思わず声を荒らげる。
「嘘だろ!?ミツルギ!?お前、いくらなんでもそれは」
「ボクの意思じゃない……セシリーが勝手に……」
「まぁ、俺のチームじゃないから何も言わないけど……」
「いいじゃないのよ!私が加入したからって!ですよね?アクア様!」
「そうよ!リュウジ!固いこと言わないで頂戴!新メンバー、セシリーの加入を祝して乾杯よぉー!」
「「「「乾ー杯!!」」」」
「「乾ー杯!!」」
セシリーの話が聞こえたのか、少し離れた所からゆんゆんやアオイ達も乾杯をしていた。
2時間後、俺は酔って火照った体を冷ますために会場を抜け出し、バルコニーに出て夜空を見上げながら夜風に当たっていた。
「ふぅ……そういえば、前の世界でもこうやって抜け出してたなぁ。そしたら別世界の勇者のミーシャと戦ったっけ……あの子、今頃どうしてんだろうなぁ……」
「こんな所でどーしたの?」
再び視界を戻すとそこには、クリスが隣に座っていた。
「いや〜まさかキミの口から協力してくれって言われた時はどうしようかと思ったよ」
「あー……ごめん、あまりにもアイギスの言葉にイラッとしてさ」
「あはは!そうなんだ!。そういえば、今日は金獅子くんは来ないの?」
「あ?金獅子?なんだ?会いたくなったのか?」
「え?会いたいと言うより、お礼が言いたいんだよね。今すぐ連れて来てくれる?」
俺は少し間を置いてクリスに答えた。
「分かった、連れて来てやるよ『テレポート』」
俺はクリスから離れてテレポートを唱え、着替えに戻り、最後の作戦を開始しする為にウィズの店に立ち寄ってバニルと合流した。
「よし、バニル準備は良いか?バレないようにしろよ?」
「フハハハハハ!問題ない!行こうではないかっ!『変身』!」
バニルは鋼のリュウジに変身し、俺と同時に歩く。
この作戦はクリスに鋼のリュウジと金獅子が同一人物では無いと信じ込ませる為だ。
俺とバニルは手筈通りに別れ、先程のバルコニーに俺は向かい夜風にたそがれているクリスに声をかける。
「銀髪」
「あっ、金獅子くん!来てくれたんだね!」
「遅れてすまんな、鋼のリュウジには声を掛けられていたのだが」
「そうなんだ、その肝心のリュウジは?」
「鋼のリュウジか?奴なら──」
「もういいよ、キミがリュウジでしょ?」
ドクン……と俺の心臓が脈打つ。
落ち着け、落ち着け俺。作戦通りにやれば上手く行く!バレてるってのはもう分かってるんだから、落ち着いて冷静を保つんだ!
「何を言う、鋼のリュウジならそこに居るではないか?」
「え……?」
俺が会場の内部を指さすと、マリューとペコリーヌと3人で仲良く話している鋼のリュウジの姿に化けたバニルがいた。クリスは驚いて何度も俺とバニルを指を指す。
「あれ!?なんで!?あたしずっとリュウジだと思って泳がせてたのに!?リュウジがあそこにいる!?んじゃキミ誰なの!?」
「誰って……我が正真正銘の金獅子なのだが?」
「答えになってないよ!」
上手く行ったな、後はバニルと合流するだけだ、一旦帰ろう!
「そう言われてもなぁ、我は我だからな?用は済んだろ?我はもう帰るぞ?」
「えっ!?待ってよ!まだ用事が済んでないんだから!」
クリスは俺の手を掴んで帰るのを止めた。
焦りからなのか俺は額に汗を滲ませる。
「なっ何をする!?離せ!」
「待って!リュウジがこっちに来る前に、今まで手伝ってくれたお礼を言いたいの!」
「お礼?なら今すぐ言え、我は王都に帰る」
俺とクリスが揉めていると、ミソギ、ミミ、キョウカが近付いて来た。
「あっ!クリスねーちゃんだ!」
「ほんとだー!クリスおねーちゃんだー♪」
「2人とも!「こんばんは」が抜けてるよ!クリスおねーちゃん、こんばんは!」
ぞぉ!?こんな時ロリっ子軍団だとぉ!?
俺は汗をダラダラとかき始める。
悟られない様に子供達から顔を逸らした。
クリスは挨拶を交わし、声を掛ける。
「こんばんは、3人とも!綺麗なクリスの花を持ってるね!」
俺はチラッと子供達が持っている紫色の花を見つめた。
「ほう、クリスという名なのか?その花は?」
「そうだよ。この花の名前はクリス。花言葉は諦めない心なんだってさ」
「ほう?そうなのか、知らなかったな」
俺が感心していると、ミミがクリスの顔を見て首を傾げた。
「そういえばおねーちゃんのほっぺたの傷ってどうしたの?傷があるって事はおねーちゃんもやっぱり冒険者なの?いつも宝石いっぱい持ってくるけど、冒険者は荒くれ者だってシスターが言ってたよ?おねーちゃんは荒くれ者なのにお花に詳しいの?」
ミミの子供特有の質問攻めでクリスを困らせた。
クリスは頬の傷をかきながら答える。
「えっとね……この傷は、魔王軍の悪いやつと戦った時に付いちゃってね。それと確かにおねーちゃんは冒険者だけど、冒険者にも荒くれ者じゃない人もいるのさ。キミたちも前に会った鎧を着たお兄ちゃんや、このお兄ちゃんみたいにね?」
そう言って、こちらをクスクス笑う。
「それに詳しいのは、その花だけからね。ほら、この花とあたしとこの前のお兄ちゃんの目の色が同じでしょ?あたし、このクリスの花が大好きなんだ」
クリスは身を屈めると、ミソギやキョウカ、ミミに視線を合わせ、花に顔を寄せて香りを嗅いだ。
「そうなんだ!このお花はエリス様にお供えするんだよ!」
「最初はミソギ、イタズラしようとしたけどね」
「このお花は〜3人でお小遣いを合わせて、買ってきたの〜♪」
「うん、エリス様もこのお花が好きなっだって!」
「3人とも良く知ってるね!でもエリス様は、キミ達みたいな小さな子に大事なお小遣いを使ってまでお供え物をされると、嬉しすぎて困っちゃうと思うな。だから、今回きりにした方がエリス様も喜ぶよ」
「そうかなー?でも私達、エリス様にお礼をしたかったから」
「お礼?なんで?」
首を傾げるクリスに対して、キョウカが話し出す。
「はい、お礼です。シスターが言ってました。皆が平和に暮らせるのは、悪い魔王に対抗出来る様にって、エリス様が色んな力を授けてくれるからだって、あとは、皆が知らない所でエリス様が頑張ってくれているからだって言ってました。だからエリス様にお礼をして、応援するんです」
これまた、あながち間違ってないのが怖いな
それを聞いたクリスは嬉しそな顔をしてキョウカに答える。
「そっか……。えーっと、これからはお供えなんかしなくても、その気持ちだけでもエリス様は喜ぶよ?キミたちの方こそありがとう、ってね?」
そう言って報われた表情をしながら頬をかいた。そんなクリスを見ていたミソギが言い放つ。
「あのね、ミソギ、前から思ってたんだけど。おねーちゃん目の色と髪の色がエリス様に似てるよね?」
子供ってのは鋭いなぁ……
ミソギの言葉にミミとキョウカも釣られてクリスの髪の色をジッと見つめる。
ミミは何を思ったのか、手にしていた花をクリスに差し出した。
「お供えする花はミソギちゃんとキョウカちゃんが持ってるから、おねーちゃんにあげる。今日は鎧のお兄ちゃんがいないけど、いつもモンスターから守ってくれてありがとう♪」
「銀髪、受け取ってやれ。こんな貴重な報酬はお前が貰うべきだ」
「そうだよね、ありがとう!鎧のお兄ちゃんに伝えとくね!」
「じゃあ、またねクリスねーちゃん!バイバーイ」
「またねおねーちゃん♪バイバイ!」
「また勉強おしてえくださいね!」
3人は満面な笑みを浮かべて駆けて出して行った。
「良い子だな、あの笑顔を守らねばな……」
「そうだね……」
「さっ、事は済んだな。我は王都に帰る…鋼のリュウジによろしくな?」
「そっか、またね?金獅子くん」
俺は塀を乗り越える為に近付いて行こうとした……その時。
「『スティール』!!」
「なっ!?」
唐突にクリスはスティールを発動させ、クリスが手にしたのは……俺の頭巾だった。俺は咄嗟に両手で顔を隠し、屈みながら壁にくっ付いた。くすくすと笑いながらクリスは話し出す。
「反応早いね〜、素顔を見たくて取ったのに♪」
「何をしているんだ!?早く頭巾を返せ!」
「嫌だよ、ずっと素顔を知らないままなんて嫌だからね。ほんとにリュウジじゃないなら顔を見せれるでしょ?」
「貴様……!?鋼のリュウジならそこにいるだろ!?」
俺は顔をマフラーで巻いて顔を隠しながら指を指す。だが、クリスはチラッと見て直ぐに戻った。
「あれは……誰?リュウジじゃないよね?」
なんっだと!?
「何?……何故そう言いきれる?」
「うん、そう言うと思ってたよ。本物リュウジなら、キミに挨拶するだろうからね?けどあのリュウジは一向にこちらに来ようともしない。すなわち、あのリュウジは偽物。さしずめキミに変身スキルを教えた人なんだろうね」
なんでだ!?全部バレてる!?ペコリーヌかマリューが喋ったのか?
「憶測で物事を決めるものでは──」
「憶測なんかじゃないよ?証拠はあるからね」
証拠?何!?口調も目の色も変えたのになんで気付いたんだ!?
ダメだ、逃げよう!頭巾は諦めるしかないっ!
俺は慌てて右手を伸ばし、『フラッシュ』を繰り出そうとしたその時。
「逃がさないよっ!『スキルバインド』!!」
「しまった!封じられたかっ!?」
俺は慌てて懐から煙玉を取り出し、投げ付けようとしたらクリスは一瞬で距離を詰めて来て腕を掴んで来た。俺はすかさず転ばせようと組み返したがクリスは機敏な動きで組み技を逃れた。
「何!?」
「あはは!同じ手は通じないよ?観念しなよ、リュウ〜ジ?」
ダメか……仕方ねぇ、潔く降参するか。
俺は観念して、手をホールドアップ状態にしてクリスに尋ねた。
「わーった、わーった、はぁ……いつから気付いてたんだ?」
「やっと認めたね?。王城に忍び込んだ時の事、覚えてる?」
「まぁ、覚えてるが?」
「助手君が、あたしにくっ付いた時、キミ…”舌打ち”したよね?」
俺はハッ!と言う顔をする。
「キミの舌打ちは良く覚えてたからね、気になりだしたのはその時だよ」
「確信を持ったのは?」
「それはキミが行方不明になった時かな?赤い鎧が何故か家にあったし、天界ではキミのモニターも金獅子くんのモニターも映らなかったしね?あと、決めてはキミの目の下にあるホクロ、リュウジと全く同じだよ?」
やらかした……そんなに前から疑ってたのか……
どうりでカズマの前で魔王やら女神の話をする訳だ。
クリスはスタスタと近付き、俺のマフラーを取り始めた。マフラーを取った素顔を見たクリスは安心仕切った顔をする。
「見事な名推理だな……」
「どうして今まで黙ってたの?」
「そりゃまぁ……お前を……守りたかったから」
「あたしを?王都で襲って来た様な奴から?」
「ああ、そうだよ……」
「ネックレスの時からアイギスの時まで姿を隠してまでずっとあたしを守ってくれてたの……?」
「そうだよ」
「何故……?」
「何故って……もう相棒を失いたくないから───」
俺が話している途中にクリスは突然抱き着いて来た。
一瞬何が起こったのか分からず、唖然としていた。
うわひゃっ!
「ありがとう…あたしを…守ってくれて……」
「おっおう……びっくりしたぁ……」
「うっ……ぐすっ……うぇぇん」
しくしくとクリスは鎧に顔を埋めて泣き始めた。
俺は頭を撫でて落ち着かせる。
「よしよし……もう泣くな」
「ありがとう……ありがとう……」
「よく1人でここまで戦って来たな」
俺はそのままクリスの顔を上げ、真っ赤になった目から涙を指で拭った。
「あーあ、可愛い顔が台無しだぞ?」
「うぅ……見ないでよ」
俺は刀傷を指でなぞり、クリスはくすぐったいのか小さく声を漏らした。俺は優しい声で囁いた。
「んんっ……くすぐったいよ……」
「痛かっただろ?それと、約束してやる。俺が魔王に同じ様に傷を負わせてやる」
「あはは、改めて考えると、魔王が魔王を倒すのってなんか変だね」
「俺はもう魔王じゃない、鋼のリュウジだ」
「そうだね、もうキミ…魔王じゃないんだもんね」
俺は投げやり気味になり、そのまま外にあるベンチに腰掛けた。
「あーあ、ずっと前からバレてたんならさっさと正体バラしとけば良かったわ」
「バレてないと思ってた方が逆にすごいと思うよ?」
「完璧な変装だったと思ったんだけどなぁ……まぁ、でもなんだかんだで楽しかったけどな?」
「そうだね!んじゃ、そんな頑張ったキミにご褒美上げないとね?」
そう言うとクリスはベンチに座っている俺の隣に座り、囁く。
「ここなら見えないから大丈夫かな?目を瞑ってくれる?」
「はぁ?なんで?、アレか?また頭突きか!?」
「違うよっ!いいから!早く!」
「ひぃっ……!!」
俺は頭を両手で抑えながら目を瞑ると……俺の頬にプルンとした何かが触れた。
だが、何度も経験している俺は何をされたか直ぐに把握して目を開けた。
「んなっ!?お前!」
「あはは!びっくりした?」
「いや?少ししたけど、別に初めてじゃないからな。お子様キッスなんて、ペコリーヌにもされたし?リーンにもされたし?」
「マジでぇ!?なんなのキミまで!?そこまでしてんの!?」
「ほっぺ位で騒ぐんじゃねぇよ、フレンチキスって奴だろ?唇と唇じゃないとした気がしねぇんだよ!」
「はぁ!?されときながらなんなのキミ!?」
「はんっ、お前もアレか?思わせぶりを発揮するクチか?」
そう言い放ち、俺は恥ずかしいのを誤魔化す為にクリスから離れる。
「んじゃ、なに?口にして欲しいの?」
「いや、そう言う訳じゃ……」
「どっち!?したいの?したくないの?」
「しっしたいで、です」
高鳴る鼓動を抑えきれず、俺はキョドる事しか出来なかった。
何これ、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!?えっ!?想像と違うけど、俺、もしかしてほんとにペコリーヌの言う通りクリスの事…好きになってんのかな……?
たけど、クリスはそんな事に気付きもせずに、純粋な気持ちのお礼をとしての行為。けして恋愛感情は全く無い……と思う。
「ほらっ、もうちょいこっち来なよ」
「あぅ……」
「ほら、恥ずかしいから目を瞑って?」
「うっういっす……」
俺は覚悟を決め、目を瞑ると…
チュッ
唇に優しくて柔らかい物が触れた。
「……これでいい?」
「えぇ……雰囲気台無しだなっ!?」
「あのね?キミ、そもそも女神と魔王がキスするだけでもアウトなんだから、雰囲気もないでしょ!」
「そっそうっすよね……はい、すいません……」
「ほらっ!みんなの所に戻ろ」
「うっうん……」
「──それにしても、『人間同士』のキスってこんな感じなのかな?」
「あっ……」
「これなら、ダクネスに負けないよね?」
「まぁ……向こうはおそらく口にはしてないんじゃないか?」
「そうかなぁ?カズマさんはどっちと付き合うんだろうね?」
「知るかっ!」
「あはは!何?照れてるの?可愛いところあるねぇキミは!」
会場に戻る最中、クリスはイタズラをしたようにニカッと笑って俺に振り返る。それを目の当たりにした俺は……自覚した。
どうやら俺は……女神に本気で恋をした様だ。