俺がファイテングポーズを取っていると、後ろから声をかけられた。
「待ってくれ!そこの人!俺たちは敵じゃないんだ!」
「あ?誰だテメェはこっちは襲われてんだぞ?」
「ちょっと!あんた離しなさいよ!天罰下すわよ!」
「はあ?天罰だと?ならお前……女神なのか?」
青い髪の毛をした女は堂々と胸を張って名乗り上げた。
「そう!私は女神!水の女神アクア様よ!さぁ控えなさい!」
ウィズ姐さんはビクビク怯え始めている、どうやらコイツが女神だというのは本当らしいな。っとなると、コイツが今回の騒動の張本人の水の女神アクアか……。
「ふーん、ならそこのお前は……サトウカズマだな?」
「うぇ!?なんで俺の事を!?」
「ここじゃ話せないから詳しい話しは場所を変えようか……申し訳ないんですけど姐さん、1度街に戻りませんか?ちょっとこの2人に話があるんですが?」
「あっはい、良いですよ?」
カズマー!
カズマー!無事かー?
サトウカズマと水の女神アクアの後ろから他のにも声が聞こえて来た。
なんだ?他にも仲間が居たのか?
サトウカズマの後ろからは、赤いワンピースにトンガリ帽子、黒のローブ、黒髪のショートカットで前髪パッツン、そして特徴的な紅い瞳を輝かせていた。
「カズマ?どうしたのですか?」
「えーっと、とりあえず初めまして、俺の名前はリュウジと言います、貴方のお名前は?」
黒髪の女の子はバッ!と構えて名乗り上げた、ポーズをとる意味があるのだろうか……?
「我が名めぐみん!アークウィザードを生業とし、紅魔族随一の爆裂魔法を操りしもの!」
あー、はいはい……なんとなく分かったけど……アレだ、厨二病をこじらせてる子だな……。
「あっはい、どーも……よろしくお願いします」
「あの、普通に返されると私もどうしたら良いのか分からなくなるのでやめてください……」
めぐみんと名乗った後ろから見覚えのある奴が現れた。
「アクアがなにやら揉めて……あぁ!?」
ダクネスは俺に指を刺して騒ぎ出し、それに対して俺は頭を下げた。
「あはは……ダクネス、この前はどーも……」
「なんだ?ダクネスとあんたは知り合いなのか?」
「少し前に、スキルを教わったんだ、まだ習得してないけどな……」
「あら?そうなの?なら敵じゃないのね?けど、このリッチーは見過ごせないわ!さぁ!そこになおりなさい!」
「おい、それ以上ウィズ姐さんに近付くと例え女だろうとぶん殴るぞ?」
ウィズが慌てて俺の背中回ってアクアから隠れた。
コンニャロー、これ以上人の恩人いじめるんじゃねぇよ
「何よあんた!アンデッドの味方になるっていうの!?あんたまでアンデッドが伝染るわよ!?」
「やかましいわ!それよりお前らはなんでここに来たんだよ?」
「えーっと、リュウジって呼べば良いのか?俺達はゾンビメーカーの討伐に来たんだ」
ゾンビメーカー?
(マリュー、ゾンビメーカーってなんだ?)
《ゾンビメーカーはその名の通り、ゾンビを操るモンスターですね、ゾンビの上位のモンスターと言えばわかりやすいかと》
なるほどな、そいつと間違えてウィズ姐さんを襲ったって事か……。ならゾンビメーカーを倒せば大人しく帰ってくれるって事か
リュウジはカズマに1つ提案をした。
「よし、ゾンビメーカーの討伐手伝ってやるよ」
「え?良いのか?」
「ああ、その代わりウィズ姐さんには手を出さないでくれ」
「そう……だな、悪い人には見えないからな、分かった!」
カズマと協定を結ぶとアクアが騒ぎ始めた。
「ちょっとちょっと!カズマ!?なんでよぉぉぉ!こんなリッチーを見逃すなんて!リュウジって言ったわね?そこを退きなさい!さもないと近接格闘スキルを持つ私のゴッドブローが炸裂するわよ!?」
近接格闘スキルだと!?そんなスキルもあるのか……くくく……コイツは使えそうだな……。ちょっと煽って見るか
「はっ?、女神だか、なんだか知らねぇが怖くねぇな?ほら打ってこいよ?」
俺は右手をクイクイと動かしたアクアを煽った。アクアはまんまと挑発に乗って手をゴキゴキ鳴らせた。
「言ったわねぇぇ!食らいなさい!ゴッドブロォォォォ!【ゴッドブロー】とは女神の怒りと悲しみの必殺の拳!相手は死ぬ!」」
なんだその単純な説明!?これで教わる事が出来るのか!?手がめっちゃ光ってるが受けても大丈夫か!?ってか俺レベル10だけど痛くないかな……?
俺は恐る恐るガードを固めてゴッドブローを受け止めようとした。
ゴンッ!
あ……あれ?……痛くないんだけど……?
アクアは冷や汗をかいたまま俺に言い放った。
「すっ素敵な鎧ですね……まるでデュラハンの様です……よ?」
「それ褒めてねぇから!俺は人間だから!」
「まぁ、近接格闘スキルとゴッドブローがカードに出たから良いけど、なぁ?そろそろゾンビメーカー倒しに行かないか?」
「そっそうだな……行くぞアクア」
「わぁぁぁぁぁぁぁん!私の必殺技取らないでよぉぉぉ!存在意義が無くなるじゃないのぉぉぉぉ!!」
夜の墓場で泣き喚く水の女神。
俺はとりあえずカズマのチームの編成を1人ずつ聞いてみた。
「えーっと、カズマのクラスと得意技は?」
「俺は冒険者、得意技は……『スティール』しかない……」
ポロリと涙を流すカズマ……。
ごめん、聞かなきゃ良かったな。
「次は紅魔族のめぐみんちゃん?アークウィザードで得意技は?」
「めぐみんで良いですよ?私は爆裂魔法のみです!」
「へぇ、アークウィザードか…爆裂魔法を何発撃てるの?」
「いっ1発です……」
ごめん、俺がやってたゲームの世界で言うなら君は二軍行きだ。
チラッと俺はダクネスを見つめた。
「ダクネスは……いいか、良し!カズマ、姐さん、行きましょう!」
「ちょっとちょっと私にも聞きなさいよ!」
「おっおい!なぜ私には聞いてくれないんだ!?放置……くっ!」
「めんどくさいなぁ……んじゃアクアは?」
「ふん!聞いて驚きなさい!私はアークプリーストなのよ!」
「ほぅ、アークプリーストなのか、それで?得意技は?」
「花鳥風月でしょ?宴会芸でしょ?回復支援は」
すいません、宴会芸ってなんですか?
俺は真面目な顔をしてアクアを説教した。
「本当にあなたが女神で神聖なアークプリーストならまず回復支援と言うべきではないでしょうか?なんですか宴会芸とは?あなたは何しにここに来たんですか?」
「え?あれ?……えーっと…はい…ごっ……ごめんなさい……」
「それこそ女神の器の底が知られてしまいますよ?周りから女神と呼ばれたいなら身の程を弁えて──」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
異世界の元魔王に説教されて泣かされる水の女神と呼ばれる女は墓石にすがり泣き始めた。
カズマが苦労するわけだな。
「そんで?ゾンビメーカーはどこにいるんだ?」
「えーっと……あっいた!アレだ!」
カズマが指を指す方向にボロボロのローブを纏い、手にはハンドベルの様な物を持ったゾンビがいた。
「雑魚は俺に任せてくれ、ゾンビメーカーは…アクアとカズマ、頼んだぞ?」
「おう!任せとけ!オラ!アクア出番だぞ!」
「グズッ……かじゅまぁぁ〜あだじ……がんばる……」
カズマ達はゾンビメーカーに攻撃を始めた。
ウィズ姐さんさえ無事ならいいか、よし、俺はその取り巻きのゾンビを片付けますか。
「姐さん、待ってて下さいね?」
「あっはい!気を付けて!」
「おりゃぁぁぁぁぁぁ!」
どちゃ!グチャ!
※モザイク処理を行っております
俺は取り巻きのゾンビを殴り倒した。俺はゾンビを片付けたが……返り血を浴びて悪臭を漂わせていた。
「くっさ!」
「あの……リュウジさん?ゾンビ相手に素手はちょっと……」
ウィズは鼻をつまんだ状態で説明した。
「はい……学習しました……」
《おいたわしや……リュウジ様……》
《もう帰りたいです……》
────────────────────────
その後リ俺はゾンビメーカーを倒して来たカズマ達と合流した。案の定カズマ達にも「くっさ!」と言われた。
この2人に色々話す状態じゃないな、別の日にするか。
その後、俺は翌朝のクエストの約束を取り付けてウィズを店まで送り、共同浴場で鎧の汚れを落としてから拠点の宿に戻って部屋で寛いでいた。
「はぁ……くたびれたぁ……これなら今夜はぐっすり寝れそうだ」
《それはそれで良かったですね》
コンコン
部屋のドアがノックされた。
こんな夜中に誰だよ……まったく
「はーい……」
ガチャ!とドアを開けたら、そこには頬をポリポリかきながら半笑いでクリスが立っていた。
「なんだ、クリスじゃねぇか、どうした?」
「あはは……こっこんばんは……あのさ…お願いがあるんだけど……?」
「うん」
クリスはごもごもと言いずらそうに口を開いた。
「こっこっこっこっ……」
「コッコッコッ?」
そして、顔を赤らめながらクリスは意を決して言い放った。
「今晩泊めて下さ──」
バン!カチャ!
俺は思い切りドアを閉めて鍵をかけた。するとドアの向こうからクリスが大声を出しながらドアを叩いて叫んでいた。
ドンドンドンドンドンドン
お願いだよぉぉぉぉ!開けてよぉぉぉぉ!手持ちのお金がないんだよぉぉぉ!泊めてよぉぉぉ!
「何してんだよアイツは……」
《リュウジ様!クリス様が困っておりますよ!?》
「勘弁してよ、ベッドだって1つしか無いのにさ……」
《リュウジ様!若い女の子がこんな夜中に放ってくなんて犬畜生以下ですよ!それでも魔王ですか!?》
「いやいやおかしいから、魔王と女神が同じ部屋に泊めちゃダメだろ!?なんかこう……ファンタジー的なルールとかさ!あるじゃん!?普通は魔王と女神って争うもんじゃん!?それに俺の財布事情もあって宿代だってそんなに余裕ないんだからな!?」
《ならこういうのはどうですか?”恩を売って借りを作っておく”という事ならメリットありますよ?》
「そりゃそうだけど……」
ドンドンドンドンドンドンドンドン!
開けてよぉぉぉぉ!リュウジィィィィ!!もう解錠スキルでドア開けちゃうよ!?いいのぉ!?
《リュウジ様……開けて上げましょうよ……不憫過ぎますって……私は同じ女子として助けるべきだと思います!》
(ドラゴンの癖に何言ってんだか…、そんなの分かってる、けどな?……人間に戻った男の俺は色々大変なんだよ……最近アレなんだって……朝勃ちが……もういいや……諦めよう)
「もう……分かったよ……」
根負けした俺はドアを開けるとぐしゃぐしゃの顔をしたクリスを部屋に招き入れた。
女神のくせになんちゅう顔をしてんだよ
「ほら……入れよ……」
「ゔん……ごめん」
「一体何があったんだ?しっかり者のお前が有り金全部無くなるなんて」
「じづは……接触する為にカズマに昼頃『スティール』を教えたの」
「カズマに?ああ、俺もさっきまで一緒だったぞ?スティールって相手の物を盗むスキルだろ?それで?有り金全部とスティールとどう言う原因が?有り金全部スティールされたのか?」
クリスはブンブン顔を横に振った。
「んじゃ何を盗まれたんだ?」
クリスは顔を赤らめながら答えた
「あっあたしの……パッパッ……パ……ンツ」
「はぁ?パンツってレア度高いのか?」
「高い訳ないでしょ!!」
「それで?有り金全部とパンツでどう言う関係が?」
「カズマさんがパンツ返してくれないから有り金全部渡して返して貰った…」
「プーーーーーーーwww!!」
俺は口を抑えながらジタバタともがきながら爆笑した。
パンツ取られたとかマジダッセェんだけど!!
クリスは顔を赤くしながらプリプリ怒り始めた。
「笑わないでよぉぉぉ!女の子にとっては死活問題なんだからね!?」
「なるほどな、カズマにとっては価値があるんだろうな」
「恥ずかしくて死にそうだよ!」
「仕方ねぇな……1つ貸しね?」
「うー……分かった……」
「あっそうそう、質問していいか?」
「ん?何?」
「この世界ではモンスターの命を奪ったり食べたりしてもレベルが上がるんだろ?」
「うん、そうだよ?」
「俺のこの忌々しい幸運値も上がるのか?」
「うん、上がるよ?リュウジ今レベルいくつなの?」
俺はクリスに冒険者カードを見せた。レベルが13に上がっていて幸運値が-38になっていた。
「ほら、ステータス見てみな?幸運値上がって来てるでしょ?」
「うん、お前の事だから何か仕掛けてるんじゃないかと思ってな?」
「そこまでしないよ!?」
「そっそうか……はぁ……果てしないなマイナスから0にするの……」
俺はベッドに横たわって項垂れ始め、クリスに最終確認を始めた。
「ってかさ……ベッド1つしか無いんだけど……どうすんの?」
「うっうん……」
「はぁ……しゃねぇーなぁ……ベッド使っていいよ」
「え?良いの?」
「うん、どーせ寝れなそうだからな……色んな意味で」
「うーん、離れて寝れば大丈夫……かな?」
「いやいいから、魔王と女神の問題とかじゃなくて男と女が同じベッドに寝るとか有り得ないから!俺の事嫌いなんでしょ?」
「うーん……あっ!いい事思い付いた!」
クリスはポンと手を叩いて言い放った。
「交換で寝れば良いんだよ!見張り合えば問題ないでしょ!?」
「どっからそんな発想出てくんだよ、けどまぁ……それしか方法はねぇか……今から別の部屋なんて取れないだろうからな……」
「んじゃそうしよう!」
「先に寝て良いぞ?俺は1杯引っ掛けるから……」
「ん?お酒飲むの?あたしも付き合おうか?」
「いきなり部屋に押し掛けておいて挙句の果てに酒まで強請るのか!?この強欲女神!!」
「いいじゃん!ちょっとぐらい!」
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その後、買い置きして置いた酒を2人で全て飲みきってしまった。
「あっやべっ、もうしゃけない……」
「えーもうらいの?」
「くそっひゃれ、おめーのへいでひゃけにゃくなったじゃれーか!」
「りゅーじのけちぃ、おひゃけくらいなにひゃ!もういいれす!ひゃきにねりゅから!」
呂律の回らない状態でクリスはベッドに倒れ込んだ。
「あーくひょ、べっろとられらー」
《リュウジ様!いくら何でも飲みすぎですよ!》
「くやしーおれもべっろにねりゅ!!」
俺はフラフラしながらクリスをベッドの奥に転がして倒れ込んだ。