俺達4人はそのままアクシズ教団の教会に殴り込みに行くことになった。聞けばカズマとダクネスら激しい勧誘を受けてダクネスはエリス教のメダルをこれみよがしにぶら下げていた為に、激しい嫌がらせも受けていた様だ。カズマは遂にノイローゼになり、今に至る。
「オラァァ!責任者出て来い!」
「おんどりゃ子供にまで勧誘させるとはどういうこった!?」
俺とカズマは教会の扉を同時に蹴破り、怒鳴り込んだ。
「あらあら、どうなさいました?入信ですか?洗礼ですか?それとも……わ……た……し?」
教会の中はがらんとしており、掃除をしていた女性信者しかいなかった。俺とカズマは女性信者に気を許し、声を和らげる。
「あっいや……私って……」
「可愛い顔してるからってからかうんじゃねぇよ……」
俺とカズマが顔を赤らめて言い放つと女性信者は笑い始めて言い放つ。
「ちょっと何言ってるか分からないですね、冗談なのに。初対面の人に何ときめいてるんですか?頭おかしいんじゃないですか?」
ヤバい、少しだけ魔王に戻ってこの教会を燃やしてやりたい。
「まぁいいや、ここに魔法使いの女の子、水色の髪のアークプリーストに猫の獣人の女の子が来ただろ?俺達の連れなんだけど?」
「あら、その方々でしたら、3人とも奥におりますよ?」
こんな所の奥で何やってんだろう。
女性信者が首を傾げた。
「ところで、あちらのお連れの方、あそこで子供達に石を投げられている、あの女性は放って置いて良いのですか?」
「「えっ?」」
俺とカズマは玄関先を見てみると、ダクネスが子供達に囲まれ石を投げられ、頭を抱えてしゃがみ込んでいた。必死にウィズが守ろうとしているが、石の集中砲火を浴びていた。
「あっ!コラァ!このクソガキ共!何やってんだ!」
「コンチキショー!あっち行け!しっしっ!」
「リュウジさん、この子達がダクネスさんに石を……」
慌てて子供達をお払うと。
「カズマ、リュウジ、この街は色々とレベル高いな……女子供まで……とても体が持ちそうにないのだが……」
「そう言ってるけど、顔がすんごいことになってるよ?」
「もうそのエリス教団のメダル仕舞っておけよ!」
「断る」
めんどくせぇ!
虐められて興奮しているエリス教徒もといエリスの親友を連れ戻し、俺達は再び教会内に戻る。先程の女信者は教会の中にある懺悔室の様な小屋に視線を向けた。恐らくそこにアクアが居るのだろう。
「カズマ、俺はダクネスとウィズを連れてキャルとめぐみんの所に行ってくる。そこにいるアクアを頼んだぞ?」
「ああ、分かった」
そう言って俺は教会の奥へと向かうと、掃除をしていた女性の隣を邪魔しないように通過しようとした瞬間、集められたゴミがほうきで撒き散らされた。睨みつける俺、びっくりしたウィズ、頬を染めるダクネス。
「あらごめんなさいね?エリス教のメダルが見えたので、ゴミと間違えててしまいました」
「へ〜、ゴミねぇ……ゴミってお前のことだろ?」
掃除をしていた女性にズイと近付き、思い切り睨みつけた。ダクネスとウィズは慌てて俺を引き止める。
「おっおい!?よせっ!私は気にしてない!寧ろおかわりだ!」
「リュウジさん!?怒っちゃダメですよ!?」
「謝れ、まず人に向けてゴミ飛ばすな」
「はっはい、ごっごめんなさい……」
掃除をしていた女性信者は半べそをかいたがお構い無しに俺はキャルとめぐみんを探した。辺りを見渡すと、めぐみんとキャルが隅に座って小刻みに震えていた。
「キャル、めぐみん!?大丈夫かっ!?ほんの2〜3時間で何があったんだよ!?」
「あんた……来てくれたの……」
(ぬかったわ……コイツに助けられるなんて……)
「ダクネスとウィズも来てくれたのですか……」
ウィズは俺がキャルを慰めていると、俺に尋ねて来た。
「リュウジさん、この方は?」
「あっそう言えば、ウィズとキャルは初めましてだったね、この子は最近保護したアークウィザードのキャルって言うんだ。キャル、この人はマジックショップを営んでるウィズ、お前やめぐみんと同じアークウィザードだ」
「あっ……ども……」
「初めまして!キャルさんとお呼びしますね?めぐみんさん、キャルさん大丈夫ですか?」
ウィズの言葉に2人はガクガク震え始めた。
「いや……もういや……こんな所いたくない、帰りたい」
「ここは魔界です、早く帰りませんか?ここから早く出たいです」
魔界がこんなんだったら俺を含めて魔王達は馬鹿ばっかりだよ!
「もしかして2人ともめちゃくちゃな勧誘受けたのか?」
「勧誘?アレ、勧誘なのかしら……?」
「ひいっ……勧誘コワイ勧誘コワイ……」
ダメだ、すっかり怯えちゃってるよ…2人揃ってパンツ丸見えなのに隠しもしないし、それほど参ってる様だな……。
立ち上がらせる時に2人の服を見ると、めぐみんとキャルのポケットやフードには入信書の紙がこれでもかとねじ込まれていた。それを見た瞬間、2人に何が起こったのか悟った。そのままめぐみん達を連れて、カズマ達に合流した。アクアも懺悔室からようやく出てきたのか、カズマと一緒に女性信者と話をしていた。
「おーい、めぐみんとキャルを保護したぞー?」
「ご苦労さま、こっちもアクアを捕獲したぞ」
「ほんじゃ、宿に帰るとするか」
「アークプリースト様、もうお帰りですか?でしたら、当教会自慢の温泉に入って行きませんか?」
先程俺とカズマをバカにした女性信者がアクアを引き留める。
「あら、悪くないわねぇ。皆はどうする?一緒に入ってく?」
「私は早く帰りたいです。”久しぶり”にここに来ましたけど、やっぱり慣れません。帰ってゆっくりしたいです。ちょむすけも怖がってますし」
「あたしも帰りたいわ……もう……何もしたくないのよ」
「私もちょっとここから出たいですね……なんか気分が悪くて……」
「私も、他のアクシズ教徒が戻って来たら何をされるか分からん、このまま帰るとしよう、今日はもう満足したからな」
めぐみん、キャル、ウィズ、ダクネスがそんな事を言いながら俺とカズマをジッと見つめてくる。
俺も帰りたいしね……
「みんな帰るなら俺も───」
「ここって混浴ですか?」
うおぉい!?
「神聖な教会で不埒なことを言うと、アクア様のバチが当たりますよ?」
「おい、やってみろよ!今すぐやってみ──ふぐっ!」
「すいません、お邪魔しました〜」
俺はカズマの口を抑え、羽交い締めにしながら教会を後にした。
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宿に帰ると、ミツルギが体をほこほこさせており、リッチなバスローブ姿で寛いでいた。
「やぁ!戻ってきたのかい?先にお風呂に行かせてもらったよ!」
「なんだミツルギ、もう入ったのか?」
「男のバスローブ姿見たって嬉しかねぇ」
カズマは男部屋に戻ってくるなり、ソワソワし始める。
何してんだ?
「何ソワソワしてんだよ」
「馬鹿野郎、ここは温泉だぞ?温泉と言えば混浴か覗きだろぅが!」
「ふっ、これだからヒキニートは困るぜ」
俺は鼻で笑いながらカズマをバカにした。カズマは何だと!?という顔をしながら俺に食ってかかる。
「アオハル野郎に引きこもり人生だった俺の何が分かる!?」
「まぁ待て待て、いいか?覗くたって今の時間帯に行っても明るいし、目立つ。正面突破したって女性陣にボコボコにされるのがオチだ」
「詳しく」
「お前ら!まさかアクア様の女体を覗こうと言うのか!?」
あんなのどうでもいい
俺は街を歩き回って宿の周りの立地条件を全て把握しており、今回の為にわざわざアルカンレティアの地図を買ったおいた。高校の修学旅行の時の経験を活かす時が来たのだ!
テーブルに地図を広げ、
「いいか?今俺たちが居るのはここ、そして俺がウィズと散策してる時、辺りを見渡したらこの宿の露天風呂を覗けるのは……ここだ!」
ビシッと指を指した場所は何も無い山岳地点だった。
「ここか……けど隠れる場所がないぞ?」
「ああ、だがここなら丸見えだ千里眼を使えばな。夕暮れになれば逆光になるから見つかりにくい場所なんだよ」
「ゴクリ……」
「やっやめないかっ!覗きは立派な犯罪なんだぞ!?」
ミツルギは頬を染めながら地図を取り上げようとする。俺は地図を奪われまいと抑えた。
もう一押しだな。ミツルギの言う通り、確かにその辺のギャグ漫画のようには行かない、コレは現実……捕まったら社会的に抹殺される。だからこそ念入りに作戦を立てなくては……。
俺とカズマはミツルギの説得を始める。
「え?ミツルギ行かないの?」
「え?」
「お前だってホントはアクアの体が見たいんだろ?」
「う……」
「ゆんゆんやメリッサには黙って置いてやるから」
「おお……う〜ん」
トドメだ!
「アクアのマン〇はさぞかし綺麗だろ──」
「行く」
悪魔の囁きによりミツルギは覚悟を決めた様な顔をしていた。その顔はまるで強敵と戦う様な真剣な眼差しだった。そして、俺とカズマはアリバイ工作と下見の為に怪しまれないように一度風呂に入りに行くことになった。俺とカズマは露天風呂の入り口に差し掛かり、考え込んだ。
「えーっと……狙撃地点は混浴の方なら見えるはずだ」
「そうだな……ごめっ、ちょっとトイレ行ってくる」
「ったく、風呂入る前にトイレとか子供かよ……はいはい、先に行ってるからな?」
覗き作戦にビビったのか、カズマは風呂に入る前にトイレに向かって行った。その間に俺は混浴の扉を開けて入っていくと……。
「あっ……ごめんなさい、今着替えてるの」
俺の目の前には、赤い髪のショートカットでとんがり耳、額には赤いホクロの様な物が付いていた。それにナイスバディ、俺の目の前でそんな女性が着替えていた。裸の女性は慌てて陰に隠れた。
「こっこっちこそごめんなさい!失礼しました!」
俺は慌てて扉を閉めると、カズマが後ろに立っていた。
「何してんだよ、早く入れ──ってなんだその顔!?」
「久しぶりに見た……」
「まさか……見えたのか!?」
「バッチリ見えた……」
カズマが目にしたのは、俺の鼻穴2つの両方から大量の血を流している所だった。カズマに鼻を抑えてもらっていると、先程の女性が出てきた。俺を見た途端驚きながら尋ねてくる。
「あっあの……大丈夫ですか!?」
「だっだいじょうぶです……お構いなく……」
「驚かせちゃってすいません、コイツなら大丈夫ですから」
「そっそう?なら私はもう行くから……あっそうそう、明日からお風呂に入るのは……控えた方がいいわよ?せっかくいい温泉街だったのにまた湯治する場所探さなくちゃ……」
「え?」
「ふぇ?」
赤い髪の女性は意味深な事を言い残し、そそくさと立ち去って行った。女性を見送った後に俺の鼻血が止まり、仕切り直して混浴風呂に入った。着替えの籠には男性用の着替えのみしかなかった。
「ちっ、他に女はいねぇか……」
「まぁそうそう来ねぇだろ、さっきの人……めちゃくちゃ美人だったなぁ、冒険者だったら是非とも俺のチームに入って欲しいわ……」
「お頭にウィズにペコリーヌ、マリュー、優秀な人ばっかじゃねぇか」
「そう言うお前のチームだって優秀だろ?」
服を脱ぎながら他愛のない話をしていると、俺の言葉にカズマがピタッと止まり、プルプル震え出した。
「俺のパーティーが優秀?……そんな片鱗、一度も、見た事が、ないんだが!?」
「なんか……ゴメンな……うん、ゴメン」
そして、体を洗い、温泉に浸かると……奥から男が歩いて来た。男は不思議な事に濡れておらず、何やらブツブツと呟いていた。
「忌々しいこの教団もこれで終わりだ。秘湯での破壊工作も終わった……こんな魔境……滅んでしまえばいい……。まったく人が下手に出てりゃ、やれ入信だ、やれ勧誘だ、なんだかんだなんだかんだ言いやがって……くそっ!ああああっー!!」
うおっ!ビックリした!
男は急に奇声を上げながら石鹸を床に叩きつけた。俺達は急な事にビックリして、ビクッとなった。石鹸を叩きつけた男はそのままフラフラと脱衣場に入って行った。
「びっくりした〜、なんだ今の人……」
「勧誘がどうとか言ってたけど、あの人も……」
「滅べばいいってまぁ、そう言いたくもなるよな」
「さて……そろそろアクア達が来る頃だ、配置に着こう」
「おうよ、兄弟……へへへ」
身を清めた俺達はアクア達が来る前にそそくさと着替え、ミツルギを連れて目的の山岳地点に向かった。険しい山道だったが、丁度窪みがあり、そこに3人並んでその時を待った。ここから女風呂まで約100メートル位だろう、俺達の千里眼なら十分覗ける。そして数分後、千里眼で女風呂を覗いて見てみるとダクネスとめぐみんが入って来た。
「カズマ!来たっ!来たぞん!」
「落ち着けリュウジ!くそっ!まだタオル巻いてやがる……」
「なんでボクだけ双眼鏡なんだ……」
「おい、アクアとウィズとキャルはどーした!?」
「恐らくまだ服を脱いでるんだろう、大人しく待っていようぜ」
「アクア様……アクア様……」
大人しく待っていると、遂に女風呂に現れた。現れたのは、キャルとアクアだけだった。俺はギョロ目をしながらウィズを探す。
あれ!?ウィズはどうした!?
「ウィズがいない……どこだ!?」
「アレだろ、アクアが浄化するからだろ?」
「嘘だろ!?んだよっ!ウィズの女体が見たかったのに!!」
「うほぉ……めぐみんがダクネスのタオルを剥がし始めたぞ!?」
「いいぞもっとやれ!」
「おお……2人ともいい体してるじゃないか……」
「ちょまって、めぐみんパイ〇ンじゃね!?」
「マジか!?キャルもじゃね!?」
「アクア様の胸が……美しい……」
ウホウホ言いながら眺めていると、視線を感じ取ったのかアクアが急に立ち上がり、仁王立ちしながら遠くを見るように手で目をこらしながらこちらを見始めた。
いやいや、100メートル離れてるんだ。いくらアクアでも見える訳
「─────!!────!!」
アクアは俺達の方を指を指し、何か騒ぎ始めた。何故か段々カズマの顔色が悪くなっていく。
「しまった、バレた!」
「はぁ!?嘘だろ!?100メートルは離れてんだぞ!?」
「なっなんで!?」
カズマ曰くアクアは『くもりなきまなこ』で例え暗がりだろうが小さいものだろうが大抵のものは見えているらしい。カズマは『読唇術』スキルを覚えていたらしく、アクアの喋っている言葉が分かった様だ。
「不味い!めぐみんとキャルの魔法を使って俺らをふっ飛ばす気だ!」
「マジかよ!?逃げるぞ!!」
「キャルちゃんとめぐみんちゃんの顔が…ものすごく怒ってるぞ!!」
慌てて俺達は逃げようとしたその時、紫色の魔法陣と赤い魔法陣が現れた。彼女らは明らかに俺達を殺す気で来ている。
ヤバいヤバいヤバい!!
山道の下り道を全速力で走ったが、『エクスプロージョン』と『アビスバースト』が放たれ、俺達は爆風に巻き込まれた。
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「で?あんな所で何してたのかしら?」
「最低ですね、あの時3人の事を褒めていたのに」
「あんな所で堂々と覗きとは、いい度胸だな」
「あんたら……とことんクズね」
(こんなやつらホントに監視する意味あるのかしら……)
ボロボロの状態の俺達はあえなく捕まり仁王立ちをしたアクア、めぐみん、ダクネス、キャルに囲まれながら正座して説教をされていた。ウィズはと言うと、とても悲しそうな目をしながら俺を見つめていた。
やべぇ、かなりやべぇ……犯罪者を出さないと言っときながら自分が今まさに犯罪者になろうとしている!考えろ!考えろ!俺!
「やっ山を……見てました」
「おっ俺は……野草を取りに」
「ボッボクは…山登りに……」
アクアは呆れた様子で俺達3人をゴミを見る様な目で見つめ、さらに尋ねて来た。
「へぇ~、山を?山に居たのに山を見てたの?。ねぇ?もう少しマシな言い訳無いのかしら?クズニート、クズ鉄、クズ魔剣」
「アクセルの街に帰り次第、ゆんゆんやペコリーヌに報告しますからね?首を洗って覚悟しておいた方が良いですよ?クズマは私達がキツく言いますし、屑鉄のリュウジはクリスにでも怒られればいいんです。クズルギはゆんゆんより、メリッサに頼みましょうかね?」
アクアとめぐみんの冷めた態度に俺達はガクガク震え始める。
ヤバい!マジでヤバい!
俺達は言い逃れ出来ないと考え、同時に土下座を試みた。
「本当にごめんなさい……お前らを見てたらつい……魔が差しました」
「すいませんでした……」
「警察だけは……社会的抹殺だけは勘弁して下さい」
アクア達は怒りを通り越して呆れ始め、アクアはトドメに俺達に言い放つ。
「まぁカズマはともかく2人は初犯だし、この位にしといて上げるわ。けど、罰として、あなた達3人は今夜の晩御飯抜きと明日の外出を禁止します」
「部屋から1歩も出ては行けません」
「アクア、めぐみん、流石に部屋は可哀想だ。せめて温泉くらいは許してやろう」
「フンッ……次やったらぶっ殺すわよ?良いわね!?」
「「「はい」」」
そう言い残し、アクア達はウィズを連れて女部屋に戻って行った。バタンと扉が閉まると同時に俺達は口を開く。
「戦いには負けたが……」
「勝負には勝ったな……」
「ボクは何処で道を間違えたのだろう……」
「今夜は飲もうぜ……」
俺達は説教の後なのに性懲りも無く酒盛りを始めた。