スノークリス、チエルが当たってテンションあがってます!
それから俺達は、わざわざ宿に戻るのに遠回りにして帰ると、そこにはぐったりと横たわるキャルと泣き叫ぶアクアがいた。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!わぁぁぁぁぁぁぁ!」
「殺して…もう一思いに殺して……」
大変だ、キャルの目が死んでるし、アクアもアクアで泣き止まない。
「ア、アクア様?、キャルさん、温かいミルクです。これを飲んで落ち着いて下さい……」
女性陣が借りていた部屋のど真ん中で泣き喚いているアクアと体育座りをしてブツブツ呟いているキャルをウィズが慰めていた。隣には、傷だらけなのにも関わらず、何故か誇らしげのミツルギと、艶々しているダクネスが紅茶を飲んでいた。
メンバーチェンジを考えないと行けないかも知れない…。むしろコイツら置いて帰りたい。
「あんまりよぉぉ!わだじ、頑張ってるのにぃ!街の為に頑張ってるのにぃ!どうして自分の教団の信者の子達に石投げられなきゃ行けないの!?わぁぁぁぁぁぁぁ!」
「アクア様!?落ち着いて下さい!でないとアクア様の涙で薄くなっちゃうんですが!?」
薄くなりながらもウィズはホットミルクを差し出した。
だが、アクアとキャルは…。
「………お酒がいい……」
「あたしも、お酒お願い……飲んで忘れたいの……何もかも……」
「トラウマを抱えたキャルはともかく、お前大してダメージねぇだろ」
「私、お酒貰って来ますね!」
ウィズがそう言ってそそくさと、酒をもらいに行くと、アクアが目を真っ赤にしながら顔を上げた。
「とにかく何にしても、なんらかの方法で温泉を汚染しているのは間違えないわ。演説前に回った温泉のいくつかは、かなり汚染されてたの。あんな温泉に入ったら病気になっちゃう……」
「アークプリーストとしての腕だけは確かなアクアがそこまで言うなら本当なのか?、だが、犯人を特定しなければどうにも……」
ダクネスの言う通り、犯人が分からなければどうしようもない…。俺の見立てだが、俺やカズマが混浴温泉で出会った男が恐らく犯人だろう…。
「ならアクア、明日から本格的に調べよう。俺は1人で良いから他のみんなはまとまって調べて見てくれ」
「俺も協力してやるよ。その代わり、戦闘になる様な事はしないからな?犯人を特定して、ギルドに報告する。リュウジもそれでいいか?」
「ああ、これ以上犠牲者は出したくないからな。ミツルギ、お前もそれで良いだろ?」
「ああ!大丈夫だ」
俺達3人の言葉に、アクアが顔を輝かせた。
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翌日、本格的に調査をする為に、連絡係りとしてウィズには宿で待機してもらい、他のメンバーで調べる事にした。俺は単独で混浴温泉で見た男を探し始めた。
さて…まずは、聞き込みだな。原点に帰って足で稼ぎながら情報を集めるか、これだけ密集してるんだ、必ずあの男を見ている筈だ。
俺はあちこちの宿に聞き込みをして、『浅黒い肌、茶色短髪で筋肉質、背が高めの男』が温泉に入って来ていないか尋ねると、口を揃えて『水色の髪をした自称女神と名乗る女』が来て、温泉をお湯に変えられたと言い放つ。
あっあれ?、もしかして真犯人はアクアなのだろうか……。
ブツブツそう考えながら公園のベンチに座って休憩していると、キャルが少し離れて座ってネコを眺めていた。
「あれ?キャル、どうしてここにいるんだ?」
「あー、あんたか…どこいっても勧誘勧誘よ、だからここで休んでたのよ」
キャルは死んだ魚のような目をしながらネコを撫でる。
ノイローゼがまだ後を引いてるのか…。
「こんな所で座り込んでいるとアクシズ教の奴らが──」
「あーんら!いい天気!これもアクア様の思し召しかしらぁ!」
来た!
「それはそうとこの鍋ね、焦げないの!今ならアクシズ教に入信すると必ず貰えるの!」
どこからともなくアクシズ教の教徒と思われるおばさんが目を不気味に光らせながら何故か鍋を持って勧めてくる。俺とキャルは早歩きになりながらもその場を立ち去ろうとしたその時、他のアクシズ教徒の男女がタオルと石鹸を持って併走してくる。
「あーら、仲良くお散歩ですか?お兄さんにはコレを」
「ネコの獣人のお姉さんにはコレを!」
「今ならもれなく両方セットでもう1つ付いて来るんです!」
耳を塞ぎながら早歩きを強めると、タオルを持った男のアクシズ教徒が不気味に目を光らせながら俺を掴んで騒ぎ出した。それを見たキャルはものすごく怯え始める。
「ちょっとぉぉぉ!話を聞いてますか!?ちゃんと私の目を見て下さい!お母さんに目を見てお話ししなさいと教えられませんでしたか!?あなたの為!あなたの為なんですよぉぉぉぉぉぉ!」
あぁぁぁぁぁぁぁぁ!
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俺は聞き込みを一旦諦め、キャルと共に早々と宿に逃げ帰って来た。部屋に帰ってくるなり、キャルはソファーに項垂れた。
「もういや……アクセルの街に帰りたい……」
「キャルさん大丈夫ですか?」
「どうする?テレポートでアクセルの街に先に帰るか?」
「うぅ……」
(どうしよう、正直もう帰りたいけど、コイツの監視もしなきゃ無いし…)
キャルはソファーから体を起こし、気を持ち直した。
「まだ大丈夫よ、あたしの事は良いから早く聞き込みして来なさいよ!」
「あっ、うっ、うん、んじゃもう1回聞き込みに行ってくるわ」
「リュウジさん!気を付けて行ってきて下さいね!」
「うん、んじゃ行ってくる!」
ウィズにGoodポーズをして部屋を後にした。
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※キャル視点※
その数分後、キャルも釣られる様にウィズの制止を振り切って部屋を出てどこかに向かって走り出すとその場所は街を一望出来る場所でもあり、リュウジが歩いている所でもあった。キャルは魔法陣を展開してリュウジに狙いを定める。
「ここならバレずにアイツを狙えるわね…それに……アイツには顔を合わせ辛いしね。────アイツ、しっかりしてるようで結構バカだし、お風呂場を覗くスケベで見ず知らずのあたしを友達見たいに接したりしてさ………」
あたしが、敵だって知ったら…アイツ、どんな顔するかな?めちゃくちゃ怒るだろうな……。
キャルが攻撃を躊躇っていると、後ろから声を掛けられた。
「お困りの様だな、”見習い幹部”のキャル」
「あっあんた……なんであたしの名前を…」
キャルの目の前には、リュウジやカズマが探している男だった。その男は、ヘラヘラと笑いながら言い放つ。
「ダニエルからお前の事を色々聞いてるからな。お前らが泊まっている宿以外の温泉は全て汚染を完了させている」
「なんであたし達の宿は汚染させないのよ?」
キャルがそう訪ねると、男はキャルを睨みつけ怒鳴る。
「生意気言うなよクソガキが、見習いとはいえお前はダニエルやラグクラフトの部下であり俺達の仲間……情けをかけてやってんだよ!有難く思え!」
「ごっごめんなさい…」
「フンッ…まぁいい。俺はこの街の”源泉”に向かって破壊工作の最終段階に入る。お前はさっさとアクセルの街なりエルロードなりにでも帰るんだな!」
そう言い残し、男は何故かアクシズ教団の教会向かって行った。キャルは男の恐ろしさを身にしみて分かったのか、腰を抜かしながら座り込んだ。
(これから汚染が本格的に始まる、山にある源泉から伝って行ってその水源にも汚染が広がって被害が大きくなるわね……)
そう考えながら男が教会に向かうのをただ黙って見つめていた。
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その晩、俺達は帰って来て情報交換をする為に女性陣の部屋にやって来た。話によると、カズマも混浴温泉で見た男を疑っていた様で、アルカンレティアのギルドや警察署に似顔絵を用意して指名手配をしてもらった様だ。アクアはその間に汚染された温泉を浄化させていたらしい。
俺とキャルが勧誘されてる間に、アクアが活躍してるのが驚きだが…まぁいいか。
アクアは様々な情報を繋ぎ合わせて、遂に結論に至った様で俺達に向かって言い放った。
「恐らく、アルカンレティアの源泉が怪しいと思うの!」
「源泉ってアクシズ教団の教会の裏にある山の中だろ?」
「源泉か…確かに、全ての温泉施設に繋がってる源泉を汚染させれば水源にも影響が出て来るからな、可能性はあるな」
「リュウジの言う通りですね、一つ一つ温泉施設を汚染しても効率悪いですからね。そう考えるのが妥当ですね」
「ですが、アクシズ教の皆さんがいる警備の中をかいくぐり、どうやって侵入するかが問題ですよね?」
ウィズの一言により、カズマは腕組をして悩み始める。
源泉か、先に行って調べてみるか。
「皆、俺が先に行って偵察してくるから少し待っててくれ」
そう皆に伝えた俺は急に立ち上がり自分の部屋に戻ってレッドルークを装備して、部屋を出ようとした瞬間、キャルが廊下に立っていた。
「キャル、どうしたんだ?」
「あんた、どこに行こうとしてんの?」
「どこって、アクシズ教教会の裏手の山にある源泉だけど?」
そうキャルに答え、キャルを通り過ぎようとしたその時、キャルに腕を掴まれた。
「待ちなさいよ!」
「なんだよ、まだ何かあんのか?」
少し恥ずかしいそうにボソッとキャルは呟いた。
「きっ…気を付けて行くのよ?」
「おっおう…」
ここに来てノイローゼ気味のキャルがデレた!
キャルと挨拶を交わした後、俺はカズマ達より先に宿の屋根を駆け周り、アクシズ教団の裏手にある山に向かって行った。辿り着い所はゲートで塞がれており、見張りが2人立っており、俺は声を掛けた。
「すいませーん!緊急!緊急事態です!」
「何事ですか!?」
「何があったんですか!?」
「源泉に破壊工作をするという犯行声明がギルドや警察署に届いたそうです!俺はその様子を見てくるクエストを受けここに来ました!ここを通して下さい!」
「何ですって!?分かりました!、どうかお気を付けて!」
「源泉の管理人さんが先程向かわれたので管理人さんをお願いします!」
見張りの人達は鍵を開けてゲートを開き、俺を通してくれた。俺は『スピード・ゲイン』を唱え、山道を走り抜けた。山の頂上に辿り着くと、辺りには街に繋がる太いパイプが張り巡らされており、硫黄の匂いを漂わせていた。辺りを探って見ると、管理人らしき老人が湯けむり漂う源泉に佇んでいた。
あれは管理人の人だろうか、何かをブツブツと呟いていた。
「クククク、バカな連中だ、俺が管理人のジジイに擬態してるのにも気付かず通すなんてな」
なっなんだ…アイツは…。
そう言うと管理人はズルズルと姿を変え始め、次第には混浴温泉で見た男に姿を変えた。俺はそれを見て危うく声を出しそうになってしまった。手をパッパと振りながら何事も無かったかの様に源泉に近付いたその隙に、俺は男に声を掛けた。
「おい」
「貴様は確か…混浴に居た鋼のリュウジだな?」
「へぇ〜、俺の事はリサーチ済か?」
「フンッ 当たり前だ、ベルディアとバニルを葬ったと言われるAdventuresの1人、知らない訳がないだろう?」
ベルディアとバニルだと!?
俺は咄嗟にファイティングポーズをとり、言い放つ。
「ベルディアとバニルを知ってるという事はお前、魔王軍幹部だな!?」
「そうさ、俺の名前はハンス、このアルカンレティアを潰す為に派遣された魔王軍幹部の1人」
魔王軍幹部…ハンス、ウィズに聞いていた情報だと…くそっ、こんな時に思い出せねぇ!!…メモを持ち歩いとけば良かったな。こうなったら様子見で攻撃を仕掛けて見よう。
俺は支援魔法を唱えながら微動だにせずたた立たずんでいるハンスに攻撃を仕掛け、ハンスの左頬に右ストレートを撃ち込んだ。
ズドン!
俺の拳は無防備のハンスの頬にクリーンヒットしたが、ハンスは眉一つ動かす事無く無表情のまま俺の方に向き直した。
「どうした?それがお前の全力か?」
「まだだ!──はぁっ!!」
ハンスの挑発に乗るように俺はハンスの顔にワン・ツー、回し蹴り、ミドルキックを繰り出すが、ハンスには…まったくダメージが無かった。
レベル80を越えてる俺の打撃攻撃が通じない…ならっ!
俺はバックステップして距離を置き、右腕をハンスに向けて様々な雷魔法を乱発しまくった。
「『ライトニング』!!『カースド・ライトニング』!!」
ズドーン!ズドーン!
轟く雷魔法はハンスに何度も直撃し、辺り一面を土煙で充満していた。俺は魔力切れを恐れ、岩石の上に飛び上がってハンスの様子を伺った。
「打撃がダメなら、魔法攻撃だ…少しは効いただろ?」
土煙が少しづつ晴れて行くと、ハンスの周りにはクレーターが出来上がっていたが、それでもハンスは多少ダメージを受けたものの、涼しい顔をしていた。ハンスは服に付いた土埃をパンパンと払いながら言い放つ。
「やれやれ、Adventuresの1人と思って期待してみれば、バカのひとつ覚えじゃねぇか…どうした?もうおしまいか?」
余裕の顔をしながらハンスはクレーターから出て来て俺に近付いて来た。俺は焦りを感じ、ハンスに向かって飛びかってドカドカと殴り始めた。そのまま勢いに乗って♾のシフトウェイトして行きながらデンプシーロールにシフトさせ、ハンスを殴り続けた。
魔法やブルーインパルス以外でこれが唯一の攻撃、これで倒れなければ俺はコイツに…勝てない……。
左右に顔を揺らされながらも、ハンスは顔色を変えず、尚且つ攻撃を受けながら俺に言葉をかけて来た。
「そんなに俺の体に触れて大丈夫なのか?」
「っ!?」
その言葉を聞いた瞬間、両手に焼けるような激痛が走った。慌ててバックステップでハンスから距離を置いて両手を見ると、レッドルークのガントレットが溶け始めており、ボロボロになって両手に火傷を追っていた。
なんだ!?俺の手が…!?
「どうした?自慢の鎧が溶けちまってるぜ?」
「くそっ……この痛み…毒……か!?」
「ご名答、だが流石だな、俺の毒を食らって生き延びて居るやつは早々いなかった。状態異常耐性スキルのお陰の様だな」
毒に侵された反動により、俺はハンスの正体をようやく思い出した。
そうだ、コイツは…コイツの正体はリムルと同じ……!!
焼けた両手を必死で握り直そうとしたその時、ハンスは俺の鎧を掴み始め、兜を外した。そのまま俺の顔を眺め、嘲笑うかのように言い放つ。
「なんだ、もっと屈強な男かと思えば…こんな小便臭そうなガキにベルディアとバニルは殺られたのか?」
「へっ、てめぇよりはいい匂いだろ?」
「言うじゃねぇか」
ハンスはもう片方の手で俺の両目を覆い隠す様にこめかみを掴んだ。すると、焼けるような痛みが広がって行き、俺は断末魔を上げる。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
「ガキ見てぇな顔しときながら随分いい声出すじゃねぇか」
俺は掴まれたままハンスの体に何度も攻撃を繰り返すが、まったく効果は無く、余計力を入れられ動きを封じられた。怒りの頂点に達した俺はハンスに向かって声を荒らげる。
「このガキャァァ!離せゴラァ!『スパーク』!!」
スパークを放ち、体全体を放電させハンスの手を離すことが出来た。毒による大火傷で視界が最悪くになる中、俺はダクネスほどでは無いが状態異常耐性が付いているのにも関わらず毒に体を蝕まれていた。意識が朦朧としていると、ハンスは俺に近付き髪を引っ張って行き、俺を源泉の中に突き落とした。