怒りに満ちたウィズを目の当たりにしたカズマは普段滅多に怒らないウィズを見てビビっていると、めぐみんやキャルがカズマの背中に隠れていた。アクアはリュウジの治療をしており、必死になっていた。
「リュウジ!起きて!早く起きて!ウィズが怒ってるの!ものすごい怒ってるの!怖いから早く起きて頂戴!」
火傷の回復を終わらせるとアクアは俺の体をゆさゆさと揺すっていると、俺は口から水を吐き出し、息を吹き返した。
「ゲホッ!ゲホッ! はっ、はっ……アク……ア?」
「起きたのね?私は温泉の浄化をするから動いちゃダメよ!?」
そう言うとアクアは汚染された源泉に向かい、手を突っ込んで浄化を始めた。俺は上体を起こし、状況を把握した。
そうだ、俺はハンスと戦って返り討ちにされたんだった。
あれは、ウィズ?ゴミでも入ったかな?目がゴロゴロする…。
弱った視力で辺りを見渡すと、ウィズとハンスが戦っていた。
「クソが、ウィズ。やはりお前とは相性が悪い、この際本気で行くぞ!」
ハンスは自らの手で腕を凍結された部分をちぎり、ビキビキと体にヒビを入れ始めた。すると、ドス黒いスライムが出始めると、巨大化して行き本来のスライムの姿に戻ったハンスを見たアクアを除くAdventuresは騒ぎ出す。
「カカカカカカカズマ!?」
「なっなんだあのデカいスライムは!?」
「あれが…ハンスの本来の姿なの……」
「これはなんと見事なスライムだ!。惜しいっ!毒さえ無ければ持って帰りたい!」
俺も離れた場所から眺めているが、コレだけは言える。
デカくね!?カズマの家以上にデカくね!?
人間の形のハンスは既に面影もなく、巨大なゲル状のスライムになり、口らしき所には牙を生やしていた。騒ぎを嗅ぎつけたモンスター達を次々と呑み込み、体内に吸収して行く。体内にはモンスター達の骨や、管理人の骨が見えていた。俺はフラフラと立ち上がり、ウィズを呼ぶ。
「ウィズ!」
俺の声が届いたのか、バッ!と振り返り、慌てながら走ってやって来た。ウィズの近くにいたキャルも駆けて来る。
「リュウジさん!気が付いたんですね!大丈夫ですか?」
「あんた、大丈夫なの!?」
「うん、ちょっと目に違和感があるけど、なんとか…アイツにライトニングは効かないのは分かってる、けどウィズの氷魔法ならなんとかなるんじゃないか?」
「出来ますけど、『カースド・クリスタルプリズン』では、あの大きくなったハンスさんを丸ごと凍らせるには魔力が足りません!どなたかに魔力を頂かないと……」
ウィズは俺に言ってくるが、俺の魔力は最早ギリギリ、この場でウィズな魔力を与えられるのは……
「ウィズ、もしハンスの体がアレの半分になれば凍らせる事は出来る?」
「出来ますが、けど、どうやって?」
俺の考えを悟ったのか、キャルが動き出した。
「なるほどね、あたしの『グリムバースト』とめぐみんの『エクスプロージョン』で小さくさせるのね?」
(ここまで来たらしょうがないわ、あたしの正体がバレる前にハンスを消すのよ!)
「そういう事、足りない魔力はミツルギやカズマに生け贄になって貰おう」
ウィズとキャルで作戦を考えていると、カズマ達が走って来た。
「やべぇ!ハンスが本気になりやがった!ウィズ、キャル、リュウジ、何とかしてくれ!」
「リュウジ、火傷はもう大丈夫なのかい!?」
「ああ、大丈夫だ。俺に考えがある、今回は皆の力でアイツを倒すぞ!」
リムル=テンペスト、いえ、三上悟さん…あなたと戦ったお陰で何とかなりそうです!。
俺は皆に作戦内容を説明した。
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「なるほど、私のエクスプロージョンとキャルのグリムバーストであのデカいスライムを木っ端微塵にし、スライムを小さくしてからウィズがカズマと魔剣の人から魔力を供給した氷魔法で凍らせ、その凍らせたヤツをアクアが浄化させるという事ですね!」
「あたしとめぐみんはいつでもいい様に詠唱を終わらせておけば良いのね?」
「そして私は、その飛び散るハンスから皆を守れば良いのだな?」
「皆自分の役割は把握出来たな、Adventures…行くぞ!」
俺の掛け声を合図に全員が配置に付く。理性を失いながらも、モンスターを食い尽くしたハンスはこちらに近付いて来た。
さっきは良くもやりやがったな…。散々な目に合わせやがって、覚悟しろよズルズル野郎がっ!
「カズマ、準備出来ましたよ!」
「こっちも準備完了よ!いつでも撃てるわ!」
眼帯を外しためぐみんが紅い眼を輝かせ、隣にはキャルが薄紫色の魔法陣を輝せる。魔力の供給を終えたウィズがフラつく俺を抱き支える。
ウィズの体…柔らかいなぁ……。
「大丈夫ですか?リュウジさん」
「うん……ちょっと目が霞むけど、大丈夫だよ」
そう答えるとウィズは俺の手を取り、迫り来るハンスに向けて手のひらをかざした。
「リュウジさん、私と一緒に魔法を撃ちましょう、私の氷とリュウジさんの雷を混ぜれば更に強力になります、なので一緒に唱えて下さい」
「えっ?わっ、分かった」
ウィズにタイミングを合わせる為に、俺は雷を纏わせていると、カズマが合図を送った。
「めぐみん!キャル!後は任せたぞ。やれ!」
「『エクスプロージョン』───────!!」
「『グリムバースト』───────!!」
めぐみんのエクスプロージョンとキャルのグリムバーストがハンスに直撃し、木っ端微塵になった。それと同時に俺とウィズが魔法を唱える。
「『
木っ端微塵になったハンスを全て凍らせると、巨大な氷柱が出来上がって空には雷雲が現れて氷柱に目掛けて雷が落ち、凍らされたハンスは雷により砕け散った。
その後、アクアは粉々になったハンスを浄化して周り、本気になって源泉を浄化しまくったらしい。その結果、アルカンレティア中の温泉はただのお湯になってしまい、ただの銭湯の街になってしまった。
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それから翌日、街を救った英雄である、俺達は……。
「ぐすっ…私、頑張ったのに、熱い源泉に手を突っ込んで頑張ったのに」
「泣くなよアクア、今回の手柄はアクア達に譲るからさ?今回俺はコテンパンにやられて何もしてないから……あはは」
しくしく泣くアクアとどんより落ち込む俺を含むAdventuresは馬車に揺られながらアクセルの街に帰ろうとしていた。
「なんと言うか…今回は流石にアクア様に同情します…」
「そうね、熱い思いして浄化したのにね、ほら泣きやみなさいよアクア」
キャルとミツルギが馬車の中でグズグズと泣くアクアを慰め始める。だが、カズマは追い討ちをかけるように言い放つ。
「お前はもう少し微調整が出来る浄化は出来ないのか?無駄に手先が器用なクセに」
「そんなのいくら優秀な私でも出来ないわよ!、全力でやらなきゃ汚染されちゃうって思ったんだもの!わぁぁぁぁぁん!私頑張ったのにぃ!あんまりよぉぉ!」
「ちょ、うるさいアクア…ん?」
俺はアクアの顔に付いている白いモノを取ろうとアクアの顔に触れた。アクアは突然触れてくる俺に驚いていた。
あれ?取れない?
「あっあの、リュウジさん?、なっ、なにしてるのかしら?」
「あれ?あれ?白いゴミが顔に付いてるから」
「え?、白いゴミ?ねぇ、ダクネス?取ってくれる?」
「ん?どれどれ……」
ダクネスが代わりにアクアの顔に付いてる”白いゴミ”を取ろうとマジマジと顔を見つめるが、ダクネスの口から不思議な言葉が出て来た。
「なぁリュウジ、白いゴミなんかアクアの顔に付いてないぞ?」
「えっ?マジで?」
「ああ、付いてない」
その言葉を聞いた途端再びアクアの顔を見ると、やはり付いていた。俺は首を傾げてまたアクアの顔を指で擦る様に触れる。
「ねぇ?なんなの?こんな堂々とセクハラする人初めてなんですけど?」
「あれぇ?おい、めぐみんも見てくれよ」
「はい?なんですか?」
「アクアの顔のここに白いゴミついてるよな?」
「ゴミ?」
今度はめぐみんがアクアの顔をマジマジと見つめるが、何故だろう?ダクネスと同様、同じ答えが出た。
「付いてませんよ?見間違えではありませんか?」
「めぐみんも同じ事言うの!?現にほら……あれ?」
めぐみんと顔を見合わせると、今度はめぐみんの頬に白いゴミが付いていた。それを見た俺はめぐみんの頬に触れると、ビクッと驚き声を出した。
「ひゃぁ!なっなんですか急に!?なんですか!?覗きの次はセクハラですか!?やめてくださいよっ!」
「違う違う、頬に白いゴミ付いてるんだってば!」
「付いてませんよ!何言ってるんですか!?やめてくださいよ!」
お前らこそ何言ってんだ?、あんなにくっきり付いてんのに?。
不思議な感覚に戸惑いながら首を傾げていると、ウィズが宥める様に俺に声を掛けてくる。
「きっとまだ疲れが残ってるんですよ。ハンスさんと激しい戦いでしたし、きっと変な錯覚が見えてるんだと思います、今だけでもゆっくり休んでください」
「うっうん、分かった……変だなぁ……」
馬車に揺られていると、アクアは泣き疲れたからなのかいつの間にか眠っており、カズマ達も釣られて寄り添う様に眠っていた。俺は白いゴミが気になって眠れずにいて、人知れず1人で起きていた。
「おかしいなぁ…それとも、ただ疲れてるだけなのかな…?鏡もないから目を見る事も出来ねぇや」
「リュウジさん、どうかしました?」
振り向くと隣で寝ていたウィズが眼を擦りながら俺に声を掛けてきた。ウィズの顔を見ると、ウィズの顔にも白いゴミが付いている。
待って、皆して白いゴミ付けて何してんの?流行ってんの?
納得行かないのでウィズの頬にも触れる、すると、ウィズの頬は段々と紅潮して行き、艶っぽい声を出し、俺の手を握り始めて俺を見詰める。
「あれ?おかしいなぁ…やっぱり俺の目がおかしいのかな?」
「んんっ…そんな事ないですよ……」
「そう言えば、ハンスに撃った魔法、アレはなんだったの?凄い威力だったけど?」
「アレですか?アレはですね、私が独自に編み出した『混合魔法』です。他にも開発した魔法がありますが、リュウジさんにはちょっと難しいと思います。ですけど、混合魔法は他魔法使いの方と同時に撃つと出来ますよ?」
なるほど、合体技の様なものか…、氷と雷で避雷針の様な魔法が出来るとなると…水と雷や氷と炎とかでも出来るって事か…ふむ、勉強になる。
そう考え込んでいると、ウィズがいきなり俺の顔に手を添えて俺を見つめ始める。突然の出来事に俺は顔を赤くさせながら驚いた。
「うえっ!?ウィッウィズ!?どどどどどうしたの?」
「あの…目を瞑って下さいますか?」
「えっ?あっうん…」
このパターンは……。
そう思い、童貞っぽい顔をしながら目を閉じていると…唇に柔らかいモノが触れた。目を開けて見ると、ウィズが俺の唇とウィズの唇が触れていた。
「んんっ!?」
えっ?ウソ……!?
慌ててウィズを引き離そうとしたが、ウィズは腕を回して離さなかった、寧ろウィズはそのまま口に舌を絡ませて来て激しさが増した。
やべぇ、これが現実世界の大人のキスって奴か!?夢ではめっちゃやるけど、実戦は初めてだ…って、ダメだろこれ!?
急に罪悪感に見舞わられた俺は半ば強引にウィズを引き離した。ウィズは何故?という感じに首を傾げている。
「どうしました…?あの…もしかして、嫌でしたか…?」
「あっいや、まさかいきなり来ると思ってなかったから…皆いるしね?」
「しーっ、皆さんお疲れの様ですし、眠ってらっしゃいますから…。それにリュウジさんには今までずっと助けて貰ってたのにお礼の1つも出来てませんでしたから…なので…その……」
そうボソボソと呟くウィズは頬を赤く染めながらモジモジし始めながら上目遣いを繰り出してくる。恐らくカズマだったら一撃キュン死していただろう。
俺じゃなきゃ危なかったね、死にそうだけども
「気にしなくていいよ?俺も今までウィズに何度も助けられてるしね?お相子だよ!」
「そっそうでしょうか?」
「うん♪、もう羽毛レックスは出ないよな?窓見てみよっと」
俺は羽毛レックスがその辺をうろついて居ないか確認する為に窓から顔を出すと、小さい声でウィズが呟いた。
「昨日もキスしちゃったんですけどね…?」
「羽毛レックスは居ないみたいだね──えっ?今なんて!?」
「あの…昨日もしましたよ?」
えっ?えっ?何時!?
「嘘でしょ!?」
「リュウジさんが気を失ってる時に…その……」
「マジでか……」
「皆さんには、内緒ですよ?」
「えっ、あっ、はいっ」
やべぇ、勃ってきた…。
────その後、何事も起こらず無事にアクセルの街に辿り着き、そのまま冒険者ギルドに向かい、魔王軍幹部ハンスの討伐を報告した。今回の汚染騒ぎの功労者として色々な人達から感謝された。街一つ壊滅的なダメージを負い、本来なら俺達はかなりの額を請求されただろう。だが、今回は、アクシズ教徒のアークプリーストが、教団を救おうと良かれと思い、行動した事で救った形になり、ハンスの懸賞金をそのまま弁償という形で大事にはならなかった。
借金まみれになるよりはまぁ、マシか。
それからウィズやミツルギ、カズマ達とも別れ、俺とキャルは早々と家に帰ろうと歩いていると、キャルがため息を吐く。
「はぁ…アルカンレティアになんか、もう二度と行かないわ」
「同感、なぁキャル?」
「ん?何?」
俺は立ち止まってキャルを呼び止めた、キャルは俺の方を向いて立ち止まる。
コイツをアルカンレティアで様子を見てみたけど、確信できたな。コイツは敵じゃない。
「なぁ、キャル?良かったらAdventuresに入らないか?」
その言葉を聞いた瞬間キャルは尻尾をピンとさせ、騒ぎ出す。
「はっはぁ!?あたしが!?」
「ああ、ホントは俺はお前が魔王軍の手先なんじゃないかって警戒してたんだ、けど、今回の騒動でキャルは不自然な動きや怪しい事は何も見て取れなかったし、何よりめぐみんの爆裂魔法に匹敵する魔法も使える。もし、良ければだけど、今後も俺達と一緒に戦って欲しい」
俺はそのままキャルに向けて頭を深々と下げた。キャルはフンッと突っぱねる様な態度をとる。
「バッカじゃないの!?誰が入るかっつーの!……けど、まっ前向きに考えて置くわ……今日からあたしは宿に泊まるからアホリーヌやコロ助に言っといてくれる?」
「え?あっああ、分かった」
「んじゃ、またね」
キャルは来るっと回れ右をして宿の方向に歩き出し、今にも泣きそうな顔を誤魔化した。すると、また立ち止まり振り返る。
「あたしの裸見た事、チャラになんかならないからね?」
ですよねぇ〜。
「あっはい、重々承知でございます」
「フンッ!バカリュウジ!」
暴言を吐きながらキャルは歩いていった。それを見送った俺はようやく辿り着き、家に足取り重くさせながら恐る恐る玄関を叩いた。
「ただいまぁー」
「あっ!リュウジくん!オイッス〜☆おかえりなさい☆」
「おかえりなさいまし、リュウジさま」
「おかえりなさい、リュウジ様。聞きましたよ?向こうで魔王軍幹部と戦ったそうですね?折角の温泉旅行がえらい目に逢いましたねぇ」
扉を開けると、ペコリーヌやコッコロ、マリューが出迎えてくれた。
はぁ〜、コイツらの顔を見ると落ち着くなぁ。
中に入るや否や、部屋にはアルカンレティアで買った温泉饅頭や肉饅頭の空箱が山の様に積み重なっており、饅頭が何一つ残ってなかった。
「えぇ!?アレだけの饅頭全部食ったの!?」
「はい☆美味しかったですよ☆アルカン饅頭はやばいですね☆」
「マジかよ!?俺まだ食べてないのにぃー!」
予想を遥か斜め上を行きやがった……。
「まぁまぁ、また行けば良いじゃないですか!」
「誰が行くか!もう二度と行かねぇよあんな魔界!」
「何があったんですか!?」
「あはは☆土産話もやばいですね☆後で聞かせてくださいね!」
俺とペコリーヌ、マリューで魔王軍幹部と戦った事や、アルカンレティアの勧誘地獄の話をしていると、コッコロがキャルが居ないのに気が付く。
「あの、リュウジさま?キャルさまはどうしたのですか?」
「あれ?キャルちゃんは寄り道してるんじゃないんですか?」
「あーいや、なんか今日から宿に泊まるんだって」
「え!?まさか、リュウジ様…キャル様が温泉に入ってる所を覗いたんじゃないですかー?」
すっするどい!
俺は冷や汗をダラダラ流し、目を泳がせながら女性陣に言い返す。
「さっさぁ〜?Adventuresに誘ったら前向きに考えておくって言われたから、今頃考えてるんじゃないかな?」
「ホントですか!?キャルちゃんが入ってくれたらやばいですね☆」
「だっだろぉ?そう思うだろぉ?」
必死に俺は誤魔化してその場を何とか凌ぎ、ペコリーヌ達と共に普段通りの生活に戻って行った。
─────この時俺は、自分の身に異変が起こるとは考えもしていなかった……。