私達AR小隊の指揮官であり、唯一の家族が身勝手な大人のやることで消されそうになっていると気づいたのは私の失踪後のことだった。グリフィンのことを知るためにこっそりとデータベースを覗き込んだある日。すみれのことが気になって調べたらわかった。これが人間のすることか。
「噂は本当だったのか。グリフィンの秘密の処刑場があるってのは。上層部の人間が、自分の派閥の人間をねじこませるためにそんなことを。すみれをそんな所に送ったのか」
あの子は飛び級卒業して、就職しただけの何の後ろ盾もない子供なんだぞ。何もできないまま死んでいくに決まっている。私はM4のため、ひいてはAR小隊のためと奔走したのは良かった。そこまでは良かったんだ。
「すみれ。頼むから、生きることを手放そうとするな」
手近なグリフィン基地跡地から情報を抜き出す。電源は生きてることを確かめて、コンソールの電源をいれた。
「ペルシカさんやヘリアンは無事か」
すみれの足跡を辿る。グリフィンの身分証はICカード機能もあるから、公共交通機関の使用履歴を辿ればどこにいるのかもわかるはず。すみれの身分証兼端末の履歴を調べて行くと気づいた。護衛に人形も付けずにたった一人で私がいる地区までやってきたと。あの子はまだ、9歳になる直前の子供なのに!私達AR小隊の家族。愛を教えてくれたのはあの子だし、私達はあの子を愛している。
「クソッ。あの時、すみれの手を放すんじゃなかった!」
もう一つの大事な存在が掌からこぼれ落ちる寸前で錯乱しそうになる。少しでも早く、あの子の所へ。私が守らないと、誰もあの子を守らないんだから。
「私が、早く気づいていれば。私が消息を絶つと、指揮官であるすみれの懲罰人事が発生するだなんて、火を見るより明らかじゃないか。履歴とGPSから追跡して……私はただ、すみれには生きていてほしいだけなんだ」
GPSから情報を割り出してみた。すみれは私の現在地からすぐそこの山中で、管理用の小屋から動いていない。履歴を探った証拠を消しながら、ヘリアンへのメールを送る。ここにいるのをわからないように。だけど、用件を手短に書く。タイトルは私の名前で。監視カメラから抜き取ったすみれの写真と、GPSの情報。私からのメッセージを添えるのも忘れずに。
「あなたが目をかけてる子供を、私達の指揮官を失うようなことをしてくれるなよ」
メールを送信したら、すぐにここを立つ。今急がないと、すみれを守れなくなる。私が私でいられるうちに行こう。
「中々厳しい寒さだ」
冬の終わりの冷たい風に身を乗せて走る。すみれがこの風に凍えていないだろうか。お腹を空かせていないだろうか。もしも、病気やけがでもいていたら。ああもう、不安で仕方ない。
「頼むから、生きていてほしい」
あの子は私を親と慕い、私はあの子を我が子と愛おしむ。それだけでよかったあの日々を取り戻すために。