結局、初対面なのに私を看病してくれた彼女からもベッドからも私は抜け出せなかった。
「ほら、あーん」
「もう私は子供ではないので」
「すみれの元気な所がみたいの。だめ?」
「うう。しかたないですね」
私は世話を焼いてくれるだれかにことこん弱い。AR小隊やペルシカさんとか。良いデータがとれるからとうそぶいて、AR小隊専属指揮官にしてくれた彼女に感謝しても仕切れない。あの人と彼女らが私を守り、育ててくれたからこそ生きてこれた。みんなに会いたい。
「いっぱい食べるんだよ」
私はまだ、目の前にいるUMP系列の銃を持った戦術人形の真意を測りかねている。
「あまり食べられないので、もう十分です」
「本当に?食べられるうちに食べるんだよ」
背景がわからないのに、優しくされても困る。その優しさに依存したくなるから。なんて彼女はずるいんだろう。愛される経験が薄い私にはとても甘い毒。だからこそ、私はその手を振り払わなくては。
「少し汚れたので、手と顔を洗ってきます。先に休んでください」
「はいはい。おやすみ」
彼女が寝たのを確認して、自分のカバンを掴んで小屋を出る。今から急いで下山しないと。歩いて、自分を終わらせる場所をみつめるために行く。
「寒い。まだ春は遠い」
勢い良くさくさくと枯葉を踏んでいく。山をおりながらまた昔を思い出す。私の後見人のことだ。就職時に名目上の後見人である上級代行官殿がついらしい。私は残念ながら顔すら知らない。たしか、ヘリなんとかだった気がする。忙しいだろうに、定型文で時候の挨拶を書いたメッセージカードだけは律儀に手書きで送ってきた彼女。女性らしい繊細な筆跡と言葉選びが好きだった。メッセージカードも封筒もかわいらしくて、品の良い香水がふりかけてあって、そこも好きだから捨てずにとってある。カバンの底には彼女からのメッセージカードを詰めたクッキーが入っていた空き缶がある。疲れた時に読むと元気がわく。今までの道中みたいに、またそのカードを読むことを決めて一歩踏み締める。次の瞬間、体が宙に浮いた。転んだわけじゃない、誰かに首根っこを掴まれた。さっきまで一緒にいた彼女だ。
「こら!寝てなきゃダメじゃないか」
勉強ができると言っても、所詮私は子供。とっても考えが浅かった。このままでは、何もできないままベッドに連れ戻されてしまう。
「しまっ……」
急いで振り返ると、少し遠くにM4お姉ちゃんとAR-15お姉ちゃんがいた。すさんではいるけど、諦めていない瞳の二人がいた。誰よりも会いたかった。もがくために私は二人に手を伸ばした。
「すみれ!!」
「お姉ちゃん!」
私がとっさに叫んで、M4お姉ちゃんが先に動いた。