私達AR小隊の指揮官で、庇護者のいない幼子のすみれが見知らぬ人形に捕まっている。
「そこの人形。私のかわいい娘に何してくれているの?」
自分でも驚くほど底冷えする声に、ここにいる全員がすくみあがった。すみれの目が見開かれる。そんな。私はすみれを怖がらせたくなかった。
「M4……」
「AR-15は黙ってて。すみれに何をする気なの?」
すみれを掴む見知らぬ人形の手を掴んだ。星の瞳と視線がかち合う。私の手を振り解こうとする力は予想以上に弱くて、笑ってしまった。
「痛い痛いって!!」
必死なはずなのに、喜劇のワンシーンみたいで力が抜ける。興が削がれた。尋問やらはAR-15にでも任せようか。それよりすみれが大事だし。
「バラバラにされたくなかったら、答えなさい」
「だーかーら!あたいは何も知らないって!この子がとんでもない所に一人でいこうとするから止めてるんだってば!信じてよ」
「本当に?AR-15、すみれを抱いてて。すぐに逃げられるように」
「わかってる。すみれ、会いたかった」
庇護者のいないこの子を愛するだけで良かったあの日に戻りたい。そのために、私はなんだってやる。
「あうー。なんかもうあたい、貧乏くじばっかりだよ」
AR-15の腕の中にいることを確かめると、顔を引き締めた。
「お姉ちゃん。私も会いたかった」
AR-15がすみれを抱き上げる。こんな山奥に一人で心細かったに違いない。服も髪もぼろぼろで、早く整えてあげないと。
「さて、キリキリ吐いてもらいましょうか。素直じゃないなら、頭カチ割ってコアに聞けばいいし」
首を掴んで、ぐいっと持ち上げる。以前されたことを今見知らぬ人形にしている今がひどく滑稽ね。
「やめてやめて、あたいは45に謝らないといけないの!」
UMP40を担いだ人形はジタバタもがいている。弱いなあ。
「お姉ちゃんやめて。私は知らないといけないの」
すみれが小さな手を精一杯伸ばして、私の腕に触れた。この小さな手のぬくもりが今の私を癒してくれる。その手に免じて、ポイっと無造作に投げ捨てる。すみれに微笑みかけて安心させないと。
「わかった。とりあえず生き延びたことを感謝しなさい」
「うう。痛い。45……あたいはまだ生きているよ」
ノロノロと見知らぬ人形が這いずり、私達から遠ざかる。しばらく這いずった彼女が何かにぶつかって転がる。
「あだ?!おろ……?わ、誰だ!」
誰か?その言葉の意味がわからず見上げるとわかった。わかってしまった。
「M16姉さん!すみれが、知らない人形に誘拐されそうなの!」
「私のかわいい娘に手を出そうなんて、いい度胸してるじゃないか」
昔のくせで視線の先の存在に頼ってしまった。私はまだまだなのかもしれない。