「待ってください。私に教えてください。何があったのか、すべてを。そうじゃないと、何もできないじゃないですか。あと、M4お姉ちゃん。知らない誰かの首根っこ掴んではいけないと思います。ほら、解放してあげて」
「チッ。命拾いしたわね」
「あたい許された!」
見知らぬ人形がのろのろと這って距離をとる。初めての接触があれなら、無理もないだろう。奇妙な緊張を保ちながら、皆ジリジリと距離をとって睨み合う。
「私は、私と家族になろうとか守ると口にした彼女のすべてを知りたい。M4お姉ちゃんやお父さんに何があったのかも。私のこともすべて話すから」
私の腕の中のすみれが微かな父の面影と重ねて、父と慕うM16に手を伸ばす。M16はすみれに応えて小さな手を握った。しもやけやあかぎれでぼろぼろの小さな手に悲しくなる。私達がそばにいないばかりに。
「そうね。落ち着ける場所で話をしましょう」
「ならさ、あたい達が休んでた山の管理小屋か猟師小屋みたいなとこは?」
見知らぬ彼女が指差す先の小屋を見る。その言葉に全員が頷いた。私達は問題ないけど、すみれのことを考えると暖を取れる場所が良い。
「そうね。私も何があったのか知りたい。教えて、M16」
「いいよ。そのかわり、M4達やすみれに何があったのか教えてほしい」
M16が穏やかに笑って頷く。すみれ絡みじゃないと、彼女からはこんな笑顔は出てこない。M16の根底は変わっていなかったことに安心した。
「ふぇ?あたいのことは無視?」
足下でうずくまってべそかいてる人形をちらりと見やる。かまってちゃんかあんたは。
「無視してないから。ほら、さっさと歩く」
薄ら残る雪と、枯葉を踏みしめて歩き出す。私はまだ歩けると言うすみれを言いくるめて、抱きしめる。
「体がこんなに冷たいじゃない。無理しちゃダメよ。私達が守るから」
M4やM16にアイコンタクトで連絡をとった。頷いた二人は少し離れて警戒態勢をとってくれる。気心知れた仲の連携はいつでも頼りになる。
「お姉ちゃんがそう言うなら。あとね、会いたかった」
「私だって、M4だってすみれに会いたかった」
「私もすみれに会いたかったよ」
M16の会いたかったって声が震えている。みんな同じことを考えていた。ほっとする。
「すみれ」
「どうしたの?」
この子の少し冷たい指先を少しでもあたためないと。守ってくれる大人がいないこの子を守れるのは私達だけだから。
「ふぁーい」
「ついでに、あんたのことは何て呼べばいいの」
ついにM4が言ってくれた。
「あたいはUMP40。親友を護ったつもりで、とても残酷な呪いを根底に刻んだ愚か者だ」
こちらを向いたUMP40はとても悲しそうに笑った。