「ねえ、M16」
私が両手を広げるとM16がやれやれと笑ってすみれを膝の上にのせてくれた。かわいい私達の娘がギュッと抱きついてくる。
「かわいい。会いたかった」
私がこの世界に存在する理由の一つ。そっと頭を撫でてM16と向き合う。昔みたいな穏やかな笑顔でいてくれた。
「はいはい。すみれは任せたよ」
「M16は変わらないのね」
「私は私だよ。何があっても」
「変わらない所があって良かった。まずは15お姉ちゃん話してくれませんか?」
「そうね。食べながら話でもしましょうか。すみれの好きなダークチョコレートもあるし」
念のために自分が同じ板チョコレートを食べて毒味をする。傷んでいないし、毒物も含まれていないことをしつこく確かめてからひとかけらずつ食べさせる。ブラックマーケットにあった商品の中で一番高かった。だけど、この瞬間のためになら惜しくない。口元がゆるみっぱなしで何から話せばいいのか。でれでれしているのをM4にからかわれるし。
「一人でも食べられますよ。私はもう、子供じゃないですし」
でも表情は幸せそうにしている。この愛おしさは私達だけが自分自身で創り上げた本物の感情。その愛を抱いて優しい話し方を選びながら一つずつ述べていく。
「かわいい。そうね、何があったのか順を追って説明すると……」
傘ウィルスと言うやっかいなのに感染したこと、他の人形に移さないようにと守るために自爆を敢行したこと。スクラップ寸前でいたところを存在しないはずの人形部隊に拾われて修理されたこと。そして、いろいろあって似たような目にあったM4と行動していることを話した。
「お姉ちゃん。痛かったでしょうに」
小さな手が私の頬を撫でる。私のメモリーの中の優しい子のままでほっとした。
「そんなはことないからね」
綺麗な黒い瞳から涙があふれる。きっと私の強がりと捉えたのだろう。ただ、笑っていてほしかったのに。
「すみれの孤独と不安に比べればなんともないわ。この子に酷いことをするなんて。許さない」
「そうねAR-15。かわいい私達の娘に酷いことをした連中には復讐しないと」
「私も手伝うぞ」
M4が右手を握りしめて誓うし、M16がニヤリと笑って頷く。同意してくれて良かった。昔に戻ったみたい。
「あなたをM4を守れなくて、ごめんね」
一番の命令はM4を守ることだけど、自分の意思ではすみれを一番に守ることに決められて良かった。愛を知ることができたから。
「いいんですよ。私はまだこうして生きているじゃないですか」
たしかに私達もすみれも生きていれば、どうとでもなる。じゃあ、行動に移そうか。