「次は私の番?すみれ、おいで」
「はい。M4お姉ちゃん。冷たい印象に変わっていますが、私に優しい所は変わらなくて安心しました」
すみれが潤んだ瞳で悲しそうに笑った。もしかして変わってしまった私のせいで、この子を怖がらせてしまったのかもしれない。これ以上ないくらいそっと抱きしめながら思う。強くなった理由のこの子を傷つけたのなら、意味がない。きつく抱きしめて再会を喜んで、互いに怪我がないか確かめ合う。そこが久しぶりで、笑ってしまう。私達は結局何も変わっていない。それでいい。
「すみれ」
「何ですか?」
時間が惜しくて、持ち回りで手元のレーションのマシな物をすみれに少しずつ食べさせている。私達の娘が急変した生活でやつれたのに気づいてしまった。きゅっと口元を引き結ぶ。
「ごめんね。傷つけたかな?私達はすみれをこんなにも愛しているのに、やっぱり守れないのね」
私が自嘲気味に笑うと、すみれが涙を浮かべあわてて否定する。
「そんなことないよ。私のために勉強教えてくれたり、生き延びる方法を教えてくれたり、コツコツ貯めたお金で予防接種を受けさせてくれたりした。それだけでいいの。私は愛されている」
悲しそうに笑うのがみていられなくて、すみれの小さな額にキスをする。そうしたら、やっと私が知るひかえめな笑顔に変わった。すこし荒れてしまった頬を指で撫でる。さらに痛んだ髪を撫でておく。次いつ会えるのかわからないし、もう会えないかもしれないから。すみれの方からも私の頭を撫でるために手が伸びる。
「ずっと愛してるわ。ごめんね。そうね。私も事情を話さないと」
私には欠けていた記憶があって、それを取り戻したこと。ボロボロになって、私からすべてを奪っていったやつらに復讐を誓うために強くなったこと。M16姉さんが置いて行ったこの武装モジュールのこと。荒んでしまったけど、変わらず唯一の我が子であるすみれを愛していること。これらを包み隠さずに、わかりやすく話していく。
「M4お姉ちゃん」
「どうか私のことも許さないで。身勝手な理由でグリフィンから離れて、あなたをこんな目にあわせたんだもの」
「お姉ちゃん。だったら、私の願いを聞いてくれる?」
丁寧な話し方をやめて年相応の幼い話し方をする所がまた愛おしい。
「すみれの願いなら、なんでも」
「おばあちゃんになるまでお姉ちゃんたちを待っていてもいいですか?」
そばにいてくれ、なんて言いたいけど言えない。いじらしい願い。
「私はね、私達は無事にすみれのもとへ帰るから待っていて」
「はい。待っています。だから、私も逃げて生き延びます」
私とM16姉さんにAR-15が力強く頷く。さあ、次にM16姉さんから話を聞いて今までの事柄のカケラを手に入れよう。