「これはしばらく寝られそ……子供?こんな山奥に?顔色が悪いし、ぐったりしてる」
ぼろぼろのベッドで痩せた子供がぐったりしていた。一枚の絵画みたいな、悲しい現実を目にすることになるなんて。これが人生?なのかな。何があるのかわからないものだね。死の淵に立つ人を目の当たりにするなんて。
「まだ、生きてるよね?あ、生きてる」
呼吸でわずかに胸が上下するのが見えた。目の前で子供が病死なんてなんか、嫌。誰が悪いってわけじゃないのに、つらくなるし。もう外は真っ暗だから、あたいはここにいるしかないし。風もでてきたし、さらに外は危ない。
「ぜんぶ、ちっちゃい」
子供が小さく咳をした。そしたら小さくて、脆そうな肩が見えた。
「不安になる」
さらにじっと観察すると、身なりはくたびれているけど汚れてはいない。高熱を出しているみたいで、息をするのも苦しそうにしている。
「なんでこんな場所に子供一人?こんな山奥に?」
バグってどうにかなっちゃいそう。でも、冷静に考える。そうだ。雪に足跡はなかった。だとしたら、しばらく前からこの子供はここにいたのかもしれない。
「わかんなくなってきたよ。45がいれば、冷静になれたんだろうね」
守るべき対象がいたから、あたいは冷静でいられた。そっと近づいてさらに観察してみる。
「むむむ。よくわからない」
寝ているこの子供は痩せすぎてるから、ぱっと見ただけじゃ性別も年齢もわからない。でも、まだまだ幼いのだけはわかった。
「まだ生きてる。あんなに痩せてるのに」
子供は古くて何度も繕ったあとがあるぬいぐるみを大事そうに見つめている。子供が苦しそうにうめくとぬいぐるみがゆれた。とっても静かで、寂しくて、ゆっくりと死を待つだけの風景。
「静かすぎる。この世界にこの子供一人だけみたい」
おまけにびっくりするくらい外は暗いし、雪も降っている。電灯はつけてない。だから、白い月明かりだけが降雪の影をベッドに落とす。絵画みたいな風景のせいで凍えちゃいそうなのに、目が離せない。死に美を見出してるのはまずい。
「このままじゃあまり、長くはないだろうなあ」
見るからに高熱とこの寒さ、かなり痩せているのもある。雪が覆い隠す、死を待つだけの夜。なんだかとっても暗くて寂しい。だからこそ、勝手だけど思ったことがあるんだ。
「そういや、あたいは自由だったね」
そっと扉を後ろ手に閉める。隙間風から逃げたい。風もでてきたし。
「うわあ、寒いね」
このままじゃ自分が凍える。それは嫌だ。それに、このまま見知らぬ子供が目の前で死ぬのも後味が悪い。女性を模して作られているって部分が、こんな時だけ都合よくあたいに何かを訴えてくる。
「こんな時45なら、いや。これからは一人で生きていかなきゃ。あたいが決めないと」
最初で最後のわがままで何かしてもいいはず。足掻いてみようかな?そのために、この子に話しかけてみることにするよ。
「起きてる?」
ねえ、45。そばにいられなくてごめん。あたいも生きるからさ、45もこの世界のどこかで生きてよ。わがままな願いだけどさ。
「あのね。きみは、どうしてこんなところにいるの?」
初めてかけてみた声は、情けないくらい震えていた。