私にしては珍しく、黙って輸送用トラックに揺られている。すみれの足取りをたどっているうちに不安になる伝言がサーバーに隠されていた。その日付はすみれがいなくなる直前。急いだような声色で手短に残した言葉を反芻していた。
「このメッセージを見つけた頃には私はもうどこにもいないでしょうね。私のことは忘れて、とも言えない。でも、忘れないで、とも言えない。でも、私は幸せだったことだけは覚えていてほしい」
AR小隊結成時に撮った写真を見つめてつぶやく。写真の中のあの子は最後に会った頃よりもずっと小さくて、幼くて、孤独に押し潰されそうな表情をしていた。
「あのメッセージ?」
「うん。わたしのはんぶんのあの子があんな言葉を残すもんだから、心配なの」
「何その、『わたしのはんぶん』って」
「うーんとね。互いに足りない所を補いあって、伸ばしあうの。違う存在なのにどこの誰よりも近いし、知ってる。人生の前提条件みたいな……うーん。双子とはまた違うの」
「わからない」
「感覚みたいなものだから、わからないよね。でもね、あの子は私には私達には特別な存在。自分で考えて守ると決めた。そしてヘリアンさんやペルシカさんはそれを肯定して手を尽くしてくれる」
「自分で決めたこと」
ROが私の言葉を繰り返す。ROも大変だよね。まっさらの状態で起動時最初の命令が「自分で考えて、自分で決めて行動する」だもん。右も左もわからないのに、大変だなあ。私はもう決めてるから関係ないし。
「私はすみれを守るって決めたの。メッセージには諦めろってあったけど、私は諦めない。」
あの子はきっと賢いから、屁理屈みたいな理由をつけられて自分が消されることは早々にわかっていたみたい。私が長期任務でそばにいられなかったのが悔しい。この悔しさをバネにして、ヘリアンさんからもらった情報をもう一度まとめておこう。公共交通機関で使われたICカードの履歴や監視カメラの映像から、地図と照らし合わせていく。
「ヘリアンさん。すみれを監視していた大人の数が南の過疎地域に行くに連れて減っていってるね」
通信機をいれて、ヘリアンに聞いてみた。そしたらヘリアンさんが穏やかにあれこれと教えてくれる。
「あの子も大人しく従うフリをすることで、監視の目を緩めていったようだ。ほら、この映像。監視の人間が交代で消えた瞬間を見てほしい。人混みの親子連れに、つかず離れずでまぎれて消えていった」
あの子は子供であることを最大限に利用できる。こんなことで子供であることを活用しなくていいようにするのが私達のやるべきことだった。
「ヘリアンさん。私、すみれが向かいそうな所を考えてみる。昔の何気ない会話も全部思い出してでもやる」
「それでいい。私とペルシカはそれを全力で支持する」
ヘリアンさんの力強い言葉に私の中で安心と強さが生まれる。これでいいんだ。やるって決めたから、全力でやるよ。