その人をモチーフに指揮官を作って書きました
指揮官としてこの基地に着任してから、もうずいぶんと経つ。長い間、砂糖にミルクたっぷりのカフェ・オ・レ片手に腕時計を見つめていた。すっかり冷めたと少しだけ笑って飲み干した。
「そろそろかな。M14を迎えに行こう」
私の人生の相棒M14の顔が見たい。左手薬指に光る指輪に視線を落としてつぶやく。会いたいのなら、善は急げと執務室を出て行く。
「M14に会いたいな」
「よびましたか?無事に帰った、あなただけのM14ですよ!」
かわいいM14が駆け寄って私に抱きつく。かわいい。ふわふわの髪を撫でるとふにゃりとした笑顔が私だけに向けられる。まんまるのお月様みたいな金色の瞳が輝いている。私だけのお月様に今日の戦果を聞いてみた。
「今日の戦果を教えてほしいな。あと、ヘリアンさんから連絡が回ってきた迷子ちゃんのことも何かわかったことがあるかな?」
私がさりげなく聞いてみると、ぎゅうぎゅうと私を抱きしめてくるM14がしょんぼりしながらポツポツと話してくれた。
「部隊は全員無事です。哨戒任務も遂行しました。ですが、迷子の捜査で問題が発生しました。何者かによって私達部隊全員のメモリーが一部綺麗に抜き取られています」
驚いた。何があったのだろう。幼い子供を保護するだけなのに、どうしてこうなったのか知りたい。君を責めているわけじゃないと説明しながら言葉を促す。
「保護対象である例の迷子を遠目で見かけたところまで、どうにかメモリーはたどれました。あの遭遇直後、外部による強制シャットダウンを受けてそれから復帰後にはもう姿も痕跡もありませんでした」
「とんでもないことが起きたってことはよくわかったよ。ヘリアンさんに報告する。情報によると私と同じ日本人って聞いて助けたくなったんだ。わがままに付き合ってくれてありがとう」
もう一度撫でるとM14はうるんだ瞳で私を見つめてくる。かわいい。
「指揮官のお役に立てましたか?」
「もちろん。念のためにメンテナンスルームへ全員行っておいで。その間にお菓子とお茶を用意しておくから」
詳しく話を聞くには腰を落ち着けた方がいいだろう。私もおやつ食べたいし。
「もうちょっとだけ。もうちょっとだけ。こうしていたいんです」
「かわいいなあ。いいよ」
人気のない廊下で抱き合うのは色々とよろしくないけど、かわいいから許してしまう。
「あの、かずなりさん」
二人っきりの時に私を名前で呼ぶのは反則。かわいいからつい、ギュッと抱きしめてしまう。
「いきなりどうしたの?」
「かずなりさんのこと、もっと知りたいって言ったら許してくれますか?名前の意味とか、姓の由来とか、どう育ったかとか。私、何にも知らなくて。誓約の指輪をもらった夜からずーっと考えていてえっと……お互いのことを知った方がうまくいくはずですし」
耳や頬を赤くして、私のお月様は私に迫る。そうだったなあ。仕事一辺倒で私的なことは何も話してなかった。よし、情報交換とおやつの休憩も兼ねて、話し合おう。
「うんうん。そうだったなあ。迷子の捜査と保護のための情報交換と、私のこともしゃべるついでにおやつにしようか」
「いーっぱい教えてくださいね!それじゃ、メンテナンスルームに行ってきます」
不安が解消されたみたいでぱあっと花が咲くような笑顔を見せてくれた。M14には笑顔が似合う。
「気をつけてね。お菓子とお茶を用意して談話室で待ってるよ」
「はい、お任せください。必ずや指揮官に勝利と平和を!」
ぴょん!と跳ねてぴしっと敬礼するM14にほっとした。彼女はこうでなくては。緩み切った頬のままひらひらと手を振って見送る。さて、長い話になりそうだから軽食も作ろうか。