「はい。それでは私からお話しますね!」
「頼んだよ」
しゃきーん!と言う効果音がつきそうな表情をして、どこからともなく赤縁眼鏡を取り出してかけるM14。今日も君がかわいいから私は生きていけるんだ。
「10:00に我々臨時調査隊は基地を出ました」
「そうだねえ。私も今日の副官と一緒に見送ったし、それは覚えてるよ」
ミルクティーを一口飲んで頷くとM14は私を待っていた。ニコニコしててかわいい。
「途中までは何もなくて、普段避けている山頂付近の年中霧がかかってるあの地域まで来た時までは問題がありませんでした」
「私の故郷の町の裏手の山地付近だねえ」
皆、ぽつりとつぶやいた私の言葉に反応する。
「あのあたりは隣の地区の基地の管轄なのであまり行かないのですが、今回は日帰りできる距離なら行ってみようと考えました」
「ばれなきゃ、違反じゃないんですよ」
私はケラケラ笑ってM14を許すとジェリコに釘を刺されてしまった。
「指揮官」
「さっきのはゆるしてよ。さてさて、問題はそこからどの地点からどれくらいまでメモリーが吹っ飛んでるか、だ」
故郷を崩壊液でなくした極東の島国が自治権を得て作り上げた正当な移民の町。その努力の結晶の世代が私。その町の裏手、といっても山をいくつも越えなきゃいけない。その上、あの町にたどり着くにはぐるりと山をいくつも迂回しないと入れない。
「あのあたり、私はどうしても苦手なんですよねえ。なぜか軍用品流れの計器ですら狂うし、まともじゃない人間は年中漂うあの霧で狂うし、人形だけだと山頂にあるあの廃墟じみた街にたどり着けないし、私は迷わないけど長居したくない」
あの辺りはたしか、我々移民の町ができる前から霧に包まれた地域だと聞いたことがある。つくづく面倒。この一帯はおかしいのだ。怪異が近すぎて人形や人間も違和感を抱かない。
「調査隊のみんなが覚えているのは例の迷子が見知らぬ誰かに背負われているほんの一瞬だけ」
M14の言葉に頷いたジェリコが調査隊のメモリーから抽出した画像を見せてくれた。ヘリアンさんからもらった情報よりも少しだけ成長して、やつれた子供の画像がジェリコから渡されたタブレットの中にあった。
「うんうん。間違いないね。件の迷子だ。名前はたしか、保関(ぼせき)………うーん。私の幼なじみと同じ姓と顔をしている……あいつ、たしか行方不明の姪っ子を長年探しているはずだから……」
仕事用じゃない、個人用の端末をいじって幼なじみに電話をかける。唯一の同性の幼なじみ、彼の姓も保関だからなんか引っかかる。
「あ、もしもし。久しぶり、じゃないよね。週三回くらい理由こじつけてご飯食べにいってるし。なんかさ、顔見たくなったし今から行くよ。お土産に鹿か熊獲って持っていく。詳しくはメールするけどさ。え?あー、うん。わかった。それじゃ待ってて」
電話を終えた私はM14達に今思いついたことを伝える。のらりくらりだけが私じゃない、かっこいい所を見せないと。
「隣の地区の指揮官、私の幼なじみの彼と共同で捜索隊を組むよ。手土産にまずは熊か鹿でも狩って行こう」
「狩猟もお任せください!」
かわいいM14が胸を張る。その頼もしさが心地良い。そして今日も健気でかわいいのだ。
「頼んだよ。私は仕事のメール作っておくから、それまでに護衛の準備をよろしく」
彼は料理がうまいからと、タダ飯を食い続けて十余年。うちの人形達もその味をすっかり覚えてしまった。さあ、仕事にかこつけてうまいタダ飯を食いに行こう。