南下するにつれて雪は雨へと変わっていく。ヘリの窓からそれをずっと眺めていた。
「45姉!シーアとデールの所へメンテナンスによってから、さらに車に乗り換えてそこから徒歩だっけ?」
「そうよ」
上の空な私を心配した9が予定を聞いてくる。つくづくこの子は私達だけに優しい。
「迷子探し、ねえ」
そんなことに私達を使うのってバカみたい。
「ヘリアンさんの親友の子供で後見人してるから、血眼で探してるんだって」
私が聴きそびれた部分を9が不思議そうに言っている。私もそうだと思う。子供一人のためにこんなことをする理由がわからない。
「身元不明、型番不明の人形に誘拐されている可能性があるってさ」
「ふうん。そう」
私達によこされた資料には荒い画像一枚だけ。子供が人形らしい何かに連れ去られているってやつ。私にはこれっぽっちも興味がない。そのはずなのにどこか引っかかる。チリリと私の中の何が焼けつくような感覚に襲われる。何かを置き去りにしたような、忘れているような。思考が堂々巡りで答えが出せなくて視線はヘリの中をさまよう。G11は相変わらず416を抱き枕にして寝ているし、9はあまえんぼうで私にくっついている。ふわふわした9の頭を撫でるとさらにくっついてきた。
「45姉?どうしたの?」
不安そうな瞳がこちらを見つめる。悪いことしたな。お詫びに頭を撫でてあげると9は嬉しそうにしている。たぶん、これでいい。
「ああごめん。何かを置き去りにしたような感覚が消えなくて」
「45姉はどうしたいの?思い出したい?それとも、忘れたい?」
真剣な9に問いかけられてびっくりした。しばらく体を縮こまらせてかたまっていた私がおずおずと答えを口にする。
「どちらかと言えば、思い出したいかも」
私から予想以上に臆病で引っ込み思案な声がでた。こんな声、いつか出したようなきがする。
「そっか。なら、45姉を応援するし支えるよ。これはね、わたしが45姉の家族として決めたことだから」
どこまでも優しいなあこの子は。またふわふわの頭を撫でてあげる。
「雨、やむといいな」
「途中から徒歩だもんねー」
「416がうるさいかもね」
「そこのねぼすけ背負うの416だもんねー」
9と身を寄せ合って取り止めのないおしゃべりに気分を委ねる。こんな時は目を閉じてしまえばいい。9の手に自分の手を重ねて肩を寄せ合った。ぬくもりが心地良くて眠くなる。
「45姉。寝ててもいいけど、目を逸らさないでね。わたしは45姉から逃げないし、目を逸らさないから」
目を閉じる直前に9が言った一言がきになる。でも眠気には勝てずに意識は暗闇に滑り落ちていった。