「集まってもらったようで何より」
ヘリアントスが会議室を見渡す。暖房をいれてもなお底冷えする会議室に3人の人間と6人の人形がいた。カリーナ、ペルシカリア、RO635、SOP2、404小隊がちゃんといることを確認したヘリアントスは静かに頷く。
「何故私がペルシカとこんな人探しをしているのか。カリーナを連れてきたのか。何故、私だけがこんなにも出遅れてしまったのか。それから始めよう。カリーナ、旧式の機械ですまないが操作を頼む」
眠気でフラフラのカリーナを酷使して自身は紅茶を一口飲む。そんなヘリアントスの目のクマも濃い。誰も彼も、人間側は寝ていないのだろう。
「わかりました。深夜に首根っこつかまれて、今ここにいる意味もでかでかとだしてやりますわー!」
ヤケになったカリーナが叫ぶ。それでも旧式の機械を動かしてスクリーンに情報を投影できる才能を発揮している。それを横目にペルシカリアが気怠げに笑ってコーヒーをねだる。マイペースすぎる人間に404小隊はあきれるばかり。
「なんてかわいそうなカリーナ。あー、ここにコーヒーはないの?」
フラフラと会議室を歩き回って棚をあさるペルシカリア。インスタントコーヒーをみつけてニヤニヤ笑ってそれを抱えている。
「偉い人って、みーんなひとの話を聞かないものなのね」
UMP45が退屈そうに頬杖ついてつぶやいた。416がそれを見咎めるが、聞くことはなかった。
「45。それ以上は彼女らの尊厳のために言わない方がいいわ」
416がやんわりと人の尊厳について教えてみるUも、UMP45は素知らぬ顔で話題をひっぱる。UMP45は可愛らしい少女の外見を最大限に利用して小首を傾げて微笑んだ。
「そうはいってもねえ。私がとやかく言う前にね前金貰っちゃったし、働かないと」
くすくすと笑うUMP45がとんでもないことを言った。416のペリドット のような瞳がこれでもかとばかりに見開かれる。前代未聞の前払いだなんてそんな恐ろしいことは416には初耳だったからであった。
「45?どうしたのよ」
「お話、聞かせてもらえませんかねえ。未成年の略取と誘拐。おまけに児童労働に連続失踪事件で例の保護対象の親族一同から訴えられているヘリアントス上級代行官殿?」
「あの子の親族の所在地が今まで不明で、養育者をペルシカと私に変更する法的手段に出られなかった。これらは私の落ち度ではある」
「ふうん。落ち度は認めるんですね。それで、子供一人のために私達の顔を大金でぶっ叩いたと」
「ちょっと。45」
「まあまあ。私達の取り分多めの契約を直接持ってきたし、もう前金として半分貰ったのよ。後に引けない」
「破格の契約じゃない!」
まさかの半分だと知らなかった416が椅子から転げ落ちた。UMP9は転げ落ちた416を笑い、G11はその大きな物音で飛び起きてしまう。
「うにゃ?にゃいにゃい」
G11が寝ぼけてぽやんとした寝言が彼女の口から飛び出た。その様子を面白がったUMP9が適当に寝言に付き合う。
「はーい。おはよう、にゃいにゃいさん」
「にゃーい。んあ、仕事?」
目元をゴシゴシとこすりかけて、やめたG11。そのさまよった手は冷め切った紅茶を選ぶ。そのまま流れるように何かを言いかけて、冷めたことに不満をぶつけてもしかたないとつぶやきと紅茶を口にした。
「起きててね」
「うん」
案の定、一気に飲んで素直に説明を聞くG11の頭がすぐにこっくりこっくり揺れるのもすぐだった。
「ちゃーんと聞いててね。今はその説明中。ざっくり言えばそこの人形達と一緒に迷子探し。あと迷子と行動する身元不明の人形の身元割り出し」
「迷子ぉ?」
寝ぼけているのに、G11のお茶請けとして皿に盛られているバタークッキーをつまむ手は正確無比そのもの。3枚目を食べ終わり、4枚目に伸びる手は416に叩かれて未遂に終わった。そのふらふらとお茶請けを求める手をG11は空中に置いたまま話を聞いている。
「そう迷子。ヘリアンさんが親族いる子供を勝手に引き取って育ててた子供。今は子供の親族に訴えられてる」
「色々とアウトじゃん」
「だよー。おおかた期限までに五体満足の例の迷子を引き渡せって、裁判までいったんでしょ」
「まったくもってその通りだよUMP9」
「手がかりがないよねー。で、その協力者から性格とか行動とか聞いてルート予想してつかまえるの?」
「あたりー。そんな賢いG11にはチョコレートをあげる」
UMP9がポケットからチョコレートを一粒取り出してG11に食べさせる。そのままG11の小さな頭を撫でて癒しを求めているUMP9の需要が満たされる。
「わーい!」
G11がチョコレートを口いっぱいに頬張っているのを横目にヘリアントスは仕切り直しの言葉を述べた。
「話題がそれる!仕切り直しだ!要点は迷子探し。対象についてはそこのSOPMOD2から聞くように。となりのRO635は製造間もなくてこれから訓練。以上!」