すっかり冷えた白湯をコップの中でくるくる転がして思う。最近なんだか同じ顔と同じ姓をしたやつに妙に関わりを持っている。今はやっと長旅の中継地点に過ぎないグリフィン基地にいる。電気の通っていない予備の宿舎に適当に転がり込んで、情報整理中。しばらく休息にメンバーを送り出したし、ひとりでタブレットをいじっていた。
「いやなつながりね」
最初はある人間の死を偽装しての護送だった。護送対象の親戚で、使いっぱしりと名乗る男とやった。そこから月に一度口止め料としてまとまった額を我々の口にねじ込むのはべつに良い。何度も何度も同じ一族の死を偽装して特定のポイントまで護送するあたりで私も気づけばよかった。
「私は、面倒ごとにまた巻き込まれるんだね」
タブレットPCの表面を撫でて、力なく笑う。今回もまたあの一族のゴタゴタに巻き込まれることがわかってしまった。あの自称使いっ走りはそろそろこちらへ接触を図るだろう。その前に情報共有したいし、休息に出している皆を呼び戻しておかないと。
「大方、ヘリアントスからの任務と同じでしょうね。緑に浸食されたクリーンな地帯を泥臭く走り回っての迷子探し」
国家制度の崩壊、治安の悪化や崩壊液とは程遠い南の果てにある緑の楽土。そこまで行って、何があるのだろうか。いや、あるにはあるんだろう。あそこには極東からの移民だけで0から築き上げた街があるらしいし。ヘリアントスからの資料の端に載っていたから、黄金楽土からの子孫の街がきっとあるんだろう。きっと私達には関係ない話だ。通信機を操作して9の項目を選んでボタンを押す。あの子のことだからすぐにでてくれるはず。
「もしもしー。9、全員つれて今から戻ってきてくれない?めんどくさいことになったの」
「もしもし45姉?いいよ!どうせ辺境でやることないし、今からやるね」
「お願い。それじゃ、あとでね」
あっさりと9は了承してくれた。今のところ、これでいい。大きくため息をついて錆び付いた椅子に深くもたれる。冷たい椅子がきしむ嫌な音だけが私の内面と冬の空気に傷をつけていく。
「二度あることは三度ある、か。他にも何か忘れているような気がする。もっとこう、底の底に置いてきたような何かを忘れているような」
一人きりだとどうも、ひとりごとが多くなってしまう。ひとりごとを消したくて水を飲もうとコップを傾けたその時だった。9から通信が入る。遠慮がちにこちらを伺う9の声に意識が引き戻される。考えすぎていたみたい。
「45姉、いる?」
「いるよ。おいで」
さてさて、この面倒くさい事態をどう説明しようか。
「集まってくれてありがとう。早速会議としゃれ込みましょう。この世界で生き残るために」
私達は所詮、川面に浮かぶ木の葉でしかない。いつか、小さな流れ一つで沈んで消える。それまで足掻いて見せよう。そう意気込んで回りくどい二重の依頼の説明を始めた。