山奥の野営地で皆で無言でショートブレッドをかじる。アンジェは堅物だし、AN-94は四角四面で二言目には「AK-12がそう言うのなら」だし、M4は復讐鬼でおしゃべりしてくれないし、AR-15もそう。つまらない。しかもAR小隊の二人は何かの紙切れをみて和んでいるのにちっとも教えてくれない。近づいて聞いてみようにも、隠されて威嚇までされる始末。本当につまらない。ふくれっつらのまんまAR小隊の過去を調べていくと面白いことにたどり着いた。特殊性の高い小隊を扱う指揮官に結ばされる契約。秘密厳守から始まり、面白いことで終わる契約に私の中の遊び心みたいな何かが惹かれた。
「AR小隊の指揮官になったら、存在を秘匿。死んだらあらゆる記録を抹消。なんて面白いのかしら。ねえ、M4。その写真の中の指揮官は何人目かしら?」
M4の目がカッと見開かれる。おお、怖い怖い。でも、あの紙切れはAR小隊の指揮官なのは間違いないみたい。もうちょっと遊ぼうっと。
「あなたには関係ない話なんだけど」
「興味が湧いたの。あなたたちの指揮官に会ってみたい」
「どうしてよ」
M4のその真剣な表情。それが見たかった。もっと見たいから揺さぶって遊ぼう。
「指揮官のためなら、命令を無視できそうな顔してるから」
「やったことはあるし、指揮官からはもう二度とやらないでほしいと泣かれたこともあるけど。それとこれとは別。絶対にイヤ」
「イヤ、かあ。ふうん。へえ、そうなんだ。指揮官の居場所と安否を知りたくないのね」
物すごい速さでM4が私の肩を掴んできた。そこまで必死になるほど大切な人なら手放さなければいいのに。
「今すぐその情報を吐きなさい。すべて残らず今すぐに」
「待って待って。まずはあなたが冷静じゃないと」
私の繊細な肩がミシミシときしんで悲鳴をあげている。その筋力はどこから来た。戦闘でも発揮してほしいものを今発揮してどうする。チラリと横目でみれば、私の隣でもそもそと食べていたはずのAN-94がぽかんと口を開けてフリーズしていた。かわいい。
「94。ねえってば」
「12……。あっ、M4!AK-12は繊細なんだ。程々にしてくれると助かるのだが」
「待って?その言い方だと、適度に私をしばいた方が上手くいくみたいなことになるんだけど」
「ついうっかりしていた」
AN-94がこてんと首を傾げてショートブレッド最後の一欠片を口に放り込む。天然ボケ殺しな相方のあまりにも予想外すぎる言葉に目を開いてしまった。AN-94、恐ろしい子!
「待って。本当は私のこと嫌いでしょ?」
「好きも嫌いもない。AK-12はAK-12だ。それ以上でもそれ以下でもない」
手のひらに残ったショートブレッドのカケラといつもみたいな言葉をさらりと口にしたAN-94に驚愕する。この子には漫才の才能がある。けど、惜しいことに私達には銃をとることしかない。
「ひどいわアンジェ!助けてよ。山奥の隠れ里の宿でのんびりしたいでしょう」
見様見真似で泣き落としを試みるがアンジェには効きやしない。
「どうせ私の金を勝手に使って予約とったろう」
「アンジェってば、天才」
「おまえの繊細な肩が壊れても私は知らない」
「助けてください」
冗談が通じない輩の中にいるのがつらい。ここは素直に引き下がる。じゃないとM4は私の肩を壊しかねない。
「素直でよろしい。M4そこまでにしておいてくれると助かる。こんなのでも貴重な戦力だから」
「はい」
「私は許された」
M4から解放された喜びを噛み締めながらヨロヨロと這い出る。今日はなんて災難な日!
「まだよ。はやく情報を吐きなさい」
私の胸ぐら掴んですごむことないのに。ひどい。
「ひどいわ。今度の食事はシナモンロールにしてやるんだから」
M4へのささやかな復讐を宣告してやった。M4苦い顔が見れたので良しとする。
「AK-12。あなたが何を考えているのか説明してちょうだい」
「仰せのままに」
アンジェの指示を仰ぐために資料を頭の中で並べ替えて言い訳をこねくり回し、ややあって口を開いた。