対価を支払って「足」を得たのはいい。人ならざるものの使い方がなっていない私の落ち度があるから。まさか、契約したアレが使う術の一つ、一瞬のうちに違う場所へ飛んでいけるってやつにこんな落とし穴があるなんて。途中までは不思議な術で飛んでいけたのは良かった。問題はそこから。五分で我が子そっくりの顔と感性の人ならざるものと膝を突き合わせるのに疲れた。
「知らない場所にはいけないってはやく言って」
山の中、道なき道を駆けていく。私は走って、アレはふわふわと空を飛んで。
「うっかりしてたわ。ごめん。あ、そこの川越えんと上行って」
「はいはい。空を飛べるあなたにこの山を走る苦労はわからないんでしょうね」
「んにゃわかるでー。そんなに飛びたかったん?」
「べつに」
どうやら私の皮肉が通じなかったらしい。こてんと首を傾げる、そんな所もすみれに似ていてちょっとだけ腹が立つ。これが妖怪。こんなのの親戚なら、あの子はどんな風に育つのか。私達はどんな風に育てなくてはいけないのか。それが気になる。
「ほーか。この先なんやろな」
「まさか、あなたどこにつくか知らないで飛んでるの?」
まさか案内人が行き先を知らないなんて。どう言うことなのか問い詰めた。
「知らないってどういうことよ。ねぼけているの?」
「知らんもんは知らんよー。わて、あの子らの後や辿っとるだけやし」
私には見えない痕跡を辿っているだけと知って膝から力が抜けそうになった。魔法って不思議なようで不便でアナログだった。幻想がドンドン壊れていく。もう素直にぶっちゃけた方がいいと判断してわりとボロクソに言ってみる。
「うーん。不思議生物の言うことはわからない」
「そういうもんやで。うちらって」
「あの子のことはまじめに育てたい」
「そらええなあ。んであとなー。あの子も選んだらうちみたいになるで」
「選べば、とは?」
予想外の言葉がでてきて驚いた。ぎょっとして立ち止まってじっと優しい笑顔を見る。もしかしたは、あの子が物理法則をぶっちぎるような不可思議生物になる?信じられない。
「あの子にはどう生きていきたいか選ぶ権利と何を得て失うのかを知る権利があるんや。そんだけ」
私達のかわいい娘は人のままで、銃を握らずにすむ人生であってほしいから私達は戦っている。
「だとしても、すみれが人のままで生きていけるようにするのが私達の義務だから」
「どっちにしても、うちは応援するで。ほれ、まあちょっとや。行こか」
対価をよこせと言うくせに、わずかなもので満足する目の前の人ならざるものは優しすぎる。そんな優しさと我が子の優しさを勝手に重ねて苦笑してしまう。
「優しすぎるのよ。すみれもあなたも」
「さあなあ」
わざとらしくすっとぼけるのも優しさだと判断して立ち直ることにした。すみれ、迎えにいくから待っていて。