最愛の我が子が散歩にでかけたと言い張るAK-12と仲良くおやつを食べていた。すみれに聞けば、滞在している宿の主人が好意で作ってくれたものをかごに詰めて、これまた好意で解放してくれた休校中の小学校まで持ってきたのだと教えてくれた。さっきまでここでAK-12とUMP40の三人で遊んでいたらしい。すみれの表情が生き生きとしているし、怪我や病気もしていない。私を見つけたすみれの笑顔が愛おしい。この子がおやつを食べ終わったら抱きしめたい。
「お姉ちゃん久しぶり」
「すみれ。やっと会えた」
どう言うことかとUMP40に説明を求めれば彼女も困っているみたいだった。
「ねえ、40」
「あー、M4ごめん。あたいにもわかんない。こっそりM16から教えてもらった宿でのんびりしてたらこの顔と性能だけは良さそうなのが来てさ。よくわかんないうちにすみれと友達になった」
短期間で保護者が板についたUMP40がすみれの口元を拭いたり、そのままでは食べづらいカスタードパイを切り分けている。今までそれは私のやることだったからなんだかソワソワする。
「あついから、気をつけてね」
「おかあさんありがとう」
すみれの無邪気な笑顔が見える。今までそんなふうに笑ったのなんてなかったから嬉しい。M16姉さんの紹介で来た安全な場所でやっと笑えるようになって良かった。
「私の娘は世界一かわいい」
「あたいの娘は世界一かわいい」
かわいい娘の成長を頭に焼き付けながらUMP40と握手。その様子をAK-12が不思議そうに見つめている。本当にわからないと言った表情をしている。人を食ったような物言いをするAK-12の根底に触れた気がする。人にこうあるべきと、作られたようにしか動かない人形らしい人形の姿。私達AR小隊とUMP40が例外なだけで、人形の本質とは、本来ならばこうなんだろう。
「人形と人間って家族になれるのかしら」
「それはわたしが決めるの。私達は家族だよ」
すみれがきっぱりと言い切った。カスタードクリームとパイのかけらで口の周りがべたべたでもぐもぐしながらだから、とっても説得力に欠けている。でも、我が子のそこがまた愛おしい。
「そうね。それは私達が決めること。すみれを守るためならなんでもする」
「あたいだって!」
保護者として、家族として覚悟を決めている私達に対してAK-12は首を傾げるばかりだった。
「わからないわ。この子と友達になろうと言われて、好奇心からある種の対等な関係性を作ろうとしているのに私には何一つわからない」
「それはAK-12が1から定義すれば良いこと」
「M4。私達人形には創造や創作は困難を極めるのをわかって言ってるの?信じられない」
「できないと言う前にやれ」
「無茶なことを。まあ、いいわ。やってあげる。でもね、その前にM4の後ろでニコニコしてるすみれそっくりの誰かさんについて教えてくれない?食べるとこを見られるのは慣れてないの」
「まだいたのか」
「まだおるで。まだいるやろ?」
振り返ると人ならざるものはまだニコニコしている。見れば見るほどすみれそっくりなその顔にギョッとして後ずさる。すみれも自分そっくりなやつがいるとは思っていなかったみたいでぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
「おやつを食べ終えたすみれを抱きしめて、その後すぐにAK-12の首根っこ掴んで戻るためにいるけども」
驚きの余りふるえた声がでてしまった。それでもまだ人ならざるものはまだニコニコしている。
「うち?」
「ええ。そろそろあなたを知りたい」
「ええん?」
「すみれのため、私のために知りたいの」
「ええよー。あ、でもM-16ちゃんとAR-15ちゃんとSOPちゃんにはうちの名前秘密なー。うちのこと調べて名前あてるんが対価やし」
「どうしてそこで三人の名前がでるのよ」
「さあ?いるやろと思ただけ」
「さあって」
すみれに始まり、どうも私達とこれの血からは逃げられないらしい。諦めて名前を聞くことにした。人ならざるものは契約で縛れば余計なことはできやしないから、聞き出して名前で縛ってしまえば問題はない。
「名前をよこせ」
「はーい。こっちきてなー」
耳を貸せと誘われて近づく。ささやかれた名前とその意味、改めて聞いたすみれとの続柄をしっかりと己に刻む。血の恐ろしさに舌を巻いたのは秘密だ。