私の嫌な予感というのはだいたいあたる。最初、迷子探しの依頼がペルシカとヘリアンから破格の値段と拘束時間が提示されたときにやめればよかった。後悔しても遅かったみたい。
「ふー。あー、これ時間かかるやつだ」
件の迷子についてアレコレと調べてみる。父母の経歴はどこも黒くはない。変なところを強いて挙げれば国籍と人種がマイノリティの極みの日本人であることくらい。娘の三歳を祝う旅行に友人を連れて行って、偶然発生した火災で死亡。ここまではよくあること。でもそこから迷子の人生はおかしくなった。ペルシカとヘリアンが結託して迷子の存在を秘匿。その後空席のAR小隊の専属指揮官に据えることで最重要機密事項にしてしまう。その前後からおかしなことが増えていく。どう考えてもあの迷子の親戚としか思えない顔と家名の人間がグリフィンがするすると入り込んでは何かを探すかのような動きをしていた。そのうちの何人かはAR小隊の専属指揮官まで上り詰めていた。まあ、あんなおかしいやつらの指揮官だったってのもあるんだろうか作戦中の不慮の事故で死んだことになってる。あまりにもおそまつな調査で何も考えずに死んだと決めつけられた。SOP2から聞けば、迷子はペルシカのラボ棟最奥で隠されるように育てられたらしい。保護者代わりにAR小隊をつけて、ペルシカもヘリアンも自分なりに文通や贈り物をしてはいたもののいびつに育ってしまったと。礼儀正しく、勉強熱心でおとなしいが情緒面はとても幼くて自己主張ができない子供に育ってしまったらしい。
「何これ、バカみたい。全部大人の責任じゃない」
暖房がろくにきかない古い部屋で一人悪態をつく。背伸びして怒りを静かにため息と同時に吐き出せば、サビの浮いた椅子が悲鳴をあげる。あてがわれた一夜の宿に不満もあったし、ヘリアンあたりに抗議と集めた情報をたーっぷりつめこんだメールを送ってやろうかしら?
「どこまであの迷子の親戚としか思えない人間がここまで潜り込んでたって情報聞いたら、どんな顔するのかしら。楽しみね」
その不満をバネにAR小隊の専属指揮官の経歴を洗い出す。名前、出身者、生まれた場所はどこの管轄か。それらを一つずつ拾い上げてはまとめていく。
「ビンゴ!歴代のAR小隊の専属指揮官も、ちょくちょく現れる優秀な職員もみーんな迷子の親戚。んで、今もその親戚の人が僻地で指揮官やってると」
親戚側も探りにきてる。つまり、ペルシカかヘリアン側は何を隠している。そこをつついて遊んでみようかな。善は急げ。親切な私が教えてあげましょう。