「こんな夜中に呼び出すなんて良い御身分ですこと。まあそうでしょうねえ。例の迷子の祖母と叔父と親族の連名で訴えられてるんでしょう?未成年を連れ去って存在を黙っていればまあ、そうなるでしょうね。今年中に引き渡さないとどこまで罪状が膨れ上がるのか楽しみにしていますわー」
ペルシカリア、ヘリアントスの二名に対して猫撫で声かつ笑顔でまずはご挨拶。私を呼びつけたお二人がやらかしたことの訴状のコピーをちらつかせれば、さすがにしおしおになって黙る。
「ほーんとバカよねえ。守りたかったのなら、もっと違う方法があったはずじゃない」
自分の何気ない一言のせいでザリザリとノイズ混じりのあいまいで不安定な音声と光景が脳裏をよぎる。最近多くなっているノイズから生まれる悲しみと痛みから目を逸らして皮肉屋を気取る。そうでもしないと生き残れない。
「ごもっともで」
ペルシカリアがしょぼくれて視線を手元のコーヒーカップに落としているのを笑って聞き流す。たった一人の子供のためにえらい人二人がわざわざここまで来る理由もついでに聞いておこう。じゃないと割りに合わない。
「子供一人にこだわるなんて馬鹿みたい」
「はたからみれば、我々二人はただの馬鹿だろうな。ただのエゴなのもわかりきっているさ。愛しているから」
「カゴの鳥にするだけが愛なの?それとも、残酷な道一つだけを提示して選ばせるふりをさせるのも愛なの?」
「違うはず。きっと」
ペルシカリアの気弱な言葉をまた聞き流す。返す言葉を皮肉を笑顔にのせて口にしてみれば、また脳裏にあいまいな映像がよぎる。あの時、とても残酷なことをなぜ私に、いや違う。どうして自分のことのように考えるのか。その疑念を振り払って笑顔を貼り付ける。
「お聞かせ願いましょう。例の迷子の個人情報と、背景を。依頼料上乗せで」
手のひらを向こうに差し出せばヘリアントスとペルシカリアは素直に頷いて電卓の電源をつける。そうこなくっちゃ。
「ペルシカ、我々の財布から折半で」
「はいよ。ヘリアン。赤字だして死地に飛びこまないと未来は掴めないってわかったし、今はそれだけでいいや」
学生時代からの友人のはずなのにさも当たり前のように距離が近くてボディタッチ多めで周囲を勘違いさせそうな、アッツアツのおふたりをさらにからかうためにまた口を開く。
「お二人が結婚して迷子を養子にとれば全部丸くおさまるんじゃない。親戚が許せば、の話だけど」
「いいかも。ねえヘリアン」
ペルシカリアがヘリアントスの腰に手を回す。へえ、だいたーん。私がケラケラ笑えばヘリアントスがわざとらしく咳払いでごまかした。
「ペルシカ。それよりも依頼料、だ」
「ヘリアンのいけず」
ニヤニヤと下世話な想像していますアピールをすればさらに反応してくれる。そのわかりやすさにある意味で感謝しながら依頼料の上乗せ分についての交渉にはいることにした。