「久しぶりだな」
「久しぶりじゃないよ!どこにいってたの!M4もAR-15もいなくなるし、すみれまで誘拐されるし、最悪だよ!」
雰囲気や表情が大人びて、憂いを帯びたSOP2が私に苦しみを訴える。私達AR小隊が薄氷の上にそっと築いた幸せと芽吹いたばかりの春の花は無惨にも奪われた。自らの命と引き換えにしてでも私達を守ってくれた人達の顔を思い出しては苦しくてしかたない。でも、悲しむのは後回しにしないと。無理に笑顔を作っては皮肉屋を気取る。そうでもしないと私自身が壊れてしまう。
「うんうんそれは災難だなあ。なあ、SOP2。すみれについて知りたくないか?」
「知りたい」
すみれについて情報をちらつかせれば瞬く間に泣きじゃくる幼い子供から、覚悟を決めた大人の表情をするSOP2。ああ、成長したなあ。良くやったと褒めて抱きしめたい。でもそれはずっと後。きゅっと唇を引き結んで今だけは悪役を演じないと。
「私のことは黙っていてくれて、二人っきり、通信は切ってくれるなら話そう」
「いいよ」
「SOP2!何考えてるの!」
人ならざるもの経由で知った、AR小隊の新人の言葉は至極真っ当なことではある。いかにも真面目で、言い出したらテコでも動かないのがわかる。きっと苦労するが、SOP2のいい相棒になるだろう。
「私もM16もここでやり合って消耗するのは避けたい。情報を対価にそこそこなところで手打ちにするのが一番だよ」
おっ、正論と言ってないだけでうそはついてないを学んで使えるようになったか。戦場ではこれも必要な技能だ。さすが自慢の私の妹。
「そうだな。私だって派手な動きはしたくない」
正直な所、すみれに関する事は私達には最重要機密情報に等しい。SOP2だって知りたいから必死になって探しているのはこっちも知ってる。だから、ちょっとだけぼかしてすみれが無事だってことを告げよう。
「だからといって、戦場に一人きりでしかも通信を切るなんてそんな」
「ねえ、RO635。私を、私達をなんだと思ってるの?」
「でも、いまは」
「変わらないよ」
SOP2の揺るぎない眼差しがRO635をきつく射止める。何があっても揺らがない信頼がとても快い。その懐かしさに近い感覚に目を細めてSOP2の次の言葉を待っていた。
「ははっ、SOP2は変わらないなあ。それでいい」
「そうだね。RO、装甲車で待ってるカリーナさんとこに戻って。私は後から戻るから」
SOP2がRO635の背中を押す。そりゃあもうグイグイ押し出していく。変わらないなあ。その強引さとカンに何度助けられたか。
「SOP2!」
「私ってそんなに頼りないかなあ。おねがい」
急にSOP2が縋りつくような泣き顔をしてRO635に迫る。それはずるい女がやる動きだ。私は教えた事ないぞ。
「もう!今回だけだから。あとでお説教です!」
「ありがとう」
RO635が何か言いたそうにしていが、去っていった。SOP2を信じてくれてありがとうRO635。何があればこっそり助けよう。
「いい子だな」
「真面目すぎて息苦しくないかって不安になっちゃうけど、とってもいい子だよ」
「よかったな」
「良かった。ねえ、M16。すみれのことを教えて」
「ああ、話そう」
どこからどう話そうかと考えて、口を開くまでの時間がとても長く感じられた。