何ごとこと追いかけてきたアンジェが、ひょっこり現れて私は驚いているし、アンジェは何もない所からすみれそっくりの人っぽい何かがひょっこり現れたことに驚いている。たっぷり三分ほどアンジェは固まって、やっと頭が現実を飲み込めてきたのかとにかく口を動かし始めた。
「何?新手の敵なの?私の親友に化けた敵?」
「敵ではないですよ。AR小隊がお互いに黙って膨大な貸しを積み上げてる何ではありますが」
私はもう腹を括って、道中の放棄された街から拾ってきた保存食を口に放り込む。すみれがあわてて自分の分を差し出すが、やんわり断って食べさせる。私に命はないけれどこの子が私達AR小隊の命だと言い切ることができるだろう。
「何かって、何よ。ハッキリしなさい」
「人がお伽話の中にしかもうないと思い込んでいる、人ならざるモノの一つ」
横から人ならざるものがニコニコしながら私の顔をじーっと覗き込んできた。そんなにこの味がしないくせに吐くほどまずい保存食が食べたいのね。少しはくれてやるかと食わせた。そう。泣くほど嬉しいの。もっと食べればいいと渡せば逃げた。まずくても食べないと生きていけないのに、贅沢ね。
「そんなの、あるわけないじゃない」
「信じるかはアンジェしだいですよ。私だって完全に理解しているわけじゃない。でも、ハッキリ言えることは一つだけ。コレは誰かの姿を真似ているわけではない」
「せやで。うちは最初からこの顔や」
人ならざるものがやっと口を開いたか。が、これはこれでうるさい。話題を変えよう。
「まあ、それはいいんですよ。どうでもいい。私達の代わりにすみれを育ててくれているUMP40に聞きたいことがあるの。あなたがいままで何をしてきたか、人で言えばどこの生まれか。その不自然な頭の傷のことも」
今まで触れなかったUMP40の根底に手を伸ばす。覚悟を決めた私をちらりと見て、UMP40はふにゃりと笑った。このしょうがないなという笑い方がどこかM16姉さんに似ていて胸がきゅっと痛む。
「うん。そうだね。M4には話してもいいかも。長くなるけどいいかな?遊ぶために借りてきたチョークと黒板使わないと説明は難しいと思う」
すみれが食べ終わったことを確認してから借りたチョークをカバンから取り出す優しさが嬉しい。
「ええ。アンジェ」
「時間ならあるわ。私だって知りたいし。乗りかかった船、よ」
アンジェが頷き、AK-12やAN-94に適当な椅子に座れと指示を出した。
「ありがとう。それじゃあ、聞いてくれる?あたいともう一人のあたいと言っても過言ではないの親友の始まりと、ある意味での終わり。そして、どうやってここまできたのかって言う蛇足を」
UMP40の手の中の白いチョークが繊細な文字を書く。美しい絵とわかりやすい地図、存在を消された人形にとっては残酷な歴史のひとかけらが私達を彼女の今までに引きずりこんだ。