「私にいい考えがあります。でも、その前にもう一度詳しく聞きたいことがあるの。ねえ、40。あなたが親友と別れることになった事件。その瞬間に何度がって今ここにいるのか。どんな人や人形と出会って彼らがどうなったのかを」
書きかけの黒板の文字を指差して、グリフィンやアンジェが蝶事件と呼んだ事の顛末についてUMP40にたずねた。UMP40がこくりと頷いて彼女の歴史のかけらを黒板につづる。
「実はね、あたいと45にウィルスがしかけられていたの。でも、45はあたいの子機って位置付けだったからあたいが消えれば45だけは生き残れる。だから、だからあの時に自分が自分でいられるうちに終わらせてと願って45に銃口を向けさせて。それで、45はあたいを撃ったはずだった」
か細い声が一度止まる。UMP40が頭の包帯を解いて私達にみせた。そこには、頭を貫かずに真上に逸れていった弾痕があった。
「45が射撃が下手だったのと、やっぱり撃ちたくなかったみたい。逸れてあたいは吹っ飛ばされて頭を強く打った。それで人間で言う仮死状態になって、それをウィルスのシステムは死亡と判定した。そこまでなら、あたいは死んでたんだけどさ。そのあと建物の崩壊からの漏電事故があって、そのショックで復旧したの。うん、あれは奇跡としか言えない」
黒板にコツコツと文字が書き足されていく。その文字を目で追いながら、我々もそれは奇跡だと頷く。
「その後この終わりかけの世界をさまよう中、すみれと出会って家族になったと」
UMP40が話を続けやすくするために、彼女の言葉に私の言葉をのせる。それがとても嬉しかったようで年頃の乙女のようにはにかむUMP40。どうやら緊張しなくなったみたいで良かった。
「うん。そう。45みたいで見捨てられなかった。今は出会えて良かったよ。うーん。あとは、そうだね、あの時に」
思案を重ね曖昧な笑みを浮かべたUMP40が糸を手繰るように過去を書き連ねている。その途中、ふいに手が止まる。どうしたのだろうか。どこか痛むのか。
「40?どうしたの?」
「頭を打った衝撃で記憶が欠けてることがある。あたいと45はね、あの日にこの人に何かと言葉を託されて……。あたいは45にその何かと言葉を託して、何があっても忘れるなって言って」
UMP40の細い指の先のチョークがとある人物を描くと動揺したアンジェが反応する。正直な所、いつも冷静な彼女がこれほど感情を露わにするなんて初めてで誰も動けなかった。
「リコ!」
「知ってるんだ」
「学生時代からの友人だった。すみれの両親とも友人で、赤ん坊だったすみれを最初に抱いたやつでもあるの。贈り物を山ほど用意するくらいに、すみれを自分の子供みたいにかわいがってたのに」
がっくりと肩を落とすアンジェを慰めたくて頭を撫でる。すみれ、AR-15もAK-12にAN-94もアンジェを慰めたくてひっつく。アンジェは普段そんなのはいらないって言うだろうけど、こんな時は違う。やりたいからやる。だれがなんと言おうとアンジェに味方をする。我が子を愛してくれる人を私は愛すると決めた。
「すみれ。良かったね。愛してくれる人がいたよ」
アンジェの言葉からやわらかい表情に変わったUMP40がすみれに笑いかける。我が子を愛してくれてありがとう。あなたがいるから戦える。
「おかあさん。うん、わたしはひとりじゃない。つかれたからだっこ」
「おいで」
すみれも楽しそうにUMP40にかけよるのを見られるだけで胸があたたかくなる。これは言わないと。次はいつ会えるかわからないもの。
「すみれを愛してくれてありがとう。40がこうしてすみれを守って育ててくれるから戦える」
「こっちこそ、大切な子供を託してくれてありがとう。守るものがあるからあたいは戦えるんだ」
「私こそ感謝しないと。UMP40、M4、AR-15。ありがとう。親友夫婦の、私達の希望を守ってくれてありがとう。やるべきことを決めたわ」
慰めが効いたのかアンジェが拳をぐっと握りしめた後一人ずつ私達の頭を撫でてくれた。立ち直れて何より。さあ、戦おう。