やけに静かな森の中を私達404小隊だけで進んでいく。うっすらと霧がかかる山中は獣の息遣いすら聞こえない。
「45姉。あのね、昨日ね。ずーっとグリフィンの偵察部隊とドローンからの情報とM4たちの出現情報と、私達があの時そのまま進んでいたらどこに行き着くのかを机の上に並べてみていたの」
「それで?」
「あのままうっかり進んでいたら軍の基地とか研究施設とかにつっこむところだった」
「ふうん。あいつらは私たちの邪魔をしたいけど、生き残ってほしいのね。めんどくさいやつら」
何か言いたそうな思春期の子供みたいな事を口にするが、ひやりとしていた。まともな装備も持たず詳細な地図もない、ただ闇雲に進むだけの道中で軍と出会ったら私たちなんて簡単に捻り潰されて終わる。そんなことにならなくてよかったと口の中で言葉だけ作っては不安と一緒に飲み込んだ。ちらりと視線を斜め後ろに向けると9が何かをずっと考えているみたい。
「45姉」
「なあに」
私に続いて9が大地を蹴る、軽くてちいさな跳ねる音がした。足元には動植物が作った穴や沼だらけで歩きにくくて嫌になる。416が小さく山を行くことへの不満をもらしたが知らないふりをしておく。これだから都会っ子はいやになる。
「アンジェさんに連絡とれる?」
「やれるだけやっておくわ」
「あとね。ずっと45姉、働き詰めで考え事ばっかりしてるのが心配なの」
「うん?」
表情にでていたのかな?わからない。でも、9は心配性なところがあるしどうすべきか。思考が定まらないでいると何かを覚悟した9が私に一つ提案をしてきた。
「45姉。定期報告、まだでしょ」
「そうね。休める所を探すわ」
416とG11に合図して足を止めさせる。
「ここらへんで30分ずつ交代で休憩ね。ついでに私は連絡をいれて、情報を仕入れてみるつもり」
私の合図でまず最初に416とG11が休憩に入る。私と9は離れた位置に散開して互いの死角になる角度を補うように立つ。休憩中の二人はポケットやカバンから軽食やお菓子を取り出してつまんではいるものの警戒はゆるめない。
「45姉。このあたりで動くものって言ったら牧場だった場所から脱走した動物くらいしかいないね」
「生きている馬に牛なんて初めて見たわ」
「ねえねえ、馬って乗れるんでしょ?やってみたい!」
「あのね、9。私達人形と違って生き物には訓練が必要なの。人になれる訓練、その先にある人を乗せて走る訓練にとてつもない手間と時間がかかるの。野生化した馬には乗れないわ」
「えー、つまんない」
「ほらほら、警戒をゆるめないの!」
「はーい」
かわいい妹をたしなめてから、銃を握り直す。最近、雇い主であるアンジェリアとも連絡はとれていない。大きく重たいため息をついて、ポケットの中に手を突っ込んで携帯端末を探す。冷たい端末が私の考えを現実的な方向に引き戻してくれた。
「こんなとうの昔に終わった世界の、果てみたいなところまできてどうなるのかしら」
アンジェリアがすぐにでてくれることを願って空を仰いだ。