天気予報はのんきに「快晴が数日続くでしょう」だなんて笑っていたのがうらめしい。横殴りの風雨が視界を阻む。定期連絡のために口を開こうとすると雨水が口の中に入ってしまう。
「45姉!こっちはすぐに片付きそう!でも頭に血が上った416がM16を追いかけていっちゃった!」
慌てた9が通信をよこしてくる。それはよくない。あのねぼすけはどうしたのかと聞いてみれば、9の隣で半泣きで骨董品をただの鉄屑に変えているらしい。それならならまだいい。アンジェを回収してあの特大級のバカの頭を一発ぶん殴って連れ帰る。それだけ。
「本当に、何もかもいやになるわ」
口に入った雨水がなんとなく不快だからと、ぐしゃぐしゃにぬれた袖口で口を拭ってしっかりと声を上げる。
「アンジェ。定時連絡の時間に遅刻よ。ペナルティとして報酬上乗せで。スパイまがいの活動って結構疲れるのよ?」
「余計な口を動かす前に足と手を動かしたら?何かにちょっかいかけられてる音だけは聞こえるわ」
皮肉には皮肉で返す雇い主になんだか少しだけほっとして口元が緩んだ。この人はこうでなくては。
「行方不明のM16A1を追いかけていたら、何もない所へ誘導されていたみたい。M16が煽って「じゃあ、私の行く先の反対には何があると思う?」なんて笑うし。それを聞いた416がムキになったら軍の施設らしい何の警備ロボットに追いかけ回されている最中。本部への通信機能なんかなくて、ただ動いているものをハチの巣にするだけの古くて単純なやつなんだけど数が多くて」
廃墟の壁を盾に間接的に416に文句を言ってやった。カビが生えたような設備をまだほったらかしにしている人間側も悪いし、引っかかって泣きを見ている私達も悪い。この辺りまで来ると雪じゃなくて、真冬でも雨だから動きにくいったらありゃしない。
「もうすぐあのカビの生えた骨董品はただのガラクタになるから気にしないで。それより、アンジェ」
さっき見たキレちらかした416がいつもみたいにうるさいと顔をしかめた。あとで連れ戻して黙らせないと。こういう時にあと一人いてくれれば、あの子がいてくれたら。都合の良い願いが泡みたいに膨れ上がってパチンと弾けた。あの子って誰なんだ?いやだ思い出したくない。傷口を素手でがりがりとこじ開けるような痛みが胸の内に広がる。そんな痛みを振り払って声だけはいつもの不機嫌な私を装って笑う。
「なに」
「あとで会えない?さびしくなったの」
「ドレスコードは?」
「ドレスにアクセサリーにお化粧も忘れないで。416のバカがM16の顔を見たら深追いしちゃったの。あ、そうね。あのバカにぶっ掛ける冷水もほしいわ」
「お姫様の仰せのままに」
本当は叫びたいんだけどぐっとこらえて笑顔をつくる。取り繕うのは得意なの。