※この作品はR-18です。

ゴーストフロントライン   作:蓮見民江

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秘密は毒のように甘く 五の後半の前編?

いつも以上によく笑う先生に手を引かれて霧に包まれた町を歩いていく。小さくてどこか古めかしい町並みは物語の中を歩いているような現実味がない。いや、深層心理の中だから現実じゃないんだけどさ。オレにとってはここがもとになった町が実在したなんて信じられない。

「ここは僕の故郷をもとにできているんです。ここは僕の家。で、となりは父方の伯父だと思っていたら生みの親だった人の家」

「一言に詰め込みすぎ。もっと言葉を小出しにしてよ」

先生が指差した先の木造の大きな家を目で追った。大人数でも住めそうなしっかりとした家だなとぼんやりした感想を持つが、先生のあまりにも端折りすぎた言葉にずっこけてしまう。足りていない言葉だらけじゃんって言えば先生はふにゃっと笑って少しずつ説明のために言葉を重ねた。

「えっとですねえ。実はボクは5人きょうだいの末っ子なんですけどね、上のきょうだいとは20とか25も年が離れているんですよ。生みの親は経済的にも年齢的にも厳しいので、これまた自分の年の離れた弟夫婦に養子にだしたんですよ」

「へえ。いつ知ったの?」

「五歳くらいのときに別の親戚がぽろっとこぼしましてねえ。自分が養子だってことよりも、きょうだいとの歳の差にびっくりしましたよ」

「親子くらい離れてるもんな」

先生の小さくて、傷もタコもないやわらかい手をそっと握っているこの瞬間がとても浮かれている自分がいた。恋に恋する時期特有の相手に夢を見て浮ついているこの感覚、センセ相手なら悪くはないな。

「なあ、センセ」

「どうしたんですか?耳まで赤くて、どこか具合が悪いのでしょうか?」

先生が振り返ってオレに手を伸ばす。その手を引き寄せて抱き寄せてオレの顔が見えないようにして、それでつたない言葉を重ねてでも自分の考えをしっかり言う。

「いや、違う。えっと、その。この時間が、この世界が永遠に続けば良いなってそんなこと考えた自分が馬鹿みたいで、そんで、この世界に閉じこもっていられたら幸せなのにって。ごめん、言葉ぐちゃぐちゃで」

「いいんですよ。僕もそう思っています。ここで永遠に二人きりなら幸せなのにって。でもそれはダメなんですよって自分に言い聞かせておかないと、執着と独占欲と醜い欲望を君にぶつけそうになる」

ああ、先生も人?いきもの?だった。オレは先生のその部分がもっと見たい。欲しい。

「センセ、もっとちょうだい。その欲望と執着と独占欲をオレだけに」

「ふふふ。それじゃ、僕から君にお願いを二つほど。今の末宵くんを教えてください。オアシスに来てから好きになった事や物を毎日一つずつ。もう一つは、毎日僕にどんな感情を抱いているかを教えてください」

「自分のこと喋るの苦手なのに」

「いじわるでしょ?もっとしゃべりたいから、僕の家に戻りましょうか」

「ずるいなあ、ほんとに」

ぱっと先生を解放してまた二人並んで歩いて行く。先生の小さな歩幅がかわいい。その歩幅と歩く速さにあわせてわざとゆっくり歩いていくのも幸せかもしれない。

「末宵くん。ここが、6歳まで住んでいた僕の家。水晶の鉱山と蛍石の鉱山を掘っていた会社が経営破綻するまで存在した山の中の町。とても小さな鉱業従事者の町にあった家です」

「おじゃまします」

小さな家の扉を頭をぶつけないようにくぐれば、クルミ材の床と家具の優しい雰囲気を醸し出す部屋がオレたちを出迎える。

「あ、恥ずかしい。小さい頃に床とか家具につけた傷が記憶の通りに再現されてる。あんまり見せたくないなあ。僕の部屋でいいか」

ちょいちょいとオレの手を引っ張って照れながら二階へ行こうって誘う。年頃で欲望を持て余している男を部屋に連れ込む危険性をわかってないなあ。まあ、そこがかわいいんだけど。階段をわざとゆっくりのぼっていく。そこで先生にちょっとだけからかうみたいに喋る。

「センセ、男を部屋に連れ込むなんて悪い子だな」

「男はオオカミだって知ってますよぉ。えっちなことよりも僕の深いトコロ、知りたいって顔の末宵くんには僕の部屋のベッドの中で抱き合ってたっぷり教えてあげますからね」

「マジで無自覚なの?オレの欲望煽るのうますぎ」

「自覚ありますよ。だってほら、好きじゃないとこんなことはしませんから」

オレを案内するために階段の数段先を歩いている先生が振り返ってオレに近づいて。小さなリップ音でオレの頬にキスしたんだってわかった。

「はー。ずるい。オレが先生のこと好きなの知ってて、まだうまく言えないのをわかっててやるの」

「ちゃんときみが僕に好きだって伝えられるようになったらここにキスしますよ」

先生が唇に人差し指を当てていたずらっぽく笑って見せる。オレはまだ先生に勝てそうにない。

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