ルーミアに襲われた女の子の骨やら臓物やらが、完全に消え去ったころ。
餓えている妖怪が一人、もとい一匹。
「手頃なのはいないかなー、っと」
カッドリィとも形容できる声で調子をあげながら、夜闇を飛ぶルーミア。
今日は新月だ。普通の妖怪であったら力は衰えてしまうわけだが、何しろ彼女は宵闇の妖怪。
むしろ月が出ていない時が、彼女の本領発揮である。
ついでに先程の声で察せるように、彼女は今かなり機嫌が良い。それは他ならず、新月だからである。
そして、運が無い男が一人。妖怪の目に映った。
「いぃぃたぁぁぁ!!」
雄叫びをあげながら猛進するルーミア。男は何が何だか解らず、まともに食らった。
「ぐふッ」
所詮は女児の体型、それほど衝撃があるわけでは無い。だが、一人の成人男性を倒すくらいなら可能である。
「てめっ...何しやがる!」
ここで、男は自分に馬乗りになった女児を確認したのだが。幸か不幸か、彼はその妖怪を知っていた。
「あはー...喰べちゃうぞー」
「ひっ...」
服に垂れた妖怪の唾液が、いやに鮮明に感じ取れた。
抵抗しようにも、すでに四肢は闇によって拘束されていた。
「それじゃあ、何所から...」
限りない愉しみを宿した目で、ルーミアは言う。
そして、彼女は男の腕を手に取った。
「やめろ、やめろ...」
「あー」
わざと大仰に口を開き、その中を見せつけるルーミア。小さなその口が、ゆっくりと男の指に近づき。
「む」
音も無く、男は人差し指と中指を咬み千切られた。当然、男は叫ぶ。しかしそれは彼女には関係無いことである。
ドロップのように、二本の指を口内で転がすルーミア。断面からとろり、と零れる血液が彼女を酔わせる。
「美味しいなぁ」
恍惚の表情のまま、再度口を開くルーミア。
次は男の手首のあたりを掴み、三本の指がくっついた掌を煎餅のように咬み砕いた。
そして悲鳴があがる。
「男の子でしょー、我慢しなさい」
順序よく、何かに這われるようにして男の腕が消えていく。そして肩までキレイに消失して、ルーミアは一休みした。
「大丈夫。右腕がなくなっても、人は死なない」
その時、ルーミアは妙な臭いを感じた。
どうも、男が射精したようである。これはままある事だった。生命存続の本能か、それとも
何にせよ、彼女はそれなりに気が滅入った。
「何よ、ヘンタイ」
次は足だ。
「よく生きてるねー」
ルーミアの言葉通り、男の息は絶え絶えながらも続いていた。
男の身体で消失しているのは、右腕と右足。それ以外の箇所は無傷である。
そして、彼女はお楽しみの時間に入る。
「まず、コレね」
ルーミアが摘まんだのは、男の耳。
顔一杯に口角を上げながら、徐々に徐々に引っ張る力を増していく。
みりみり...と境目が出来てきて、限界に達した瞬間にとれた。
男は藻掻く。が、隻腕隻足では大した抵抗になり得ない。
「次、コレ」
ルーミアは、男の舌を掴んだ。ちなみに今彼女が口をもごもごさせているのは、千切った耳を丹念に味わっているからである。
ギリギリの、取れるか取れないかの力加減で舌根を引っ張るルーミア。男は垂れ流しになっている涙を一層多くした。
そして、舌が外れる。
「わっと」
途端、激しく痙攣しだす男の体。壊れた機械のように見えなくもない。
そして、ルーミアが眼窩に指を入れる。
「バイバイ」
男は、ようやく光を失った。
そこからはいつもの光景が、特段珍しくもない食事が行われた。
最後に残ったのは、前と同じく肺、大小の腸、膀胱などなど。そして、男根。
彼女は男根を食べないようにしている。言わずもがな、それが彼女の口に合わないからである。
そして満腹になった腹を抱えて、ルーミアは飛行した。