駅までは車で、その後は電車で町まで行くことに、時間がかかるらしいと聞かされたが、そんなのは苦にならない、初めて見る景色が珍しくて窓の外を眺めていたが、それは最初のうちだけだった、しばらくするとうとうとして、いつの間にか眠っていた。
「起きなさい、そろそろ着く」
うっすらと目を開けた女は自分を見ている相手に笑いかけ、隣の少女にメイちゃんと呼びかけた、だが、そこには少女の代わりに大男がいた。
それだけではない、自分はスカーの肩を枕代わりにして眠っていたのだ。
途中で席を替わったのだろう、さすがに小さな女の子を枕代わりにして大人が眠りこけていたなど、悪いことをしてしまったと思い隣を見ると目が合った。
思わず視線を逸らすと正面に座っているメイとシャオメイと目が合った。
笑っている、何、その笑顔に意味はあるのだろうか。
汽車を降りたら行き先は、すぐに観光でもするのだろうか、ここに来るまでの予定というものを女はほとんど聞いていなかった。
知らない町の名前だし、楽しみは後回し、だから詳しくは聞かなかったのだ。
「元気そうだな、マルコー、正直、連絡が来たときはびっくりした、いきなりだからな」
「すまない、おまえさんの噂を聞いて、頼みたいことがあるんだ」
だろうと思ったよ、男は昔からだなとにやりと笑った。
「軍は今、騒がしいみたいでな、色々と考えたんだが、この際、腹を決めて正面からいったほうがいいと思うんだよ」
「おい、私に、そんなことを」
おまえさん、そういうのは苦手だからな、男は笑った。
「今、この街にホムンルクスがいる、一人じゃない、別に人間に喧嘩や危害を加えているわけじゃないんだが、不思議なのは、軍が」
「見過ごしている、というのか」
「連中は極秘に何か探しているんじゃないかって噂だが、詳細はわからん、だが、研究資料という連中もいるんだよ」
マルコし思い出した、数日前、訪ねてきた男の事を。
「俺は分野が違うから興味はないんだが、それにしても驚いた」
男は突然、はははと笑い出した。
「まさか、お堅い先生が女連れで来るとは、びっくりだよ」
何を言い出すのかとマルコは不思議そうな顔をしたがと、はっとした。
「勘違いするな、彼女は」
「おっ、彼女ときたか、いいねえ、最初、見たときは、おいおいって、驚いたよ」
勘弁してくれと言いたくなった。
「無理するなよ、ああ、医者だから、大丈夫か」
今すぐにでも帰りたい、マルコが思ったのも無理はない。
結局のところ自分は直接、行った方がいいのかと考えた、大佐に話をして資料室、場合によっては、別の場所、立ち入り禁止の保管室を調べる必要もあるかもしれない。
自分が探している物は見つからないかもしれない、そんな事を考えながら外に出ると女が待っていた。
「先生、他にも行くところありますか」
「いや、今日は、もう帰ろう、ところで必要なものとかないかね、この街は広い、何か欲しいものがあったら」
「じ、実は欲しい、いえ、必要なものが、生理用品を」
「整理用品、それなら」
「いえ、物を整理でなくて、下半身の」
女が自分の下半身を指さした瞬間、勘違いに気づき、マルコはわずかに気まずさを感じた。
軽い咳払いをして、先にホテルに戻っていると場を離れた瞬間、ほっとしたのは自分でも驚く位慌てていたからだ。
何故、ここに、この街に医者がいる、それにあの女も、どういうことだ、通りを歩いている姿を見かけたのは偶然だ、いや、偶然なのか。
まさか、いや、今は、ホムンクルス達だ、連中は何をしている、軍の奴らはどうして、何もしない、黙っているのは理由があるのか。
自分一人では無理だ、ならば、あれを使うか、まだ完全ではないが、男は行動に移すことにした、自分は続けなければ立ち止まる事などできない。
新しい合成獣、キメラを。
やっと買えたと女は安心した、この世界にも生理用ナプキンってあるんだと知ってほっとした女は財布の重み、中を見て迷った。
多めにくれたつもりなのだろう、おつりは自分の為に、好きに使いなさいと言ってくれたのだ、先生が大変な金持ち、大病院に勤めているとかいうのなら話は別だ。
しかし、診療所兼自宅も普通、普段の生活も凄く贅沢をしているようにも見えない、普通の市井の人だと思っているのだ。
そうだ、先生の欲しいもの、何かお土産を買って帰ろうと思ったのだが、何を買えばいいのかわからない、欲しいものありますかと聞いても、多分遠慮して言わない気がするのだ。
女は悩みながら街を歩き回った。
「ねえっ、グリード、何、それどういうこと」
女は退屈だと思いながらも話を聞いている、珍しく男が久しぶりに自分を訪ねてきてくれたことんが嬉しかったからだ。
この男に自分以外の女がいることは承知して付き合っていた、強引さが鼻につくところがあるが、金もある、世間でいうなら概ね、いい男だ。
それに、そういう男と付き合う事で自分もいい女だと思うことができたのだ。
「ああ、困ってたみたいだから酒でも買ってやれと、店まで連れて行ってやったんだよ」
「ふーん、その女性、贈り物を上げたい人って、男」
「面白えことに、その女が気にしてたのは男からもらった金だってことだ、そんな、どうでもいいんじゃねえかと思ったんだがな、だが、それを言ったら」
「もしかして、怒ったの」
「いいや、ただ、ため息ついてたな」
何故だと男は不思議そうな顔で女を見た。
「あのね、その女は贈り物をする相手が」
グリードは呆れた顔になった。
「ったくよ、男の方はジジイだぜ」
馬鹿ねと女は小さく呟いた、だが、その言葉に機嫌を悪くした様子もない、怒る事もせず男は女に尋ねた、正直、分からなかったのだ。
「その女、相手に喜んで欲しいと思っていたのよ」
はあっと女はため息を漏らし、羨ましいわと声に出した。
「もう、あなたとは付き合えないわね、グリード」
それは女からの、はっきりとした決別だった。
出そうと思っていたグリード、ようやく、書けました。
そしてスカーと先生、ヒロインの仲を少し進展、できただろうか。
目指せ逆ハーです。