次回はスカー、傷の男を出したいなあ。
可愛い物好きだけど女に対してはどうなんだろう。
「付き合えない、駄目だよ、俺たち、おまえは一人でも大丈夫だろう」
男の言葉に、そうだねと頷く、追求しないのは理由を知っているからだ、喧嘩は好きではないし、立つ鳥、後をなんとやらという言葉が頭をよぎる。。
だから自分から引いたのだ、アパートを引き払って別の場所で暮らすことにしたと、この男の顔を見たくない。
「引っ越すってどこ」
何故、そんな事を聞くのか、今更だ、だから嫌みのつもりで言ってやった。
「海外、もう、会うことないから」
そう言った時、どんな顔をしただろう、あの男は、このとき思ったのだ、ざまあみろ。
自分の性格は悪いなあと思いながら。
朝、目が覚めた、鳥の声が聞こえる、ここは自分の部屋、アパートだろうか。
全然、知らない外国らしき場所に知らないうちに来てしまったなんて、そんな非現実、ライトノベル、アニメや小説、映画みたいな転移世界の話なんてあるわけがない。
だが、現実だ、目元が変だなあと思いつつ、手を当ててみて泣いたことを思い出した。
気持ちを切り替えが必要だ、気を取り直して朝の挨拶、お礼を言わなければ、普通なら見ず知らずの人間を泊めてくれるなんて、、まるで「ああ、無情」のバルジャン、ムショ帰りのプータローだ、違うのはバルジャンは男で体力があるけど、それが自分にはないということだ。
用意された朝食を見て、女は脱力した。
木の皿には雑穀、いや、オートミールに牛乳がかかっているような、あと、チーズ、パン、果物だが、見たことのないものばかりだ。
まるで映画に出てくる朝御飯といってもいい、そういえばダイエットしていた事を思い出した、昔は太っていたのだ、オートミールダイエットはきくよー、凄く痩せるんだからと友人の言葉に、そうなんだと思って実行したのが間違いだった。
体質にあわなかったのか、痩せるどころか大便秘と下痢でトイレの住人になったのだ、オートミールは日本人、いや自分には合わなかったのだ。
だが、それを顔にも言葉にも出すわけにはいかない。
「頂きます」
礼儀を知らない子供ではないのだからと、スプーンを持って口に運んだ。
(んっ、食べられる、美味しいんじゃない)
やはり、体質や味覚というのは変わるのだ、よかったと安堵したのも束の間だった、食べ終わって、お茶を飲んで女はトイレの住人となったのだ。
ティム・マルコーの心配
起きてきた女性の顔、目元は腫れぼったくなっているが、本人は気づいているのか、そうでないのか、いや、こういうときの対応はきまっている。
用意した朝食を出すと食べようとするとき、いきなり手を合わせて軽く頭を下げ、挨拶らしき言葉を呟いた。
(イタダキマス)
聞いた事のない言葉だ、やはり、この国の人間ではないのだろう、黒髪に肌の白さは異国人だろう、それにしても荷物も何も持たずというのは、もしかして国境を越えてきた、犯罪者という事もありえる、だが、朝食を食べ終えた女は突然、席を立った。
トイレの中で全てを出し切った後、朝御飯を食べた意味があったのだろうかと思ってしまった、だが悩んでいても始まらない、とにかく、これからどうするか考えなくてはいけない。
ここが現実だとして、これから先どうするか、正直、何もないのだ、頼れる人、お金、そう現金、思わずズボンのポケットを探ってみたが、ラッキーな事なんて、早々あるわけがない。
トイレから出たら現実と向き合わなければ、これから先、どこに行って何をすればいいかわからないのだ。
先が見えない、まさか、人生について、こんなに深く考える日がくるなんて、しかもトイレの中で、だが、いつまでも籠もっているわけにはいかない。
「大丈夫かね」
声をかけられてびっくりした、トイレから出るの待ってたのだろうか。
「少し横になって休みなさい」
その言葉に驚いた、朝になったら出て行かないといけないと思っていたのだ、なのに心配してくれている、怪しい不審者って思われいたら警察、もしくは、どこかに通報されたりされてもおかしくないのに。
正直、泣きたくなってきた。
「病室のベッドは患者が来るかもしれん、悪いが、奥の部屋で」
女は返事をしようとしたが、だが、声が出なかった。
『可愛くないんだよ、おまえ、こんなとき、泣く事もできないのか』
そんなこと言われても涙が出ないのだ、嘘でもいいから泣き真似でもしろと、自分と付き合っていた、あの男は、演技は苦手だ、昔から、だから言い返さなかったのだ。
可愛くないと言われても否定も肯定もしないし、できない。
なのに、今自分の事を何も知らない他人の言葉が優しく聞こえるのが不思議だった、どんな顔をすればいいのかわからない、顔を上げる事もできない。
「泣かんでいい」
その言葉と声に、ただ、頷く事しかできなかった。