今後はギャグとアマイ、甘い内容の奴を書きたい、先生を活躍させたいよ。
あと、ブラッドレイも。
なんだ、こいつ、合成獣にしてはおかしい、エンヴィーは男の連れている犬をじっと見た。
「わかるかい」
温厚そうな中年男は笑いかけた、それは一見、優しそうな笑みに見えるが、見せかけだと彼は思った。
「それ、あんたが作ったのかい」
「ああ、最高傑作だと思っているよ、さて、聞きたい事は一つだ、あれは何処にある」
にやりとエンヴィーは笑った。
「手に入れてどうする気だい、その合成獣がいるんなら必要ないんじゃない」
「現時点で最高だ、だが、目指しているものは、もっと上だ」
人間の欲っていうのはキリがないと思いながら、あれは返したよと笑った。
「馬鹿な、持ち主はいないはずだ、だか、生かすことができる、私なら」
腹の中でエンヴィーは笑った、数枚の紙に書かれた文字はホムンクルスの自分には何が書いてあるか分からなかったのだ。
渡してくれとドクターに頼んだときも不思議そうな顔をしていた。
多分、ホムンクルスに、いや、この世界の人間にも理解できないように。
「返しただと、もしかして」
男の目が何か考え込むように細く怪しい光を放った。
「あの女か」
「美味しいですね、これ、イノシシですかね」
屋台の串焼きを歩きながら食べる若くない、いい年した男女、すれ違う通行人が一瞬驚いた顔で振り返るのも無理はない。
これが世間一般でいうデートなのだろうか、事前にメイやマルコから教えられたものとは違う気がするが、まあ、本人が満足しているようだし、深くは考えまいとスカーは思った。
「あれっ、あそこにいるの、もしかして」
不意に女が立ち止まった、少し離れたところに立っている黒髪の少年を見て、エンヴィーと女は呼びかけた。
「どうしたの、ここで会えるなんて」
女の言葉が途切れた、自分を見ている中年の男と犬を不思議そうに見た。
「やあ、ここで会えるとは運がいい」
男の優しい声に女が不思議そうな顔をしたが、思い出したように呼びかけた。
「ショウ・タッカーさん、ですか」
男はにっこりと笑いを返した。
「彼から受け取ったものが欲しいんですが」
何を言っているのか分からず不思議そうな顔をしたが、エンヴィーを見ると思い出したように女は、ああと頷いた。
「捨てたわ、燃えるゴミの日に出したの」
その言葉を男は気が抜けたような表情になった、だが、それはすぐに別の感情、怒りの表情に変わった。
「価値を知らないのか、あの研究書は」
「合成獣の研究者に、必要なの」
それはエンヴィーに対する問いかけだった。
「さあね、どちらにしても、俺には不要だ、あんたにやったんだ好きにしたらいいよ」
「あれを読んだのか、理解したか、なら、一緒に来てもらおう」
男の言葉にエンヴィーは女の前に立った、すると男の隣にいた犬がうなり声をあげた。
「ス、スカーさん」
襲いかかってきた犬に蹴りを入れたつもりだった、だが、確実に入った筈なのに躱されたというよりも手応えが感じられない。
これには、見ていたエンヴィーも驚いた。
「逃げろ、イシュヴァール人、この合成獣、まずい」
いつもなら余裕の表情を浮かべているエンヴィーが叫んだ、犬の口からは舌の代わりに赤いものがチロチロと、まるで炎のように見える。
拳に力を込めて術をと発動させたスカーだが、犬はあっさりと躱した。
まずい、これってまずいのでは女は周りを見回した、通行人がいない、それがいいことなのか悪い事なのかわからない、そのとき、自分の足下に何かが触れた気がした。
視線を落とすと茶色の犬がいた。
「ま、さか、ありえない、そんなことは」
突然、現れた犬の存在に驚いた男は首を振った、信じられないといいたげに、そして周りを見回した。
「誰だ、こんなことを、幻か、錬金術師か、誰なんだ」
突然、犬の姿が、女の子に変わった。
「パパ」
「ば、馬鹿な、あり得ない、こんなこと、認めないぞっ」
男はくるりと背を向けると走り出した、逃げるように、突然の事にスカーは、エンヴィーは驚いた。
「帰りなさい」
それは男の声だ、少女は首を振った。
女が指さす方向を見ると一人の女性の姿が現れた、生身の人間でないことは分かる、体が透き通っていたからだ。
少女が駆け寄り、ママと呼びながら抱きついた、いつの間にか、そばに犬もいる、二人と一匹の姿が少しずつ消えていく、まるで幻のように。
「あんた、死人か」
エンヴィーの言葉に女は頷き、そばにいた犬を指さした、主人が去った後の合成獣は、ただじっと立っていた。
「人間の意識が残っている、ホムンクルス、それから青年、手を貸してくれ」
女はエンヴィーとスカーに手招きし、手を握った。
「元の姿に戻すぞ」
術式、献金術、自分たちの知っている知識や術とは違う、合成獣から分離したのは犬と成人男性の姿を見て、エンヴィーとスカーは驚いた。
「意識の共有の限界、ここまでか」
エンヴィーに笑いかける女の声は次第に小さくなっていく。
「あんた」
「書類は捨てろ、全てだ」
「全部、捨てたって」
「私も彼女も、完全にあちらへ行く、会う事もない、この女に伝えろ、全部捨てろと、未練を残す事になる」
スカーから話を聞いたマルコは困惑した、ショウ・タッカーが現れた事は驚きだった。
エンヴィーは難しい顔で全部知ってる訳じゃないと呟いた。
「合成獣を元に戻すなんて俺だって初めてだよ、ホムンクルスと人間の力を、何らかの術で組み合わせたのかもしれないけど」
どういう方法で合成獣から人間と動物を元通りに分離させることができたのか、現在の錬金術師でも、そんな事ができるだろうか。
軍が保護したのは彼らの力に気づいて恐れたからか。
「大丈夫ですか」
ローストビーフ丼のお代わり、サラダ、果物、ウサギの形に切ったリンゴは五切れ目。
「い、いや、食べ過ぎよね」
自分でも自覚はあるのか、メイの言葉に女は、はっとして、目の前の皿を見た。
「遠慮せずに食べなさい、そうだデザートにプリンがあったはずだ」
意識を共生、供給させるのは疲れるんだよ、乗っ取られた瞬間、死ぬことなんて珍しくない。
マルコはエンヴィーの言葉を思い出した。
甘い物を食べると幸せな気分になりますねと女はマルコに話しかけた。
「今度は二人で出かけませんか、先生」
「んっ、ああ」
「デートですよ」
「はっ、いや、私となんて」
マルコは言葉に詰まった。
「何、こっそり覗いているんですが、スカーさん」
メイの言葉に振り返ったスカーは、にまにまとした笑みを浮かべた少女にぶんぶんと首を振った。